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ヒップホップ好きのスポーツ選手や文化人のキャリアについて全4回に渡ってインタビューしていく「あの人も実はヒップホップ」。今月のゲストは、wackwack creative代表の井川裕介(イカワ・ユウスケ)さん。転職、副業、独立…と、キャリアを変えながら自分にしかできない仕事を見つけてこられました。「不純喫茶ドープ」のコンセプトは、あの名曲のリリックだった!
前回の記事はこちら→ オーストラリアで出会ったのは…カジュアルで本格的なBBQ!?井川裕介のアイデア力を育んだ10代の思い出
飲み会続きの日々。
「時間がもったいない…」

レペゼン :
高校時代は美容室でもバイトをされていて、そのまま美容師としても働かれていたそうですね。
井川裕介 :
はい。高校卒業後に美容学校に進んで、そこから美容師になりました。でも、美容師っていつかは独立しないといけない職業なんですよね。それを考えた時に、人生を通してやりたいと言えるくらいのモチベーションにまで持っていくことができず、数年間働いた後、転職して、調味料の営業職に就きました。
レペゼン :
違う業種に進まれたんですね。具体的にどんなことをされたんですか?
井川裕介 :
食品メーカーや外食のチェーン店、あとは産業給食の会社(*)に向けて、自社の調味料を提案する仕事ですね。ただ、その会社は仕事終わりに社員同士でしょっちゅう飲みに行く習慣があるところだったんです。毎回ベロベロになるまで飲んだりするわけですが、それが続くうちに、「この時間を使って、もっと他のことやりたい!」って思うようになって笑
そこで副業として、BBQの出張サービスを始めることにしました。
※ … 企業や工場、病院、福祉施設など、企業や団体向けに提供される給食サービス。
レペゼン :
たしかに20代から飲み会三昧だと、悶々としそうですね笑
BBQを選んだきっかけはなんだったんですか?
井川裕介 :
「日本のBBQって、みんな不満を持ちながらやってるよな」と思ったんです。今でこそ設備が整っているところが増えましたが、当時のBBQは、公園に重い機材を運び込んだり準備や片付けがとにかくめんどくさくて。内容も肉を焦がしながら焼いて、美味しくないけど野菜も一応焼いて食べて、最後は余った具材で焼きそば作るけど失敗して……みたいなのが多くて笑
レペゼン :
言われてみれば…。
井川裕介 :
それって決して満足度が高い経験とは言えない。逆にその不満点をクリアしていくサービスができたら、日本のBBQシーンも面白くなるんじゃないかなと思って。
レペゼン :
そこで、オーストラリアでのBBQ体験が生きたわけですね!「出張」とは、どういったスタイルだったんですか?
井川裕介 :
機材一式と食材を乗せた軽バンで、お客様がBBQする現場に向かってセッティングをします。面倒な準備や片付けはもちろん、僕がその場で調理までサポートするため、お客様は体一つで本格的なBBQを堪能できるんです

レペゼン :
ありそうでなかった斬新なサービスですね。利用された方からの反応はいかがでしたか?
井川裕介 :
それが、やってみたらかなりのニーズがあって、半年くらいで本業の方の月給を超えたんですよ。
レペゼン :
え、すごいですね!土日だけの稼働でそこまでとは。
軽バンを相棒に各地を回り
年間3,000人とBBQをするまでに

