パーティーを通して人の心を強く揺さぶり続ける人達がいる。
彼らは何故、今の仕事を選んだのか?
このコーナーではパーティーというカルチャーに関わり続ける演出家たちの過去から現在まで続くキャリアを紐解いていきます。
第七回は、クラブDJ・プロデューサー・講師など、様々な顔を持つDJ MESMERIZEさんのキャリアについてお送りします!今回も「DIG!かばんの中身」でもお馴染み、DJ SHUNSUKEとLeeがインタビューを行ってきました。
Lee:
まずは自己紹介をお願いします。
MESMERIZE:
DJ MESMERIZEです。福岡出身で、年齢は40になりました。
DJを志したきっかけ
Lee:
DJを志したきっかけを教えてください。
MESMERIZE:
ちょうど20歳ぐらいの大学生の頃に、周りの友達がラップをしたり歌を歌っていて、クラブとかライブで音楽活動をしてたんですよね。友達のライブを観に行くたびに、そういう空間がすごく楽しくて、何かに夢中になって打ち込んでいる姿がキラキラと輝いて見えて素晴らしいなと思いました。
当時の僕は特に打ち込んでることもないような大学生だったので、そんな友達の姿を見たときに何かしたいと思って。歌とかライブに近いカルチャーで、DJというものがあるぞと。周りにやっている人もいなかったので「じゃあDJをやってみよう」とやりはじめたのがきっかけでしたね。
Lee:
逆に周りにDJがいなかったから始めたんですね。
MESMERIZE:
周りと同じことをやるのも手だったと思うんですけど、同じことよりも知らないことやってみた方がおもしろいかもしれないと、軽い気持ちではじめました。でもやっぱりDJのことを聞ける人がいないので、機材を揃えて独学でやってたんですけど、1年間くらいはDJをやってることを人には言えませんでした笑
SHUNSUKE:
コソ練してたんですね笑
衝撃を受けた楽曲
Lee:
今まで衝撃を受けた楽曲を教えてください。
MESMERIZE:
ずっと自分の中にある曲で言えば、Nasの『Illmatic』ですね。右も左もわらない状態でDJ活動をスタートして、はじめは人がどう思うかよりも自分がいいなと思った曲のレコードを集めてたんです。初舞台でいざDJをやった時に、僕のプレイリストはNasばっかりだったんです笑
「Nas好きなんでしょ」って人にも言われて、そのときに「あ、僕はこういう感じの曲が好きだし、Nasの曲が好きなんだ」と気づきました。その頃よくかけてたのがNasの『Illmatic』に入ってる曲で、これは今でもかけてます。
Lee:
無意識にかけてたのがおもしろいですね。
MESMERIZE:
いろんな好きなアーティストの曲を集めてたんですけどね。自分がDJでかけるとなると無意識にNasばっかりになってました。
DJ人生第二章がはじまったターニングポイント
Lee:
ここが自分のDJ人生のターニングポイントだったなっていうところがあれば教えてください。
MESMERIZE:
長いこと活動してた福岡から上京してきたときに、DJとしての第二章がはじまった感覚がありました。やっぱり場所を移動して新たにゼロからやるのは自分の中で大きな変化でしたね。
Lee:
いつ上京されたんですか?
MESMERIZE:
17年間ずっと福岡で活動してから、2020年3月に東京でDJ活動をはじめました。
Lee:
ちょうど新型コロナウイルスが流行り出した時期!
MESMERIZE:
そうなんです。僕が東京に来たときはまだコロナの影は出てなかったんで、1ヶ月ぐらいは知り合いのDJにいろんな企画のオファーをいただいてやらせていただいてたんですけど、1ヶ月後にすぐ緊急事態宣言が出て。新しい知らない時代が来たなと感じましたね。
SHUNSUKE:
結果的に凄いタイミングで上京して来たよね。
MESMERIZE:
でも、いろんな転機を迎えて福岡から東京に移動したタイミングだったんで、コロナになったから環境が変わったという感覚は僕の中ではあんまりなかったですね。コロナがあってもなくてもどのみちガラリと変わったので。
Lee:
どんな転機があったんですか?
MESMERIZE:
福岡で長いことDJとしていろんな活動を続けてきたので、やっていたお店が閉店を迎えたり「区切りをつけるとしたら今かな」というタイミングが自分の中でありました。気持ち的にも、これから先も同じことを続けていくか、自分の知らない世界をみるか考えたときに、やっぱり新しい環境に飛び込んだり新しい人に出会ったりする方が、絶対おもしろいと思って。
Lee:
東京に出てきて、環境は変わりましたか?
MESMERIZE:
もちろん変わりました。福岡ではお店を管理する立場でもあったんですけど、東京ではイチDJとしてまた活動をはじめたので、活動スタイルが全然違います。ひと区切りしたので、またイチDJからスタートしたい気持ちもありました。
Lee:
それまでのキャリアを一度リセットするのは、すごく勇気がいりそうですが…!
