「家族の協力があるからこそ、前例のない挑戦をする事が出来る。」

ママDJとして前例のない道を歩き続けるDJ NAGISAのキャリアとは?後編

ライター:DJ SHUNSUKE

パーティーを通して人の心を強く揺さぶり続ける人達がいる。
彼らは何故、今の仕事を選んだのか?
このコーナーではパーティーというカルチャーに関わり続ける演出家たちの過去から現在まで続くキャリアを紐解いていきます。

第十八回はママDJとして前例のない道を歩き続けるDJ NAGISAさんのキャリア、前編をお送りします。

ママDJとして、前例のない挑戦

SHUNSUKE:
本当に最前線で活躍する現役のママDJは国内では前例が少ないと思います。ママDJった今と、それ以前って活動の中で変化したこととかってありますか?

NAGISA:
小さな子供を育てているので、以前は毎晩DJでしたけど当然そんなふうには動けなくなりました。気持ちの中では以前のように活動したいっていうところもありますけど、物理的に無理なので、週に1.2度のDJで高いレベルのパフォーマンスをしたいって思ってます。モチベーションの部分をきちんとキープして、良いパフォーマンスをするための準備は以前より出来ているかなと思います。毎回消化試合は絶対にしていないので。毎日DJをしてた時は疲労が溜まって自分の感覚の中でキレがないプレイをしたなって思うこともありましたけど、準備をしっかりすることで色々な変化をプレイの中で付けられるようになったなと感じます。

SHUNSUKE:
以前より音楽に深く向き合うようになったっていう感じ?

NAGISA:
以前も向き合ってはいましたけど、毎日DJする中で消化だけしかしてなかったこととかはあったのかなって思います。今はしっかり向き合って準備をして。DJ中にマイクを握ることもあるのでスタジオ借りて練習したりとかもしています。マイクを使ったボイストレーニングは家じゃできないし、やっぱり練習は必須だなと。私は結婚した後も、休みの日は家にいるわけでも無く他の現場に遊びに行ったりしちゃうタイプだったので、心の中では今でも毎日でもDJをしたいっていう気持ちがあります。でも、家族も当然大事だし、趣味でやってるって思われるのも嫌なんです。「子供が熱出したらどうせ休むんでしょ?」とか思われるのも嫌です。極端な話ですけど、子供を産んだからもう最前線ではやらない、というような解釈をされるのが凄く嫌だなって思ってます。

SHUNSUKE:
そこは難しいよね。どちらか取らなければならないと言われたら子供を取るのは当然なんだけど。前例のない事をやっているから何が正しいのかは誰も分からない。

前例のない挑戦を理解し、後押ししてくれる環境

NAGISA:
V2 TOKYOの社長が「過去日本ではあり得なかったママDJが活躍するという前例を作りたい。一緒に作っていこう。」と言ってくれてて。私の動きやすいように仕事をして構わないと言ってくれています。理解を得た上でDJさせてもらえるのは本当に大きなことなんですよ。自分の育児スケジュール中心に現場は動いていないし、常に変わっていく。そこに子育てを経て1.2年の休業の後、戻っていくのは難しい事ですよね。そういうシーンの中でも戻れる状況を作ってもらえている事にとても感謝しています

SHUNSUKE:
夜の間はお子さんはどうしてるの?寂しがらない?

NAGISA:
夜間、子供を託児所に預けると言う事はしていません。うちの旦那さんは夜仕事の事が多いので、実家の母と一緒に住む妹に子供を預けてみてもらっています。寂しいのかなってやっぱり私も心配になるんですけど、寝るギリギリまで走り回って倒れて寝てるって聞いてるので今のところは寂しがってはいないみたいです笑
一つ言える事は家族の協力があるからこそ、前例のない挑戦が出来ているってことですね。旦那さんとは出産をする前にDJの仕事の事もしっかり話し合いました。復帰をしてもいいか?という事に対して「当たり前じゃん!」と返事をしてくれたんですけど、そんな人に中々巡り合えないと思ってます。結婚してDJを辞めていった人達を沢山みてきたし、出産して辞めた人もみてきました。うちの旦那さんは元クラブスタッフっていうのもあるのかもしれないけれど、本当に理解してもらってるなと思います。SHUNSUKE君の奥さんも相当な理解力のある人だと思いますよ笑

SHUNSUKE:
はい、そうだと思います笑
いつもこれ以上ないほど感謝して生きております笑

結婚したから、出産したから。
それを理由にDJを辞める必要なんてない!