レペゼン :
副業だったところから、会社を立ち上げたきっかけはなんだったんですか?
井川裕介 :
とある雑誌の取材に出たところ、普通に会社の人にバレてしまったんです笑
レペゼン :
なんと!迂闊でしたね笑
井川裕介 :
「出張BBQは私服でやってるから大丈夫」と思ったのが間違いでした笑
今でこそ副業って当たり前になっていますが、当時はまだグレーなものだったんですよね。ある日、先輩に会社で呼び出されて「副業を辞めるか、会社を辞めるか、どっちだ」と問い詰められました。それが秋頃だったんですが、どちらにせよそこから何ヶ月かはBBQのオフシーズンなので、その場では「副業やめます」と言って、そこから数ヶ月間は会社を立ち上げる準備に移りました。そして、再びBBQシーズンになる春前に会社を辞めて「REALBBQ」を立ち上げたという流れです。
レペゼン :
なるほど。満を持しての起業というわけですが、1年目はどうでしたか?
井川裕介 :
1期目はひたすら出張スタイルをやり続けて、年間で3,000人くらいとBBQしました笑
一番多い時は、週に12回くらいやってましたね。
レペゼン :
凄まじい数字!笑
ひたすら焼き続けていたわけですね。
井川裕介 :
でも続けていくなかで、「BBQをやりたいという人の数に対して場所が足りない」という課題が出てきたんです。そこで今度は、小規模のビルの屋上をBBQ場化するというビジネスを始めました。1発目に打ち出した時にとても好反応だったので、一気に投資をしてこれから回収…というところに、コロナが来たんです。それで完全に売上も0になってしまいました。
レペゼン :
これからと言う時に…。
オープン前夜に奇跡のバズ!?
新しさと懐かしさが同居する不純喫茶

レペゼン :
山あり谷ありという感じですが、コロナ禍の大打撃から、どう再起につながるんですか?
井川裕介 :
とにかくやれることをやろうということで、中野で「不純喫茶ドープ」を始めました。それが最初からバチっとはまってくれて、とりあえず生き永らえました。しかもこれも面白いことに、「ドープ」はオープンの前日にバズったんですよ笑
レペゼン :
え、どういうことですか?
井川裕介 :
店の外に、食品サンプルが並んだショーケースを置いているんですが、それを見た若いアーティストの方が、SNSに写真を投稿してくれたんです。そのビジュアルと、ネーミングの面白さも相まってバズったようです。
レペゼン :
それはすごい!いわゆる昭和レトロ的な世界観が若者にハマったんですね。
井川裕介 :
そうかもしれません。SNS世代に面白がってもらえるようなフックを散りばめていたつもりなんですが、まさかオープン前からそうなるとは思いませんでした。
店のコンセプトになったのは
MACKA-CHINのリリック

レペゼン :
また「ドープ」では、日本のヒップホップが流れていると聞きましたが、お店のテーマソング的な曲をあげるとすれば、いかがでしょう?
井川裕介 :
やっぱり 「NITRO MICROPHONE UNDERGROUND」ですね。というのも、お店のベースのコンセプトがここから始まっていて。
【NITRO MICROPHONE UNDERGROUND – NITRO MICROPHONE UNDERGROUND】
レペゼン :
井川さんがヒップホップと出会った頃から愛聴している曲でしたね!「コンセプトがここから始まっている」というと?
井川裕介 :
その頃って、それまでやっていた店を全部潰して、夜も開いてる酒を飲める喫茶店を作るということもあって、「切ない気持ちのゴミ捨て場。夜になると開きたくなる扉(*)」という表現が「ドープ」にぴったりだったんですよ笑
まああまり明確に解釈は定義していなくて、みなさん各々の解釈で楽しんでもらえればいいと思ってるんですけど。
※ … 「NITRO MICROPHONE UNDERGROUND」での、MACKA-CHINによるリリックの一節。
レペゼン :
分かる人には分かるサンプリングですね。
井川裕介 :
でも周りからは、「飲食店なのに、テーマが『ゴミ捨て場』は良くない」って反対されましたけどね笑
でもそういう店主の趣味全開なのって、むしろ純喫茶的だと思うんです。昔ながらの喫茶店って、店主とかオーナーの趣味と思われるよく分からない物が置かれてたりしたじゃないですか。
レペゼン :
たしかに。店主の人柄が反映されていますよね。そうやって、見えるところにも見えないところにも、ヒップホップ要素が散りばめられているが「不純喫茶ドープ」なんですね。
次回、いよいよ最終回。BBQや盆栽といった幅広いビジネスを展開する井川さんの美学に迫るよ。井川さんが、人生のピンチをむかえた時に救われたラップソングは、’10年代の日本のヒップホップを代表するあの1曲!

