「僕達のやってきたことには価値がある。」

様々な角度から音楽を伝え続けるDJ YUTAROのキャリアとは?

ライター:DJ SHUNSUKE

パーティーを通して人の心を強く揺さぶり続ける人達がいる。
彼らは何故、今の仕事を選んだのか?
このコーナーではパーティーというカルチャーに関わり続ける演出家たちの過去から現在まで続くキャリアを紐解いていきます。

第十六回は圧倒的な技術と知識でナイトクラブをロックし続けるDJ YUTAROさんのキャリア、前半に続いて後編をお送りします。

ナイトクラブ以外での活動について

SHUNSUKE:
ナイトクラブ以外にもいわゆる夜中に遊びに来られないファン層に向けた配信とかにも力を入れて活動してるイメージがあるんだけど、どういうきっかけで始めたの?

YUTARO:
割と皆さん、コロナのパンデミックをきっかけに配信をスタートした方が多かったと思うんですが、僕は2018.19年くらいです。それこそ、スキル的なものをより磨かなければいけないと思っていた時に情報を仕入れて。で、色々調べてみたらやってみようかなと思ってた配信ツールにDJが2人位しかいなかったんですよ。オールディーズを流している人と凄いギャルDJだけ、みたいな状態でした。「これはチャンスだな。」って思って始めたんですが、その当時はあまり配信に対して良いイメージを持たれていない方々とも仕事をしていたので「あんまり公にするな。」みたいなことも言われました。なので最初はコソコソ家でやってましたね。

SHUNSUKE:
その辺の活動もイージーにスタート出来たわけではないんだね。

YUTARO:
はい。2.3年そんな感じでやったのかな。そうこうしているうちに、パンデミックになって現場のDJの皆さんも、配信の世界にも少し興味を持たれるようになるんです。そういう状態の中でみんなとスタートの時期が違うので、いわゆるファンの数も違うし、どうしても目立っちゃいますよね。続けていくうちに自然と存在が知られてしまった感じです。時代の流れの中で必要とされたものを既にやっていた事で先駆者的な見られ方もあったのかな。配信で目立ったことで華やかに思われたかもしれないですけど、洞窟みたいなクラブとかで必死にDJしてきたし、見られ方に対して色々な葛藤もありました。今はもうそういう時代を知ってくれてる人も増えましたけど。色々言われてスタートした配信ですが、多くのファンの方に支えてもらって、有難いことにマネタイズも出来ていたし、配信だけれど中途半端にやってる場合じゃなかったです。本気でやっていましたし、今もそれは変わらないです。

SHUNSUKE:
個人的には西東京で活動しているDJ YUTAROという存在のイメージの方が強かったから、後々配信もやってる事を知って驚いたのを覚えてる。その後IBEX TOKYOでのプレイを聞いて衝撃を受けて。

YUTARO:
IBEXでプレイさせてもらっていたころは、トリッキーな事や磨いてきた感覚的なものをしっかり現場で出してみてその割合を修正していったり、どうすれば一番スムーズなのか、クラブDJとして人を踊らせることが出来るのかの再確認と、説得力を得るための経験を積ませてもらっていた感じです。クラブは生ものだし、自分の出したい事だけをやっても当然ハマらないケースも出てくるので、敢えて自分を消したりするような選曲のタイミングをつくったりとか。アイディアの中で勝負してみてとんでもないハマり方をしたり、滑ったり。大きな経験を積ませてもらいましたね。4年くらいやらせてもらいました。凄く素晴らしい時間だったんですが、同じ場所にずっといると止まってしまうんじゃないかという恐怖感もあるので、レギュラーとしては卒業させてもらいました。今もちょくちょく声を掛けてもらって出ているんですけどね!

 

見えないオーディエンスに対して選曲する事の難しさ

SHUNSUKE:
配信時に強く意識してる事とかってある??

