目 次
カルチャーを通して人の心を強く揺さぶり続ける人達がいる。
彼らは何故、今の仕事を選んだのか?このコーナーではカルチャーに関わり続けるプレーヤーたちの過去から現在まで続くキャリアを紐解いていきます。
第20回はB-Boy編。レジェンドクルー“The Floorriorz”のメンバーであり、Dリーグ「Valuence INFINITIES」チームリーダー、ソロとしても確固たる実績を残すB-Boy・ NICOLAS(ニコラス)さんです。
注目のDリーガー、NICOLASのB-Boyキャリアとは?
レペゼン:
自己紹介をお願いします。
NICOLAS:
B-Boyのニコラスと申します。今、僕が活動しているチームはThe Floorriorz、PITB、StruggleZ。最近では韓国のチーム・BREAK POINTS CLAN、DリーグのValuence INFINITIES でも活動しています。
ダンススタイルはクリーンで自由度が高く、大きくて柔らかいクリエイティブな動きを目指しています。観る人に印象を与えられるように心がけています。
レペゼン:
ありがとうございます。
まずは、普段の活動について教えていただけますか?
NICOLAS:
今はオフシーズン中なんですが、Dリーグのシーズン中は週に4回の練習。シーズンが始まると、ショーケースも行われます。土日は自分のバトル活動が中心ですね。最近はジャッジをする機会も増えてきました。それ以外にも、ワークショップを開催したり、海外での活動もありますね。
小さい頃から始める人が多い中、ダンスを始めたのはなんと大学生から
レペゼン:
ブレイクダンスに出会ったきっかけを教えてください。
NICOLAS:
初めてブレイクダンスを見たのは、小学生か、その前くらいで、「めちゃイケ」の岡村さんとゴリさんのバトルをテレビで観たときですね。その時のインパクトは強くて。ただその時はブレイクダンスはせず。
レペゼン:
そうなんですね。
NICOLAS:
そのまま高校生時代になるんですけど、仲の良い友達がPoppin’ってジャンルをやっていて。それを見て「ダンスって良いな」と思って、大学に入ったらダンスをやろうと決めていたんです。
レペゼン:
なるほど。大学ではどのようにダンスを始めたのですか?
NICOLAS:
大学に入ったとき、ダンスサークルが1個あったので、そこに参加しました。それで、いろいろ見てカッコいいと思ったのがブレイキンで。
レペゼン:
最近のダンサーで考えると、始めたのはかなり遅い方ですよね。
NICOLAS:
そうですね、遅かったと思います。
レペゼン:
大学から始めてここまで実績を残されているのがすごいです。
NICOLAS:
いやぁ環境がよかったですね。実はThe FloorriorzのNORIさんが自分の大学でレッスンをしていて。ノリさんは当時から非常に活躍されていましたが、僕はその時、ノリさんのことを知らなくて。軽いノリでレッスンに行ってみた後でYouTubeで調べてみたら、とんでもない人だなと笑
レペゼン:
笑
NICOLAS:
そのノリさんのレッスンでブレイキンにハマりましたね。週1回、毎週火曜日に来てくれて。本当に贅沢な環境でした。
授業後、18時から22時まで練習、その後調子が良ければ、そのまま朝まで練習したり。特に火曜日はノリさんのレッスンがあるので、その後の水曜日には習ったことをすぐに実践できるようにしていました。
レペゼン:
最初からモチベーションは高かった?
NICOLAS:
周りの仲間のレベルが高かったので、周りに早く追いつきたいという気持ちで練習していたと思います。フローリアーズのチームメイトのSATORUも当時同じサークルに所属していて。彼は中学生ぐらいからダンスをしていて、すでにめっちゃうまかったんです。なのでとにかく他のみんなに追いつきたいと思って、練習していましたね。
ダンス歴4年で世界大会優勝チーム、The Floorriorzに加入
レペゼン:
その頃からバトルにも参加していたのですか?
NICOLAS:
最初に出たバトルはダンスを始めて4ヶ月後、ノリさんに勧められて参加した「B-BOY PARK」ですね。緊張しながらも、ノリさんが作ってくれたムーブでバトルに挑みました。
レペゼン:
4ヶ月でいきなりのソロバトル、どうだったんですか?
NICOLAS:
全然ダメでした笑
めちゃくちゃ緊張しましたね。
レペゼン:
B-BOY PARKは出場者も多かったですし、緊張しますよね。
NICOLAS:
もうボロボロでした笑
その後もコンスタントに出ていましたが、ソロバトルはそんなに多くなかったので、主にチームバトルに参加していました。当時は「BRONCO」というチームに所属していたので、そこで出場していましたね。
レペゼン:
フローリアーズにはどのタイミングで入ったのでしょうか?
NICOLAS:
フローリアーズに入ったのは大学を卒業してすぐです。フローリアーズが初めて世界大会のBOTY(バトル・オブ・ザ・イヤー)で優勝した年に、新メンバーを入れる話が出て、そこで名前が挙がったのが僕とサトルだったらしいんです。
当時僕はまだ大学4年生の頃で。で、それをノリさんがBOTYから帰ってきて温泉に誘ってくれた時に、「今フローリアーズに2人を入れようと思っているけど、どうする?」と言われて。
ただこれは全然悪い意味ではなく、僕はずっとダンスを続けたいと思っていたんですが、フローリアーズに入るということを全く考えていなかった。なのでかなり悩んで、即答はできなかったですね。
レペゼン:
それで考えた結果、どうなったんですか?
