仙台という街で音楽の夢を叶える

東北エリアを代表するフィメールDJ、 DJ RAINのキャリアとは?

ライター:DJ SHUNSUKE

パーティーを通して人の心を強く揺さぶり続ける人たちがいる。
彼らはなぜ、この仕事を選んだのか?
このコーナーではパーティーというカルチャーに関わり続ける演出家たちの過去から現在まで続くキャリアを紐解いていきます。
今回は東北エリアを代表するフィメールDJ、 DJ RAINさんにお話を伺います。

DJ SHUNSUKE:
まずは、自己紹介をお願いします。

DJ RAIN:
宮城県仙台市出身、DJ歴は10年です。

L’Arc~en〜Cielに夢中になった小学生時代

DJ SHUNSUKE:
記憶の中で最も古い音楽体験を教えてください。原体験というか、最初に心を動かされた曲ってなんですか?

DJ RAIN:
小学生の時に初めて聴いた、L’Arc〜en〜CielのREADY STEADY GOです。

DJ SHUNSUKE:
ラルクですか!意外ですね。どんなキッカケでREADY STEADY GOに出会ったんですか?

DJ RAIN:
当時アニメがすごく好きで、鋼の錬金術師の主題歌だったんです。初めて買ったCDもこの曲で、この曲をきっかけにラルクやロックにどハマりして、約8年間、ファンクラブに入るくらいのオタクでした笑

クラブミュージックとの出会い、T.I.の衝撃

DJ SHUNSUKE:
結構ガッツリファンだったんですね笑
では、いわゆるクラブミュージックに出会った時のことや、クラブミュージックを知ってから、衝撃を受けた曲、印象に残っている曲ってありますか?

DJ RAIN:
21歳のときに友達がクラブに連れて行ってくれて、そのときに初めてクラブミュージックというものに触れました。中でも衝撃を受けた曲、印象的だった曲としてはT.I.の”Big Things Poppin’ (Do It)”です。当時初めて聴いたときに回していたDJさんがとても楽しそうにプレイしているのを見て、この曲何なんだろう?と周りの人に聞いた記憶があります。

DJ SHUNSUKE:
T.I.の特大ヒットですね!当時日本中のクラブでプレイされてました、カッコいいですよね!

DJ RAIN:
はい!そこからMVを見てT.I.のカッコ良さにさらに惹かれて。アナログレコードも購入して大切に飾っていました。

元気を与える側になりたい

DJ SHUNSUKE:
キャリアを重ねて10年になられる訳ですが、そもそもDJを始めるに当たってのキッカケって何だったんですか?

DJ RAIN:
クラブに行きはじめた当時はアパレルで働いていて、仕事の疲れやストレスをクラブで発散するのが習慣になっていました。楽しそうにプレイしているDJさんの姿を見て元気をもらったり、「明日からまた頑張ろう」と前向きな気持ちになれたんです。もともと心理学が好きで、カウンセラーになるのが夢でした。そんな思いもあって、日々通うクラブで元気をもらう側ではなく、今度は自分が周りの人に元気を与える側になりたいと思い、DJを始める決意をしました。

DJ SHUNSUKE:
自分が感じた素晴らしい体験を与えてもらうだけじゃなく、与える側にもなりたいって言うのは凄い事ですね。では、初めてターンテーブルを触った時の事、どのように練習してスキルアップしていったんですか?

DJ RAIN:
初めてターンテーブルを購入して触ったときは、知識がなさすぎてよく針を折っていました笑
当時YouTubeにDJについての知識を得られるチャンネルはなかったし、DJスクールもなかったので完全に独学で勉強するしかなかったです。MIX CDの存在は知っていたので、レンタルしては同じように繋げるか、なんでこういう繋ぎが出来るのか、研究して何度も何度も練習しました。最初は本当に大変でしたね。

DJ SHUNSUKE:
針を折るって結構初心者DJあるあるかもしれないですね。僕も針を折るたびに「DJって金掛かるなあ」って思ってました。地道な練習を繰り返して、スキルアップしたわけですけど、どうやって人前でDJをするチャンスを掴んだんですか?

DJ RAIN:
私がDJを始めた頃は、仙台で簡単に現場デビューできる環境がそんなにありませんでした。なので、クラブに直接話しをしに行って、箱代を払って自分でイベントをオーガナイズし、ナイトクラブでの現場デビューをしました。箱代と言っても安いわけではないので、リスクもありましたがやってよかったなって思います。

フィメールDJとして、なめられない立場を目指して

DJ SHUNSUKE:
圧倒的に男性が多いクラブ業界でキャリアを重ねてこられましたが、フィメールDJだからこその苦労とかってありましたか?

DJ RAIN:
今はもうないですが、若い頃は何度も女だからってなめられまくりました笑
大きい現場が決まると、実力ではなく”女だから”と言われたり、身体売ってんじゃないかと言われたり、早く年齢を重ねて、なめられない立場になりたいとずっと思ってました。

DJ SHUNSUKE:
まあ、昔からよく聞く陰口ではありますね…その壁をどのように乗り越えたんですか?

