ヒップホップ好きのスポーツ選手や文化人のキャリアについてインタビューしていく「あの人も実はヒップホップ」。今月は神奈川県逗子市を拠点に、“心の声をラップにする”「COCORO RAP CONTEST」を主催されている「マイクラおかん」こと下崎真世(しもざき・まよ)さんに4回に渡って、お話をお伺いしました。Vol.1の今回は運営されている飲食プロジェクト「オカンの日替りキッチン」や、「COCORO RAP」についてお話頂きました。
前回の記事はこちら→ 奥州ヒップホップシーンを支える「JAZZRIZE DESIGN」代表・梅田浩司 のキャリアとは?
おかんラッパー!?下崎真世 a.k.a.マイクラおかんとは?
レペゼン:
自己紹介をお願いします。
下崎真世:
“マイクラおかん”という名前で活動している下崎真世(しもざき・まよ)と申します。今年で50歳になります。「オカンの日替りキッチン」という飲食プロジェクトとラップコンテスト「COCORO RAP CONTEST」を中心とした音楽活動をしております。よろしくお願いします。
レペゼン:
ありがとうございます。「COCORO RAP」の活動は最近テレビのニュースなどでもよくお見かけしており、インタビューさせて頂くのを楽しみにしておりました。まずは普段のお仕事である「オカンの日替りキッチン」について教えて頂けますでしょうか?
下崎真世:
「オカンの日替りキッチン」は逗子、葉山のいわゆる“オカン”たちが運営してる飲食プロジェクトです。地域のオカンたちが手作りした料理や惣菜を販売したり、「オカンのごはん便」というデリバリーサービスで、ご家庭に届けるという活動を行っております。
【 オカンの日替りキッチン 】
【 オカンの日替りキッチン の料理】
レペゼン:
めっちゃ美味しそうです!!
下崎真世:
特に産前産後の方々へのサポートに力を入れています。時間的にも、精神的にもその時期ってなかなか料理や家事に時間をかけることができないと思うので。食事の提供はもちろんですが、コミュニケーションの場として、幅広いお客様に利用頂いてます。
レペゼン:
良いですね!そんな飲食プロジェクトを運営されながら、ラップコンテスト「COCORO RAP」も主催されたり、ラッパー、マイクラおかんとしても活動されている下崎さんですが、元々ラップはどういった経緯で始めたんですか?
賞金目当てのラップコンテスト初挑戦で
「呂布カルマ賞」ゲット!?
下崎真世:
実はラップは元々まったく聴いてなくて。2年前、ひょんなことから始めました。その頃、飲食業で使う自分のキッチンカーが欲しいと思っていて、そのために100万円が必要だったんです。そんな時に、日経新聞に載っていたラップコンテストの記事を見つけて。
レペゼン:
日経新聞が主催していた「NIKKEI RAP LIVE VOICE|日経ラップコンテスト」ですね。
下崎真世:
そうなんです。そこに「世の中に言いたいことのある奴はラップにして出てこい」というキャッチコピーが載ってて。その横に「賞金100万円」って書いてあったので、「これだ!」と思って挑戦することにしました。
レペゼン:
面白いですね笑
下崎真世:
なので最初のきっかけは賞金目当てですね笑
ラップやヒップホップの世界に触れたのも、その日経ラップコンテストがきっかけです。
レペゼン:
実際、コンテストの結果はどうだったんですか?
下崎真世:
ありがたいことに、「呂布カルマ賞」をいただきました。
レペゼン:
すごい!どういった点が評価されたんでしょう?
下崎真世:
審査員に呂布さんが参加されるのは知っていたので、当日、柄シャツを着ていったんですよ笑
たぶん私のラップを評価してくれるんだったら呂布さんじゃないかなと思っていたので、そちらに寄せていきましたね。
【NIKKEI RAP LIVE VOICE 2023 決勝大会の様子。下崎さんは39:33〜】
レペゼン:
笑
それが見事にハマったわけですね!
