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ヒップホップ好きのスポーツ選手や文化人のキャリアについて全4回に渡ってインタビューしていく「あの人も実はヒップホップ」。今月のゲストは、wackwack creative代表の井川裕介(イカワ・ユウスケ)さん。幅広いビジネスに挑戦してきた井川さんが一貫して持ち続けるコンセプトは、とてもヒップホップ的!そして、会社運営に奔走していた頃に力をもらったラップソングとは!
前回の記事はこちら→ 1年で3,000人分の肉を焼いた男。斬新なアイデアが光る“出張BBQ”で東京中を駆け巡った井川裕介
盆栽ってかっこいいけど
なんか遠い世界じゃない?

レペゼン :
井川さんが去年から始められた盆栽のブランド「zen void.」についても、改めてお聞きしたいと思います。どういったブランドなんですか?
井川裕介 :
少し前から、海外向けのビジネスをやってみたいなと考えていたんです。植物の輸出は法律で規制されている(*)ので、盆栽って海外の人からすると「かっこいいのに買って帰れない」というジレンマがあるんですよね。
※ … 国を超えた病害虫の侵入を防ぐ目的のもと定められた「植物検疫法」により、植物を輸出入をする際には厳しい検査をパスする必要がある。
レペゼン :
海外の方にとってもどうですが、そもそも私たち日本人にとっても、盆栽は身近なようで知らない世界ですよね。
井川裕介 :
そうそう。今でこそ盆栽のアーティストもいらっしゃったりしますが、実際に自分で盆栽を育てるには結構ハードルが高いんですよ。水やりも頻繁にやらないといけないし、日当たりも重要ですしね。あのディテールに惹かれる人が多い一方で、触る機会はほとんどない。そこで、もう少しカジュアルに生活の中に盆栽を取り入れられたら面白そうだと考えて、ドライ加工済みで手間のかからない盆栽のプロダクトを扱う「zen void.」を始めました。
レペゼン :
これまで飲食を専門とされてきた井川さんですが、どのようにして盆栽のプロダクト化を進めていったんですか?
井川裕介 :
「体験をどう商品にするか」という視点で作りました。盆栽も育てるものとしてではなく、持ち帰れる日本文化の体験として再編集できると考え、素材や構造を見直してプロダクト化していきました。
レペゼン :
おお。1から考えて作り込まれたんですね。第一回目でも話されていましたが、「ドライ加工を施した盆栽」の魅力についてお話しいただけますか?
井川裕介 :
そうですね。特徴としては、ドライ加工をすることで海外発送できるようになるので、ビジネスとしても海外に展開できる可能性があるということと、ノーメンテナンスで手元に置いておけることですね。水や日光がなくても大丈夫なので。

レペゼン :
実際、海外からの反応はどうでしたか?
井川裕介 :
とても良い感じでした。始めてすぐ、台湾のセレクトショップから問い合わせがあったので取り扱いを始めてもらったところ、現地の方々からとても反応が良くて。海外からも一定のニーズがあるんだということを実感しましたね。
レペゼン :
素敵です!去年始まったばかりということで、これからどんどん広がっていきそうですね。
SNSで叩かれまくっても
「よそはよそ。うちはうち」