DJ RAIN:
とにかく自分の実力を上げることに徹しました。なめられないようにDJの技術はもちろん、知識や立ち振る舞いなど、馬鹿にされる要素を少しでも減らすことに努めました。

親に縁を切られても、諦めなかった夢

DJ SHUNSUKE:
ここまで話を聞いて、地道な活動を続けて結果をだしてきた、という印象を持ちました。心がおれそうな出来事もあったと思うんですが、これまでにDJを辞めようと思ったことはありますか?

DJ RAIN:
DJを仕事にしたい、と親に話した際、縁を切られた時はやめようかなと思いました。

DJ SHUNSUKE:
勘当されたんですか!?

DJ RAIN:
はい、元々厳しい家庭だったので、DJに対しての偏見もあったんだと思います。本気でやりたいと気持ちを伝えても、遊んでるように思われてしまったりもしました。親としては当然なのかもしれないですが、将来的な事を考えるとやはり心配もあったんでしょうね、とにかく猛反対され続けてました。猛反対の末、親子の縁を、父と母両方から切られてしまい、その時はさすがにやめた方が良いのかな、と悩みましたし凄く落ち込みました。
でも、DJを仕事にするのが自分の中で初めてできた本気で叶えたい夢だったので、親に縁を切られても諦めたくない気持ちの方が強くて。親子の縁を切られるって本当に大きな出来事でしたけど、腹をくくれました。当時DJとアパレルを掛け持ちしていたのですが、アパレルをやめてDJに専念し、徹底的にDJと向かい合いました。絶対にDJで稼いだお金で親に恩返しする——そう決心しました。

MIX CDのリリース、そして親との和解

DJ SHUNSUKE:
DJキャリアにおいて、大きなターニングポイントってありましたか?

DJ RAIN:
2016年に初めてMIX CDをリリースさせていただいたことです。初めて自分の作品ができた喜びと、それを全国の人に聴いてもらえること、そしてそれをキッカケに全国各地でDJさせていただけるようにもなりました。名前を多くの人に知ってもらえることは活動にも多方面で凄くプラスの影響があって、私の中ではかなり大きな転機でした。
2018年には、全国のTSUTAYAでレンタル展開もしていただいたんですが、そのとき初めて、勘当されていた親から連絡をもらいました。ポスターを見てくれたみたいで。今思えば、言葉で伝えきれなかった熱意を行動する事によって親に理解してもらえたのかな。そこからは私の活動に理解をしてくれるようになり、今では一番のファンのように応援してくれています。

仙台を盛り上げ、若い世代の夢をサポートしたい

DJ SHUNSUKE:
RAINちゃんが今、力を入れている事、未来へのビジョンがあれば教えてください。

DJ RAIN:
今は地元仙台を盛り上げるために、現場でのプレイはもちろんですが、DJスクールを始めて東北の若い子達の夢を叶えるサポートをしたいと思っています。夢がない、やりたいけどどうしたら良いかわからない、DJとしてどう活動したら良いかわからない、そういった子達に、私が持っている知識や環境を使ってできる限り応援していきたいです。
DJを通して夢が増えたり、可能性が広がったり、そういうのがすごく楽しいんです。だから、夢を持ってキラキラしてる若い子がもっと仙台から出てきたらいいなって思ってて。最終的には、そういう仲間たちで大きなチームみたいなものができたら理想ですね。

DJ SHUNSUKE:
これからDJを目指す若い世代に向けて、アドバイスやメッセージをお願いします。

DJ RAIN:
昔は、仙台で音楽でお金を稼ぐのは本当に厳しかったし、稼げてもお小遣い程度でした。でも今は、クラブシーンもかなり良くなって、DJにとって環境が大きく変わりました。安心して、夢を追いかけて大丈夫です。仙台でも音楽を仕事にできます!とにかく周りの人達や環境への感謝を忘れず大切に、自分を信じて諦めないでほしいなと思います。

プロフィール

  • DJ RAIN

    DJ RAIN

    “人を元気にしたい”という思いからDJをスタート。 MCやパフォーマンスなど多彩な表現を取り入れつつ、ステージ上では常に楽しさを全身で体現する。その一方で、4年間SOUND PRODUCERを務めた経験から、観客側とクラブ側の両視点を持ち、ジャンルを超えてプレイできる国内トップクラスのフィメールDJとして支持を集めている。 地元・仙台を拠点に活動しながら、一晩のグルーヴを大切にするスタイルを貫く。どんな現場でもフロアを自在にコントロールする幅広い音楽知識と選曲センス、女性DJとしては珍しいスクラッチスキル、そしてパワフルなマイクパフォーマンスで、年間200本を超えるイベントをロックしている。そのスキルと安定感から、全国各地でRESIDENT DJを任されるなど、絶大な信頼を得ている。 2016年11月には初の公式MIX CDをリリース。以降、これまでに12作を超える作品を発表し、『EXTRA BASS-DRIVE BEST- Mixed by DJ RAIN』ではTSUTAYAレンタルランキング月間1位を記録、驚異的なセールスを叩き出した。 その実力は現場にとどまらず、近年は楽曲制作にも活動の幅を広げている。今後ますます注目が高まる、東北を代表するフィメールDJである。

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