NICOLAS:
2人で話し合った結果、今後もダンスを続けたいなら、自分たちのためにもフローリアーズに入るのが良いかもしれないと考えました。それからフローリアーズのみんなと何回か練習をして、大学卒業と同時に正式に入ることになりました。
世界大会優勝チームの新メンバーというプレッシャーに押し潰されそうになる日々
レペゼン:
ニコラスさんはその後、フローリアーズでBOTYを優勝しましたが、それってブレイクダンスを始めて、4~5年目ってことですよね?
NICOLAS:
そうです。僕とサトルが入ったのが初優勝の後で、それから三連覇したんです。
レペゼン:
やばすぎです。
NICOLAS:
いや、全くです。僕は本当に何もできてなくて。
加入した年もBOTYに出させてもらいましたけど、僕自身は特に何かを成し遂げたわけではなく、先輩たちが勝ったという印象でした。それが悔しくて、当時は一人で泣きながら練習したこともあります。周りの先輩たちが比べものにならないぐらい上手かったので。
レペゼン:
フローリアーズは厳しい環境でしたか?
NICOLAS:
そこは意外に思われるかもしれないですが、まったく厳しくなかったです。むしろゆるいかな。自分のペースで練習させてくれていました。ただ僕が、周りが上手いと感じて勝手に焦っていた感じです。周りの先輩とかは何も言わなかったですね。
レペゼン:
自分自身はプレッシャーを感じていた?
NICOLAS:
自分はやっぱりプレッシャーを感じていましたね。名前がでかすぎたんで。フローリアーズの名前で、バトルで負けたくないという気持ちがありました。
レペゼン:
その中で乗り越えた瞬間というのはあったのでしょうか?
NICOLAS:
多分2018年か2019年頃に、大学の仲間たちと参加したGOOD FOOT CREWのアニバーサリーでかましたんですよ。それぐらいから、自分に自信が持てるようになった気がします。それまではチームの周りのメンバーと比較して、自分の尺度でダンスができていなかったなと。人の目を気にしすぎていたんですよね。その時期からはバトルを通じて自信を持てるようになり、考え方も変わったと思います。
プロダンサーとして。キャリアのターニングポイントはDリーグ参加
レペゼン:
ダンスキャリアのターニングポイントについてお伺いできますか?
NICOLAS:
ターニングポイントはやっぱりDリーグです。リーグが始まった当初は、朝10時半から夕方4時までの練習が月〜金まで続いて、自分の練習が全然できなくて。これではダンスが下手になっちゃうかもと思ってたんです。ただそれは結局自己管理ができていないだけで。Dリーグに参加したことで、自分がしっかり自己管理して、自主練もすることで、Dリーグでも個人でも結果を出さなければいけないというマインドになりました。
レペゼン:
よりプロとして、B-Boyとしての意識が高まったというか。
NICOLAS:
そうですね。Dリーグをやりながら、個人でも結果を出したら、かっこよくない?って思って。それがあったから去年のRed Bull BC One Cypher Japan 2023での優勝にも繋がったと思います。
あとは多くのお客さんの前で踊る経験も大きくて。2週間に1回は8000人の前でパフォーマンスするので。かなり自信になりましたね。
レペゼン:
良いですね!
NICOLAS:
Dリーグが始まる1年くらい前はアルバイトをしていたんですが、リーグが始まってからダンスでお金をもらうようになって、スポンサーがついてくれたりして。今もダンスで生活できているのはありがたいです。ただ、自分が目指していたのはそれだけではなくて、個人としても結果を出したいと思っているので、とにかく自己管理をして、しっかり自分を成長させていきたいと思っています。
B-Boy NICOLASが思う 現在のダンスシーンと今後の目標
レペゼン:
今のダンスシーンについて、ニコラスさんはどのように考えていますか?
NICOLAS:
今のシーンでは、情報が簡単に手に入る環境が整っている一方で、表面的な技術が上手な人が増えていると感じています。
でも、ただ技術があるだけではなく、カッコよさやその背後にあるストーリーをしっかり伝えることができるダンサーがもっと増えたら、シーンが進化していくのかなと思いますね。
レペゼン:
確かに、技術が高い人が多いですよね。その中で、知識やカルチャーを取り入れることが重要だと?
NICOLAS:
そうです。自分もダンサーとして成長していきたいと思っているので、特に自分が思う「カッコよさ」を極めていきたいですね。
レペゼン:
素晴らしいです。では最後に、今後の目標について教えてください。
NICOLAS:
今後の目標は、海外でのバトルに参加することです。勝敗ももちろん大事ですが、技術だけでなく、自分のブレイキンを追求して、観客や審査員に何かを感じ取ってもらえるようなパフォーマンスをしたいです。そして、優勝を目指しつつ、いろんな場所で自分を表現できるようになりたいですね。より自分のブレイキンを極めていきたいです。
レペゼン:
応援しています!今日はありがとうございました。
NICOLAS:
こちらこそ、ありがとうございました!