ひとつの場所が終わる瞬間に立ち会い、責任を持って言葉を発する経験が、自分を変えてきた

東京のクラブシーンで前例のない道を走り続けるMC BULLのキャリアとは?後編

ライター:DJ SHUNSUKE

パーティーを通して人の心を強く揺さぶり続ける人たちがいる。 彼らはなぜ、この仕事を選んだのか? このコーナーではパーティーというカルチャーに関わり続ける演出家たちの過去から現在まで続くキャリアを紐解いていきます。 今回は東京のパーティMCを代表するMC BULLさん、後編をお届けします。

前編はこちらから!

いくつもの「クラブの閉店」に立ち会ってきたこと自体がターニングポイント

SHUNSUKE:
では、キャリアにおける「ターニングポイント」を教えてください。

MC BULL:
やっぱり2016年の「HAZARDの閉店」ですね。あれはデカかった。 ホームグラウンドがなくなって、そこから一気に外の現場へ出るようになったので。
あとは、いくつもの「クラブの閉店」に立ち会ってきたこと自体がターニングポイントかもしれません。VUENOS、ソーシャルクラブもそうですし、アクシスも、ELFも、VISIONもアゲハもそうだった。 MCって、その日のパーティーの最後、ひいてはそのクラブの歴史の最後にマイクを握って「ありがとうございました!」って締める役回りなんですよ。

SHUNSUKE:
最後を締めくくるのはMCの役目だよね。

MC BULL:
そうなんです。代表して閉めさせてもらうんですけど、俺みたいな者がすいません……という気持ちと同時に、やっぱり責任を感じるんですよね。「もっと何かできたんじゃないか」「もっとこうすれば良かった」って。 若い頃はどうでもよかった場所もあったけど、年齢を重ねるごとにその「重み」が変わってきました。 特にVISIONの最後なんてヤバかったですよ。KEKKE君と一緒に6時間くらいやって。
そういう、ひとつの場所が終わる瞬間に立ち会い、責任を持って言葉を発する経験が、自分を変えてきたんだと思います。毎回身が引き締まる思いです。

人の人生の節目に立ち会ったり触れてきた。

SHUNSUKE:
これまでのキャリアの中で、印象深い出来事ってなんですか?

MC BULL:
まあ、自分事でないところで言うと、自分たちのパーティで出会った二人が結婚したとかですかね。お酒の入る場で出会って、惚れた腫れたの揉め事になる人達も結構いるわけで、きちんと結ばれたって知ると、やっててよかったなって思います。昔よく来てたお客さんがデイイベとかで子供連れてきたりするとグッときますね。お客さんも含めて、移り変わりの激しい業界の中で、そうやって人の人生の節目を感じたり触れる事が出来るのは真面目にやってきた一つの結果なのかなって思います。普通そんなに沢山経験出来る事じゃない。自分個人的な事だけで言えば、宮古島でのライブ中にプロポーズしたのは印象深いですかね笑

↑宮古島の野外フェスでの一枚。12時から夜中12時まで大盛況でした。

ヒーローを作る、と言う事をしていきたい。

SHUNSUKE:
今力を入れている事、未来へのビジョンってありますか?

MC BULL:
直近で言えば、2/22に新宿王城ビルで行われるDJ YUTAROのワンマンに力を入れてます。今回全面的なサポートをしていて、開催まではそこに尽力しようかなと。彼が空いている時間は全部使って、ツアーを組んだり、クオリティの高い動画を撮って告知したりしています。DJは勿論、ものすごく良いんですけど、YUTAROはマインドが良い意味で狂ってるんですよ笑
実際に名前がある人達とプレイ比較しても少しも劣っていない、それどころか食っちゃってることの方が圧倒的に多い。そういう奴が日の目を浴びるべきだと思っていて。DJ同士だと結局は個人事業主同士、食い扶持の潰し合いになっちゃいますからね。俺はMCだからこそ、競合せずに「神輿(みこし)」を担げるんです。 今の東京のシーンにはいろんなDJがいますけど、もう一人ぐらいヒーローがいた方がいい。それも、ただ上手いだけじゃなくて、きちんと看板を掲げてワンマンができるようなスターを作るべきだと思ってます。これは以前DJ KEKKE君とやった成功例があるんで、その別フォーマットですね。「真面目にやってきた本物の奴」が報われなきゃダメなんですよ。インバウンドのお客さんが増えて、シーンが変わってきてますよね、そこでは本当に実力あるDJじゃないとやって行けないと思うし。

SHUNSUKE:
インバウンドが増えて、どんな変化があったと思いますか?

