みんな文化ディグってる?
「ストリートヘッズのバイブル」ではヒップホップ好きにオススメの映画を紹介していくよ。
今回取り上げるのは映画『シェフ〜三ツ星フードトラック始めました〜』。一度どん底に落ちた一流シェフが、再起奮闘していく物語だ。
『シェフ〜三ツ星フードトラック始めました〜』ってどんな映画?
ロサンゼルスの高級レストランで料理長を務めていたキャスパーは、料理を酷評した評論家とSNSで喧嘩したことをきっかけに大炎上。新作料理で見返そうとするが、保守的なオーナーと対立して店を辞めることになってしまった。仕事も地位も失ったキャスパーは、マイアミで絶品のキューバサンドと出会い、フードトラックを決意し…。
『シェフ〜三ツ星フードトラック始めました〜』を観るべき5つの理由
①「アイアンマン」監督渾身のインディペンデント映画
この映画の監督は、アベンジャーズシリーズの大ヒット作である『アイアンマン』、『アイアンマン2』で監督を務めたジョン・ファヴロー。彼はなんと、監督・脚本・主演・製作の4役をこなしている。
自主制作映画に近い映画を作ろうと思ったきっかけは「自分のパッションに沿ったストーリーを作りたい」と思ったから。大作映画であればあるほどプロデューサーからの指示で、やむなく脚本や編集を変えなければいけないこともある。自分のクリエイティブを存分に発揮できる自由を得るために、本作と制作期間が被った『アイアンマン3』の監督も降板したんだとか。
その姿は、主人公のキャスパーとも重なる。彼もシェフとしての創作意欲をオーナーに抑え付けられていた。雇われシェフをクビになり、フードトラックをはじめたことで、キャスパーは料理に対するクリエイティヴを発揮することができていった。溢れるクリエイティブを殺さないことが、いかに大切かを教えてくれるね。
②評論家とシェフのビーフが発端!?
主人公のキャスパーは料理も一流だが口の悪さもピカイチ。彼が地位と仕事を失ったのは、評論家・ミッシェルとの大喧嘩がきっかけだった。
ミッシェルが店に食べにくると意気揚々と新作メニューに取りかかるもオーナーに猛反対され、いつものメニューで対応した結果ブログで酷評されることに。慣れないTwitter(現X)でミッシェルに反論を送ったところ、DMではなくリプライだったために公開喧嘩のゴングが鳴らされてしまった。
「俺の新作を食べにこい!!」とけしかけるも、保守的なオーナーに許されずに店をクビになってしまったキャスパー。しかし、新作料理がどんなものか店を訪れたミッシェルの前に現れ、直接辛辣な文句をぶちまける。その姿がまた傑作。ここには書けないくらいの口の悪さだけど、キャスパーの反論には料理人のプライドと、創作に対してのリスペクトが溢れていた。
大切なものをコケにされた彼の渾身の演説は必見。ぜひ映画で確認してほしい。
③たったひとつのことしかできない天才シェフ
キャスパーは一時の感情に流されSNSで大炎上し、仕事も地位も金も失った男。バツイチで、たまに息子と会っても仕事で頭がいっぱいできちんと向き合えない。側から見るとどうしようもない男なのだが、料理に対する情熱だけは誰よりも強かった。
食べたいものがあれば“本物”の味を求めて現地まで赴き、メニューは市場でその日一番良い食材から考える。そんな彼の姿をみて、息子パーシーも料理に興味を抱いていく。キャスパーの料理に対する想いが溢れたセリフを紹介しよう。
フードトラックに荷物を積む手伝いをしてくれた人たちに、キューバサンドを振る舞うシーン。サンドを焼く担当だったパーシーはサンドを焦がしてしまうが「タダだから別にいいでしょう?」とそのまま提供しようとする。それに対してキャスパーが諭した言葉がこちらだ。
「料理は退屈か? パパにとっちゃ最高の喜びだ。
パパは立派な人間じゃない。良い夫でも良い父親でもない。
だが、料理は上手い。
お前にそれを伝えたいんだ。
お客さんが笑顔になるとパパも元気になる。
お前もきっとそうだ。あのサンドを出せるか?」
たったひとつでも人生を賭けられることがあれば、自分も周りも喜ばせることができる。そんなことを料理を通して息子に教える父親の姿は、とてもたくましく見えるよ。
④主人公のモデルはフードトラックの第一人者
キャスパーの華麗なる料理シーンも、この映画の見どころのひとつだ。本物のプロのように手際よく料理を作っていく姿は小気味よく、食欲をそそられる。これはもちろん、料理の猛特訓をした成果だ。
料理の技術顧問を担当したのは、フードトラックの第一人者であるロイ・チョイ。キャスパーのキャラクターは、彼からインスパイアされたことが大きい。エンドロール後に映されるメイキング映像では、ロイ・チョイの料理レクチャーの様子を見ることができる。
パーシーにホットサンドを作るシーンを、ジョン・ファヴローにレクチャーしているロイ・チョイ。最後の仕上げとしてサンドをカットする心構えを伝える言葉からは、料理に対する真摯さが溢れていた。
「世界に存在するのはサンドだけ。失敗したら世界が終わる」
料理を通して交流を深めたジョン・ファヴローとロイ・チョイは、再びタッグを組んで、『ザ・シェフ・ショー』という料理ドキュメンタリーを制作している。料理に興味をもった人は要チェックだ。
⑤豪華俳優による友情出演
低予算映画ながら脇を固めるのは豪華俳優陣たちだ。『アイアンマン』で主演を務めたロバート・ダウニー・Jrや、アベンジャーシリーズに出演していたスカーレット・ヨハンソンなど、ジョン・ファヴロー監督と交流のある俳優たちが友情出演。彼の人望の厚さが伺える。
その他に、元部下でフードトラックの相棒になった情に厚いマーティンを個性派俳優のジョン・レグイザモ、キャスパーを応援する元妻イネズを演じたソフィア・ヴェルガラなどが出演している。息子パーシーを演じたエムジェイ・アンソニーの自然体な演技にも注目だ。
何か新しいことに挑戦したくなること間違いなしの映画『シェフ〜三ツ星フードトラック始めました〜』。新年度が始まった今だからこそ観てほしい。
画像出典元:ソニー・ピクチャーズ
配信先:Netflix