MESMERIZE:
それはもちろんあります。でも新しく始めた方が自分の人生、ひいてはDJの人生としてワクワクできるかもしれないと思ったので。それで成功するかしないかはもちろん分からないけど、自分が楽しめるかもと感じた道に進まない手はないと思いました。
SHUNSUKE:
かっこいいですね。
コロナ禍でも磨いたDJとしての武器
Lee:
コロナ期間はどう過ごされたんですか?
MESMERIZE:
緊急事態宣言が初めて出たときはずっと家で過ごしてました。みんなもそうだと思うんですけど、家で何をしたらいいかわかんないタイミングだったんですよ。
僕はずっと現場でDJをやってきて、現場に遊びに来てる人に対してDJをするという感覚が強かったんです。でもいきなり時間ができたんで、DJとして何をしようかなと考えたときに、音源の制作やDJのミックス制作といった、いままで現場をやりながらだとできなかったことにチャレンジする時間ができたと捉えました。
Lee:
自分を磨く時間にしたんですね。
MESMERIZE:
コロナがいつか終わった時に、家にいた空白の時間に何をしてたかが自分の活動に何かしら影響が出ることは分かりきったことだったので。だったら自分に何か残る活動とか、今までできなかったことに目を向けるのが、自分にとっていい時間になるだろうなと思いました。
実際かなり有益な時間を過ごしましたし、僕の人生にとっても大切な時間でした。あの時間がなければできなかったこと、作れなかったものもたくさんあります。
いろんな人と出会えるDJ講師の仕事
Lee:
DJ講師としても活躍されてますよね。
MESMERIZE:
福岡にいた頃から島村楽器という会社の契約講師としてやらせていただいてます。東京に出てくるタイミングで一度契約を終了したんですけど、1年後に東京の島村楽器にもDJ科を作るということで連絡をいただいて、また講師として復帰しました。
Lee:
講師をやろうと思ったきっかけはなんだったんですか?
MESMERIZE:
DJの後輩が島村楽器に就職をしたのをきかっけに、講師として誘ってもらったんです。その頃は現場ばかりやってたので、ちょっと違う方向のDJ講師することによって、何か新しい発見があるかもしれないと思ったのでやることにしました。
Lee:
実際に講師をやってどうでしたか?
MESMERIZE:
DJ科にはDJがスキルアップのためにレッスンを受けに来ることも当然あるんですけど、いままでDJに触れてこなかったお子さんから、自分よりも年上の人までいろんな人が受けにくるんです。それまで関わることのなかった人たちとDJを通して出会うことができたのは、講師をやってたからできた経験です。
僕もイチDJとして、DJに触れてこなかった人たちにDJを布教することができるし、DJ業界に少なからず貢献できてるのかと思うと、やっぱりやってよかったですね。
これからのクラブシーンに願うこと
Lee:
これからのクラブシーンに願うことがあれば教えてください。
MESMERIZE:
DJはひと時代前よりもメディアにも出る機会も多くなってますし、DJを志す人も当然増えています。いろんな年齢や層の人たちもいて、クラブでガッツリDJをするスタイルだけではない人たちも、たくさん出てくると思うんですよね。
DJの活動が多様化していけば、活動する場も増えていってシーンも大きくなりますし、仕事も増えると思います。今の時代とともに、よりDJが仕事として広がっていけたらいいですね。
Lee:
個人としてはどういうキャリアを歩んでいきたいですか?
MESMERIZE:
より現場も増やしてDJを聴いてもらえる機会を増やしていきたいし、他にもDJや音楽を通していろんな方面に向けてできることを増やしていきたいです。
楽曲制作にもっと力を入れたり、例えばアパレル関係にもシェアを広げていきたい気持ちもあります。そういうカルチャーを通して、年を重ねた分だけ自分が楽しめることを増やしていきたいと思ってます。
Lee:
自分が楽しめることを増やしたら、みんなも楽しめる場所になりそうですね。
MESMERIZE:
そうでしょうね。それは繋がっていくと思います。
プロフィール
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国内・アジアで活躍するDJ、プロデューサー、ビートメイカー。 ヒップホップをベースとし、経験に裏付けされた選曲眼・技術には高い評価がある。 2014年『DJ's SUMMIT MIXCD CONTEST』においてコンテストウィナーDJとして入賞。 また、マイク・ヘッドフォンの世界的メーカー SENNHEISER( ゼンハイザー ) Presentsで開催された『getstage MUSIC AWARDS』において、5,000組以上の中からノミネートアーティストに選出され、上位TOP10内にランクインされた。 2014年から2016年にかけて三度の全国ツアー、2018年・2019年には中国、台湾、韓国を加えたアジアツアーを敢行。 その後再度韓国に渡りDJ活動を経た後、2020年 東京へ拠点を移動。 プロデュースワークにおけるシングル・アルバムリリースやリミックス。MIX CD・VIDEO MIX等の作品も多数手掛けている。 また、日本国内有数のシェアを誇る楽器店『島村楽器』のDJ講師としての経歴もあり、これまでに多くの人材を輩出している。