SHUNSUKE:
これからの日本のシーンに願う事とかってありますか?ママDJとして、これからもDJを続けようか迷っている人に対する言葉もあれば聞きたいです。

NAGISA:
やっぱり、結婚や出産を機に、家族の理解を得られずにDJを辞めてしまう女の子のDJがを多く見てきて、ちょっとだけ個人的に思う事を話をさせてもらうと「きちんと話し合えばきっと続ける方法が見つかる。」と言う事ですかね。日本ってクラブに対してのそもそもの偏見が強すぎるので「結婚したのに」とか「母親なのに」とかそういうネガティブな言葉が多くなりがちですよね。私の場合は一番好きな事であるDJを旦那さんがきちんと理解してくれたんですけど、理解してもらえるように沢山話しもしました。本当に一番好きな事を「結婚したからダメ」とか「出産したからダメ」とかいう人は辞めた方がいいかなって思ったりもします。きちんと話をして本当に一番好きな事を理解しても、それでもそれを奪う男なら考えたほうが良いんじゃないかなって。

SHUNSUKE:
DJに関わらずそれはそうかもしれないね。

NAGISA:
あくまで、私個人の想いだし皆さん家庭によって違う事もあるかもしれないけれど、ちゃんと自分の好きな事や続けたい事に対する想いを伝えておくことは大切だなって思います。結婚相手も結局他人だし、最初は大変かもしれないけれど。契約書とか交わしたって良いと思います。お酒のトラブルとか酔っぱらい過ぎる事はNGとかそういうのも含めて。一番好きな事を続けさせてほしいっていうのはそれくらい気持ちを伝える事だと思います。でも、実の親だって最初は納得させるまで大変じゃないですか?育ててきた娘が「プロのナイトクラブのDJになりたい!」って聞いたときはびっくりしたと思う。フリーランスでやるのであれば、最初はアルバイトしながらDJせざるを得ないからフラフラしてるって思われる事だってあると思う。私の場合ですけど、きちんと一つずつ実績を作って、それを説明していったことでしっかり納得してもらえました。デイイベントとして行われる有名ブランドでのDJの事を伝えたりしたことで少しずつ分かってもらえて。今もDJという職業を完全に理解したとは思わないけれど、家族みんな、応援してくれています。

SHUNSUKE:
このインタビューが同じような境遇の女性DJやママDJに勇気を与えると思います!貴重なお話、ありがとうございました!

プロフィール

  • DJ NAGISA

    DJ NAGISA

    幼少の頃から父親の影響で常に音楽と触れ合う環境で育ち3歳からピアノ、15歳でHip hop,Jazz Danceを始める。 Dancerとしてクラブイベントにも出演していたがDJとして活動している仲間達に影響を受け2006年、Club DJとしてデビューする。 プレイスタイルはHouse、Electro、Hiphop,R&B etc...BrandnewからClassicまで幅広い年代とジャンルを女性らしい繊細さとグルーブで紡ぐOpen format styleには業界関係者からも定評があり、数多くのファンを持つ。 東京都内の主要クラブ以外にもフジテレビ(Live News It !)、Abema TV(給与明細)、ラジオ出演(Tokyo Inter FM,レディオ湘南)、大手企業パーティー(Amazon,Ferrari,BMW,PUMA,Sanrio等)、更に日本全国各所でGuest actとして出演し、海外にも幅を広げ様々な場所でもDJを経験。 スペイン・イビザ『PRIVILEGE』『TANTRA IBIZA』/ シンガポール『Sundown Marathon』/ 台湾『OMNI 』/ マレーシア『K.L Jamm』/ オーストラリア『BILLBOARD NIGHTCLUB』各所にて日本人女性初となるDJ出演を果たし多くの賞賛を得た。 2018年Spinnin’ Recordsの楽曲を多数収録したオフィシャルMixアルバム『SCANDAL BEST POP PARTY』を、2020年自身初となるオリジナル楽曲『Starlight』をiTunes、Apple Music等の各種サイトから配信リリースし作品での人気も獲得している。 2021年東京オリンピック/ パラリンピックの音楽担当を務め世界中で注目される大舞台に立つ。 海外アーティストとの共演も多数経験し、まさに日本を代表する女性DJのひとりである。

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