下崎真世:
かもしれないです笑
私の年齢で出場したこともそうですし、「スキルは拙いけど、だからこそ伝わるものがある」と評価してくださいました。でも優勝はできなかったので、100万円はもらえませんでした笑
レペゼン:
笑
その後ご自身でもラップコンテスト「COCORO RAP」を始められたということですが、どういう経緯で立ち上げに至ったのでしょうか?
心の声をラップする。
「COCORO RAP CONTEST」とは?
下崎真世:
日経のラップコンテストが2年間続いた後、終わってしまって。でも私にとってヒップホップと出会うきっかけのコンテストでもあり、とても大きな存在だったので、勝手にその意思を引き継いで私がやろうと思ったんです。日経ラップコンテストと同じく、「社会に言いたいことだったり、日常のリアルを吐き出してもらう」場所を作りたいなと。
レペゼン:
素敵です。
下崎真世:
実はそういうことを求めている方って結構多いんじゃないかなと思っていて。その手段としてラップがとても良いんじゃないかと思い、立ち上げました。
レペゼン:
先日第1回を開催されましたが、反応はいかがでしたか?
下崎真世:
どこの誰だかわからないおばさんがやることに集まってもらえるのか不安だったんですが、結果的には108名の応募があって。年齢も、下は7歳から上は80歳までいらっしゃったし、なかには海外からも応募がありました。世の中に言いたいことがあるものの言えない、もしくは言う場がない方がこんなに多くいらっしゃるのかと。むしろこちらが元気をもらうくらいでしたし、すごく社会の動きのようなものを感じましたね。
【第1回の参加者、ジャッジの方達と】
レペゼン:
めっちゃ良いですね。
下崎真世:
歌ももちろん素敵で感動も共感もするんですけど、「その人がなぜそれを歌ったか」というところにとても興味があって。今回も皆さんにインタビューをしてみると、バックグラウンドが本当にさまざまで。心にモヤモヤを抱えている方や日常的に人には言えないレベルの悩みを抱えられている方だったり。でも皆さん「人生を変えていきたい」と思っている方ばかりだったので、ますます「世間に物申したい」という姿勢を応援したくなりました。
レペゼン:
素晴らしいです。まさにヒップホップマインドだと思います。
そんな下崎さんがインスパイアされたり、「COCORO RAP」立ち上げの際に力をもらったラップソングはありますか?
下崎真世:
第一回目の「COCORO RAP CONTEST」の審査員としても参加いただいたCOMA-CHIさんの『ONENESS』は好きですね。
レペゼン:
名曲ですよね。
下崎真世:
いろんなことがあるけど、それらの経験もひっくるめて前に進むというメッセージにはとても励まされますね。
プロフィール
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大阪府出身。神奈川県逗子市在住。 「オカンの日替りキッチン」運営代表。「COCORO RAP CONTEST」主宰。ラッパー、イベント企画、講演活動なども行うマルチ・ヒップホップ・アクティヴィスト。 大学卒業後、保険会社やアンティークの買い付けの仕事などを経て、逗子へ。地域の“オカン”たちによる手作り料理の販売・配達を行う「オカンの日替りキッチン」を立ち上げ、特に子育て世帯や産前産後の家庭支援を中心に、コミュニティの食と心を支える活動を展開中。2023年、日経新聞主催の「NIKKEI RAP LIVE VOICE」に出場し、ラップ未経験ながら“呂布カルマ賞”を受賞。その後、社会の声なき声を代弁する場を自ら作るべく、「心の声をラップにする」ラップコンテスト「COCORO RAP CONTEST」を主宰。初回から7歳〜80歳、国内外から100件を超える応募を集めるなど、幅広い世代から支持を受ける。 「誰でも主役になれる」「下手でも伝わる」というヒップホップの本質を軸に、言葉を使った自己表現の可能性を広げる活動を続けている。