YUTARO:
絶対譲れないのは「これぞナイトクラブだぞ!」っていう曲を必ず掛ける事です。音楽を知らない人もいれば、めちゃくちゃ詳しい人もいるんです。割と広い幅選曲はしていますが、楽曲の中で現場ではこれが掛かってるよ、とかアメリカでは流行ってるよ、とか凄く大事にしてますね。そういう中で知識を広げていってもらえたらっていうのもあるので意識してます。凄く。

SHUNSUKE:
自分もコロナ禍で配信をした事が数回あるんだけど、コメント欄が突如盛り上がったりした事があって。知っている人が来たときはその人の趣味とかが分かるから当てられるけど、知らない視聴者が突然増えたりした時の作り方とかは結構苦労したんです。普段はフロア見ながらやるけど、コメント見ながらって難しいもんだなあなんて。

YUTARO:
レスポンスって配信の場合アクションだったり、コメントだったりになってくるじゃないですか。でもそのコメントだったリアクションだったりを紐解いていけるように探りながらやるのもおもしろいんですよ。絵文字だけ送ってくる人もいるので、そういう人の反応をあの手この手で探りつつやったりしますね。盛り上がってくれたらやっぱり嬉しいし。で、これってやっぱり観察力なんですよ。現場でもそういう小さな変化とかを観察しつつ、色々プレイするんですけど、文字やアクションメインの配信に比べるとやっぱり直接的な反応っていうのは分かりやすいです。現場でお客さんに当てる感覚は観察力を磨いたことで伸びたと思ってます。

SHUNSUKE:
注意深く観察することの重要性。現場もそうだけど、配信も一緒だということだね。勉強になる。これからも配信は続けるの?

YUTARO:
ニーズのある事だと思ってます。配信は上がり下がりもありつつ長い間続けてきたので、現場に来られない人も音楽とDJを楽しんで聞き続けてもらえるようにしたいですね。そういう場所提供はずっと続けたい。

僕達のやってきたことには価値がある

SHUNSUKE:
今後の日本のシーンに思う事や願う事ってある??

YUTARO:
ギャラを上げてほしいです笑
今ラッパーの皆さん凄く稼げてる中で、DJそのものの価値が低く見出されすぎてると思う。まあ、金額として出されなくても僕達が本気でやってきたことには価値があるのは絶対に変わらないんですが、色々な思考を巡らせて必死にやってきているのを世間の人にも業界の人にも分かってもらえたらなって本当に思います。それが対価として認められたらモチベーションはもっと上がりますしね。頑張ってやってきた人達の全員のギャラを上げてほしい。これは本当に思ってますね。あとは僕は配信を見ててくれる人達が割と現場にも遊びに来てくれるんですけど色んな意味での間口を広げたいなって思います。お店への入りづらさとか威圧感とか、入口結構怖いとか、昔はそのスリリングな感じが良いって時代もありましたけど、なんていうんですかね、もっとキャッチ―な入口であってほしいなって思ったりもします。入るきっかけは何でもいいんですけど、入りにくいとかは慣れていない人からしたらなんか怖いじゃないですか。そういうの無くしたいですね。

SHUNSUKE:
確かに最初は入口がとても怖かった。店の中にも怖い人ばかりいるように見えた。

YUTARO:
はい、でもそれは実際話してみたらいい人だったっていうパターンばっかりじゃないですか。遊んでる人もスタッフも、優しい人ばっかりだし。僕は配信も含め色々な活動を通して、クラブに来ないような人達もクラブに興味を持ってもらいたいし、現場に足を運んでくれるように引っ張っていきたい。なので、来にくいって環境は絶対嫌なんですよ。楽しい場所なのに、最初に来るタイミングで躊躇ってしまう。そういうのが少ない、とにかく入りやすい良いイメージを作れないかなと。楽しくて暖かいっていう本当のクラブの実状みたいなのがどうにかしてもっと表に出ないかなって考えてたりもしますね。クラブシーンも過去に比べたら大きくなったのかもしれないけれど、もっともっと大きくなるべきだと感じてます。間口を大きくして楽しみたい人を多く受け入れて、より大きなシーンに変わっていってほしいなって思います。

SHUNSUKE:
お世辞じゃなくて、そういう変化を起こすことのできる数少ないDJだと思ってます。
長いインタビュー、ありがとうございました!

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