MC BULL:
今までは「友達を何人呼べるか(集客)」でDJが評価されてましたけど、観光客相手じゃその論理は通用しない。「知らない客をどれだけ踊らせて、店に滞在させられるか」という純粋なDJスキルが問われるようになります。店側だって、下手な若手に集客頼むより、ギャラ払ってでも確実に客を楽しませる上手いDJを雇う方が、結果的に売上が立つことに気づき始めてますよ。圧倒的な個の力が重要になって来てると思います。そういう意味でも、次のニュースターは誰か?って言われたら、俺は間違いなくYUTAROだと思います。彼は空気を読む力も強いし、流行りをかけつつも、人と違うアプローチで畳み掛けられる。今はもうラップシーン同様、DJ業界もひっくり返る時が来てます。だから俺は、自分の看板と実力を持ってる奴をサポートしたい。これを見て「BULLはがっついてるな」とか「金儲けか」とか思う奴がいるなら、もう本当に残念ですね。俺に直接的なメリットなんてないですから。でも逆に、そういう「やっかみ」が聞こえてくるくらいじゃないと、新しいムーブメントは作れないと思ってます。

SHUNSUKE:
キングメーカーって言ったらちょっと語弊あるかもしれないけど、長くシーンにいるからこそ、これからを引っ張る人間を世に送り出す動きっていうのもBULLの仕事かもしれないね。では、自分のMCとして今までやってきたことを後輩たちへ伝えていく活動みたいなものってどう思ってるかな?東京ではシーンで目立ち続けるMCが少ない印象があります。

MC BULL:
そうですね。多くの先輩たちが引退していって、僕の年齢で東京でMCを続けていくというのは完全に未開拓なんです。現段階では後続が全然出てきていない。でも、MCを教えるのって本当に難しいんですよ。「技術」だけじゃなくて、DJ以上に空気を読まないといけないから。DJは音楽で「点」を打ちつつ長い一本の線を一度のプレイの中で作っていく仕事だとすれば、MCはその線に高さを出して、さらに奥まで飛ばす仕事です。フロアで誰が踊っていないか、誰が酒を頼んでいるか、ナンパしてる奴がいるか、そいつの服装は何か。とにかく、現場での判断がメインです。どれだけ観察して、フロアを一つにするか。その方法は色々あるのかもしれないけど、そのすべてをテキスト化して教えるのは無理なんです。DJがやっぱロジカルにフロアを組み立ててるわけなんだから、 MCもロジカルにやらないとダメっていうのは思いますよ。そこを育てたい。俺の後ろについてきて見て盗んでほしいとは思います。何を喋って、どんな姿勢でいるのか見てほしいですね。
姿勢の部分で話をすると、東京のシーンではないんですけど、以前、大阪の重鎮であるMC MOGGYYさんと初めて共演した時に、「BULL君って大阪の人なん?」って言われたんですよ。凄く嬉しかったです、「俺、間違ってなかったんだ」って報われましたね。東京では前例のない道を走っていて、何を持って正解なのか分からなかったけど、数多くパーティMCがいる大阪という街の重鎮にそう言ってもらえて、なんとなくそれが見えたというか。感慨深かったです。東京では、今まで「パーティーMC」としてのスタンスを作りづらい状況もあったけど、新宿にあるWarp Shinjukuで、自分よりはるかに上を行く「パーティをする事が仕事」という人たちに沢山出会えた事も今の自分の姿勢に大きな影響を与えてくれました。

腐らずに頑張り続ければ、すごく楽しい人生が待っている業界

SHUNSUKE:
最後に、MCでやっていきたい人や、今悩んでいる人へ一言お願いします。

BULL:
興味があるなら、まずはやってみたらいいと思います。 この業界は、普通の会社の縦社会では絶対に出会えないような人と出会えるし、日常生活とは一線を画した刺激があって面白いですから。 もし仮にMCを辞めて就職したとしても、ここで学んだ「どうやって上に上がっていくか」というマインドや経験は、どんな仕事でも絶対に役に立ちますしね。とは言え、楽しい事だけじゃないのは事実でもあります。よく言うんですけど、「寿司屋と一緒」なんですよ。弟子入りしていきなり寿司を握らせてもらえるわけがない。下積みがあって当たり前なんです。それはどこの世界でも一緒じゃないですか?だから、すぐに結果が出なくても腐らずに頑張り続ければ、すごく楽しい人生が待っている業界だと思いますよ。

プロフィール

  • BULL

    BULL

    東京出身ラッパー /MC。 今までに DJ HAZIME,DJ Souljah, などの作品に参加し、現在では渋谷を中心 に LIVE, オーガナイズ , 楽曲制作を精力的に行っている。 サイド MC に至っては渋谷で一番マイクを握る男、盛り上がるパーティーには 不可欠な MC と言われる。 年間 300 本以上の現場に出演し、多くの実力派 DJ 達がこぞって欲しがる全フ ロア対応型ラッパー。 2015年6月「BULLMATIC」,2016年12 月には 2nd Album「Co-Laboratry」を発売。 2024 年 1 月には 3rd Album「BACK&FORTH EP」を発売。 SIDE MC としても活動しており渋谷を中心に活躍中。 さらにその活動は CLUB イベントに留まらず 2018年4月から原宿avex artist academyに新設されたラップボーカルコー スの講師をKEN THE 390,晋平太とともに勤めていた。 毎週水曜ABEMA TV内''abema mix'' 出演 w/DJ CELORY a.k.a Mr.Beats WREP ラジオ毎週金曜 18:00-20:00「ロクレプ」パーソナリティー ABEMA TV「ハイスクールダンジョン」にもオーガナイザーの Zeebra と共に 司会も務めた。 その他大型野外イベント、LIVE イベント、オンラインイベントにも多く出演している

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