『ファイト・クラブ 』を観るべき理由|ストリートヘッズのバイブル Vol.137

普通ってなに?暴力の社交場 “ファイト・クラブ”の抗えない魅力

ライター:TARO

「ストリートヘッズのバイブル」では音楽や文化の知識を知ることができる映画や本を紹介していくよ!今回取り上げるのは1999年公開の『ファイト・クラブ 』

『ファイト・クラブ』とは?

大手自動車会社に勤務し、何不自由ない生活を送る男、 “僕”(エドワード・ノートン)は長引く不眠症に悩んでいた。そんな“僕”はある日謎めいた男タイラー(ブラッド・ピット)と出会う。
自分と正反対の自由奔放な性格のタイラーに惹かれた“僕”は、タイラーの発案で素人が素手で殴り合うコミュニティ「ファイト・クラブ」を結成する。暴力を通して生を実感する「ファイト・クラブ」の規模は徐々に拡大していき、次第にそれは“僕”の制御を超えて、暴走し始める。

①普通ってなに?暴力の社交場
“ファイト・クラブ”の抗えない魅力

「ファイト・クラブ」は男たちが本気で殴り合い、どちらかが立ち上がれなくなるまで戦うコミュニティ。劇中でエドワード・ノートンが演じる社会的、経済的には安定しているが、満たされない毎日を送っていた主人公は「ファイト・クラブ」での活動を通して、それまでの自己規範や概念からは考えられない刺激に満ちた日々を送る。
暴力と、それに伴う痛み、そして充足感。それは一見、僕たちが普段接している常識というものはかけ離れているものなのかもしれないけど、同時にきっと誰もが心の奥底で求めている刺激的な”何か”でもあるよね。映画『ファイト・クラブ』が示しているのはそんな人間なら誰もが持つ刺激や非日常への渇望なんだ。だからこそ流血の殴り合いを通して人々が繋がっていく暴力の社交場 “ファイト・クラブ”は観るものを惹きつける抗えない魅力を持っているんだ。

② 現代のSNS社会にもリンク。
突き抜けた共感装置と自走する狂気

スマホが普及し、様々なコンテンツを誰もが手軽に観ることができる現代。特にSNSや動画サイトでは暴力的なコンテンツや差別的な投稿がバズることってよくあるよね。突き抜けた過激な内容は人の注意を引くし、結局なんだかんだ人間は過激なものを求めているもの。『ファイト・クラブ』が公開された1999年はまだインターネットはそこまで普及していなかったけど、映画内で描かれる内容は現代のSNSから現実社会への影響とリンクする部分が多くある。閉鎖的なコミュニティの中で醸成される過激な思想、そしてそこから暴走していく狂気と他者への攻撃…。SNSからのヘイトが問題となっている現代だからこそ、今この映画を観ると感じるものも多いんじゃないかな。

③エドワード・ノートン、ブラッド・ピット、ヘレナ・ボナム=カーター…
90年代ハリウッドを代表する俳優たちの共演

この映画の大きな見所の一つは、やはり90年代ハリウッドを代表する俳優たちの共演。
『真実の行方(1996)』『アメリカン・ヒストリーX(1998年)』などでの圧倒的な演技力が評価され、一躍ハリウッド随一の演技派として知られるようになったエドワード・ノートン、『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア(1994)』、『セブン(1995)』などの出演で着実にスターの道を歩んでいたブラッド・ピット、そしてティム・バートン作品への出演でも知られるヘレナ・ボナム=カーターなど90年代〜2000年代にかけてのハリウッドの実力派俳優たちの若手時代の尖った演技が観られるのもこの映画ならではだ。

④デヴィッド・フィンチャー監督のクールな映像表現

ブラッド・ピットの出世作の一つである『セブン』を始め、『パニック・ルーム(2002)』、『ドラゴン・タトゥーの女(2011)』などエッジーでダークな世界観の作品で知られるデヴィット・フィンチャー監督の超イケてる映像表現もこの映画の見所。マドンナやマイケル・ジャクソンなどのMVを手がけてきたデヴィット・フィンチャーならではのテンポの良いカット割やカメラワーク、映画のダークなテイストを表現する作り込まれた映像の質感やライティングなど、映画のどこを切り取ってもクールな映像作品になっているんだ。

⑤カニエもBROCKHAMPTONもリリックで言及!
『ファイト・クラブ』のカルチャー的存在感

映画ファン、カルチャーファンの中でカルト的な人気を誇る『ファイト・クラブ』。ヒップホップシーンでもリリックで言及しているラッパーも多く、例えば カニエ・ウェストは2013年リリースの「Bound 2」の中で、

「Kanye West – Bound 2(2013)」

Start a Fight Club, Brad reputation
I turnt the nightclub out of the basement

ファイト・クラブを始めよう、ブラッドの評判
オレは変えるぜ、地下室をナイトクラブに

とラップしているし、BROCKHAMPTONは「STAR(2017)」の中で、

BROCKHAMPTON「STAR(2017)」

Brad Pitt, start a fight club
Turn the trap into the nightclub
ブラッド・ピット、ファイト・クラブを始める
トラップをナイトクラブにするぜ

とファイトクラブについて言及しているんだ。
90年代から2000年代なクール・バイブスと人間社会における普遍的なテーマを感じることができる『ファイト・クラブ』。また観たことがない人はぜひチェックしてみてね!

画像出典元:Amazon Prime

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