技術だけでは到達できない“説得力”を身につけたい。数々のフロアを沸かせてきたANCHINが目指す先

ヒップホップ、R&B、SOULにHOUSE......。その守備範囲の異常な広さの秘密とは!?(後編)

ライター:ほりさげ

パーティーを通して人の心を強く揺さぶり続ける人たちがいる。彼らはなぜ、この仕事を選んだのか?このコーナーではパーティーというカルチャーに関わり続ける演出家たちの過去から現在まで続くキャリアを紐解いていきます。
今回のゲストは、大阪拠点のDJ、ANCHINさん。前編では音楽との出会いや、カルチャーとどう向き合ってきたかをお聞きしてきましたが、後編では、彼女のDJ観や目指す像について掘り下げていきます!

インタビュー前編はこちら → あの場所で「パーティとはなんぞ」を教えてもらった。目覚ましい飛躍を続けるANCHINの知られざるキャリア

ヒップホップとHOUSEを
並行してディグる大学時代

レペゼン :
ANCHINさんは、新譜・旧譜のヒップホップ、R&Bはもちろん、HOUSEやAMAPIANOまで、本当に幅広い音楽をかけられます。そういう音楽性はどういう風に培われてきたんですか?

ANCHIN :
そうですね、ダンスをやっていた頃は2000年代のヒップホップをよく聴いていたんですが、「もっと昔の曲を知りたい」と思うようになって。いろいろネットとか雑誌とかで調べまくっているうちに90年代のラッパーとかプロデューサーにたどり着きました。そこからさらにその人らがサンプリングしてる元ネタを探すのにハマっていった結果、SOULとかFUNKにも行き着いて。

レペゼン :
そんな深いところまで1人でディグっていったとは!

ANCHIN :
たしかに、何に対しても収集癖があるかもしれないですね。それと大学の頃はHOUSEダンスもしていたので、ヒップホップやR&Bとはまた別に、HOUSEミュージックも掘っていました。

レペゼン :
HOUSEはどうやって掘っていたんですか?

ANCHIN :
音楽イベントに遊びに行ってダンサーの先輩達に教えてもらったり、大学の同級生が働いているレコード屋さんに遊びに行って、そこのオーナーさんにいろいろ音楽のことを教えてもらったりしていました。HOUSEミュージックの基盤みたいなところは、その頃くらいにできあがっていったと思います。

レペゼン :
ヒップホップやその元ネタと同時進行で、HOUSEにも詳しくなっていったんですね。だいぶ特殊な二刀流ですね笑

レジェンドDJを聴く為に
夜行バスに飛び乗って東京へ

レペゼン :
これまでのキャリアで、ターニングポイントになった出来事はありますか?

ANCHIN :
2016年に、MASTERS AT WORK(*)(以下 : MAW)の10周年ぶりの来日の機会があって。そこに遊びに行くために1人で夜行バスに乗って東京に行きました。それがターニングポイントって言えるくらい衝撃でした。

※ …  ルイ・ヴェガとケニー・ドープによるNYハウスの伝説的ユニット。90年代前半から活動を開始し、ラテン、アフリカン、ジャズ、ヒップホップ、レゲエなど、幅広いジャンルを取り込んだサウンドで今もなお高い人気を誇る。

レペゼン :
どんな雰囲気だったんですか?

ANCHIN :
会場のクラブがめっちゃ広くていくつかのフロアに分かれていたんです。メインフロアではずっと2人が回して、別のフロアでは日本の有名なDJも回してたんですけど、MAWのDJが良すぎて他のフロアには全然行けないくらいでした笑

レペゼン :
具体的にどういう音楽なんですか?

ANCHIN :
基本的にはMAWはHOUSEミュージックなんですけど、けっこうリミックスワークも多くて。この時はMAWがプロデュースしている有名な曲やリミックスした曲を中心にかけていました。もう「生きてて良かった!」って思えるくらい良かったですね。

レペゼン :
そういう良い音を浴びまくってきた経験がANCHINさんのDJにも反映されている気がします。「めちゃくちゃ音楽聴いて来たんだな」と分かるというか。

MAWの2人によるDJ(ANCHIN撮影)。終始人がパンパンだったそう!

「自分が楽しいのは大前提」

レペゼン :
ちなみにDJされてる間って、何を考てますか?

ANCHIN :
お客さんが楽しめているかどうかを一番考えてますね。自分のDJなので自分が楽しいのは当たり前として、お客さんも楽しんでもらえてるかというのは大事にしながら選曲しています。

レペゼン :
なるほど。「自分も楽しい」というのはシンプルなようで大事ですね。

ANCHIN :
あとはそのパーティが大事にしているイメージも意識しています。その空気感から大きく逸れたDJをしていると、全員置いてけぼりになるので。

レペゼン :
なるほど。かなり色々並行して考えているんですね。プレイ中のDJはクールというかポーカーフェイスな方が多いので、何を考えていか聞くのは面白いです。

ANCHIN :
ですよね。私も気づいたら無表情になってます。

レペゼン :
あ、ANCHINさんの場合は「気づいたら」なんですね笑

ANCHIN :
無表情でやろうとしてるつもりは全然ないんですけどね。そうなってる時はちょっと焦ってる時かもしれないです。「次の曲どうしよ…!」ってなってたり笑

レペゼン :
意外すぎます笑

昨年は、UK発の人気レーベル「Apron Records(エプロンレコーズ)」の主宰、スティーブン・ジュリアンとも共演を果たす。

技術うんぬんを超えたDJ

レペゼン :
ANCHINさんにとっての理想のDJ、もしくは目指しているDJ像について教えてください。

ANCHIN :
なんだろう……。でも説得力のあるDJは目指したいですね。

レペゼン :
なるほど。ちなみに「DJの説得力」ってどうやってつくと思いますか?

ANCHIN :
やっぱり経験値を積むしかないのかなと。「この人がかけてるからかっこいい」みたいなのも、説得力があるからこそなんじゃないかって思いますし。技術だけでどうにかできるものじゃないと思うので、ちょっと精神論的っぽくなるんですけどね。大阪は説得力のあるDJがめちゃくちゃ多いと思うので、私もそうなれるように頑張ります。

レペゼン :
今、まさにさまざまな現場で活躍し続けているANCHINさんは、着々と説得力を付けられていると思います。
最後に告知があればお願いします。

ANCHIN :
何ヶ月か前に、ニューヨークに本社がある「Ace Hotel」がプロデュースしているDJミックスをアップする企画に参加させてもらえて。「Ace Hotel Kyoto」でレコーディングしたDJがYoutubeでアップされているので、よかったらチェックしてみてください。

レペゼン :
素敵な企画ですね。しかも今回話していただいたANCHINさんのルーツや考え方などを知ったうえで聴くと、また感じ方が変わりそうです。というわけで、今回はお忙しいなかありがとうございました!

プロフィール

  • ANCHIN

    ANCHIN

    大阪を中心に活動中のDJ。小2の時のダンスとの出会いに端を発するダンサーとしてのキャリアやアイデンティティを軸に置きつつ、新旧問わず多様なジャンルを好む良い意味での“雑食性”と、それをギグに昇華する鋭い感性からなるプレイスタイルで、あらゆる現場にフィット。トレンドを抑えつつ、フロアを的確に揺らすグルーヴ感が評判となり、数々の主要イベントへの出演を果たす。 シーン、世代、地域といったあらゆるボーダーを飛び越え、文化や人を繋げるキーパーソンとして注目を集めている。

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