レペゼン :
ちなみに、盆栽をドライ加工してプロダクトにするというところで、「それは邪道だ、リアルじゃない」というような声が盆栽シーンから上がったりしないんでしょうか?
井川裕介 :
たしかにその可能性はありますよね。でもそういう声って、他のビジネスをやっていても言われる余地があると思っていて。いわゆる王道のやり方ではないことに対して文句を言いたくなる人は、どの世界でも一定数いるじゃないですか。なんなら「REALBBQ」の時も、某BBQ団体からFacebookでひたすら悪口を書かれたりもしましたからね笑
レペゼン :
え、そうだったんですか!
井川裕介 :
けっこう書きたい放題で、まさに“beef(ビーフ)”状態でした笑
レペゼン :
文字通りですね笑
でも、「zen void.」のプロダクトを通して、国内外問わず、盆栽の魅力を見つめるきっかけになるきっかけになると思うので、ぜひ頑張っていただきたいところです。
井川裕介 :
ありがとうございます。でも「どっちが正しいんだ」って問うつもりもないし、なんなら「王道の方が正しい」でも全然良いと思うんです。僕らがやってるサービスや扱っているプロダクトって、割とライト層への入り口なんですよね。そういう広い入り口から入っていろいろディグっていった結果、「こっちの方が本質じゃない?」と王道の方に進んでいく人がいれば、それはそれで素敵なことじゃないですか。そこの部分で本質を争うつもりはないし、「うちはうち、よそはよそ」だと思っています。
レペゼン :
その姿勢自体がとてもかっこいいです!
屋上BBQ、不純喫茶、ドライ盆栽に
共通するヒップホップ的マインド

レペゼン :
屋上BBQ、不純喫茶ドープ、そしてドライ加工の盆栽など、幅広いビジネスを展開されてきた井川さんですが、改めてヒップホップから影響を受けた要素を教えていただけますか?
井川裕介 :
役目を終えたものだったり古くなってしまったものに対して、別の視点を与えることで再評価に繋げたり、リブランディングすることですね。その行動は、我々がやっている全ての事業に共通していると思っています。
レペゼン :
興味深いですね。詳しくお聞きできますか?
井川裕介 :
例えば飲食と盆栽とで、やっていることは違うんですけど、自分の中でそのコンセプトはリンクしていて。屋上のBBQ事業とかも同じです。多くの小規模のビルの屋上って、何も利用されてなくて完全にデッドスペースなんですよ。そこに対して、BBQ場としてのブランディングやシステム的なパッケージングを施すことで、需要が生まれる。そうすることで活気が出るんですよね。

レペゼン :
なるほど。
井川裕介 :
「不純喫茶ドープ」も、30~40年間経って役目を終えた純喫茶の空間に、少し違ったブランディングを加えることで再活性していくという試みですしね。そういう考え方が根幹的に好きです。
レペゼン :
まさにヒップホップ的ですね。もともとあるものを工夫することで新たな価値を作ったり、マイナスと思われるものをプラスに持っていくという。
井川裕介 :
そうですね。ある種のサンプリングになっているかもしれないです。
夜の会社で爆音でかけた
「貧乏なんて気にしない」

レペゼン :
最後に、これまでの人生で、ハードな体験をされている時に勇気をもらったラップソングをご紹介いただけますか?
井川裕介 :
会社を経営していく中で資金繰りに苦戦していた時があったんですが、その頃は、夜、会社でKOHHの「貧乏なんて気にしない」を爆音でリピートで流しながら仕事してました笑
【KOHH – 貧乏なんて気にしない】
レペゼン :
めちゃくちゃリアルですね笑
井川裕介 :
あとは、第三回目でもお話ししましたが、コロナで全てが0になったあと「不純喫茶ドープ」を始める時に、若い時からずっと聴いてきたNITRO MICROPHONE UNDERGROUNDの中の「切ない気持ちのゴミ捨て場 / 夜になると開きたくなる扉」というリリックをコンセプトとして使わせてもらうというのは、感慨深かったです。MACKA-CHINさんはMVで使っていただいたり、受け入れていただいて感謝しかないですね。ヒップホップに出会わせてくれたのもニトロですし、人生で2回救われてますね笑
【MULBE – 夜になると (pro. MACKA-CHIN)】
レペゼン :
素敵な話です。いろんな経験を経て聞こえ方が変わったり、改めて魅了されたりするのも、クラシックたるゆえんかもしれませんね。というわけで、本日は井川さんのキャリアのお話や、ビジネスにまつわる美学についてお聞きしました。ありがとうございました!

