ヒップホップ好きのスポーツ選手や文化人のキャリアについて全4回に渡ってインタビューしていく「あの人も実はヒップホップ」。
今月のゲストは、人気オーディション番組『ラップスタア』の撮影・編集も務める映像ディレクター・菊池謙太郎さん。vol.2では、学生時代の思い出やヒップホップとの出会いについて聞いていきます!好きなアーティストは……王道よりもコミカル系?独自の着眼点のわけとは!
前回の記事はこちら → プレイヤーの知られざる一面に光を当てる。映像ディレクター・菊池謙太郎の独自の視点。
BOØWYよりも爆風スランプ!
“癖”に惹かれた菊池少年
レペゼン :
菊池さんの幼少期についてもお聞きしたいと思います。地元のむつ市について、そして菊池さんの幼少期について教えていただけますか?
菊池謙太郎 :
むつ市は、東京から帰ろうとすると半日くらいかかるくらい遠いんですが、かといってものすごい山の中というほどの田舎でもなく、普通の小さい町という感じです。
レペゼン :
そうなんですね。どんな子ども時代を過ごされたんですか?
菊池謙太郎 :
子どもの頃は、漫画が好きでした。外で友達と野球して遊んだりすることもあったけど、1人の時は漫画ばっかり読んでいる子どもでした。

レペゼン :
スポーツや部活は何かされていたんですか?
菊池謙太郎 :
小学校でミニバス、中学でソフトテニス、そして高校でボート、そして大学4年間はまたバスケをやってました。なんだか一貫性がないですね笑
レペゼン :
いやいや、アクティブで素敵です!そんな小・中・高校の頃は、地元で音楽やストリートカルチャーを感じる体験はありましたか?
菊池謙太郎 :
何かしらのカルチャーは地元に根付いていたかもしれませんが、当時の自分はキャッチできていなかったです。小学校のころは、上の兄弟がいる同級生たちがBOØWYに夢中になったりはしてたけど、自分は見た目がかっこいいバンドにはあんまり馴染めませんでした。BOØWYよりも、爆風スランプとかUNICORN(ユニコーン)とか、どちらかというと少しコミカルな要素のあるバンドの方が興味がありました。
レペゼン :
なるほど。いわゆる当時の王道だったモテ系ロックよりも、一癖あるバンドに惹かれたんですね。
菊池謙太郎 :
まあ、明確に「かっこいいのが苦手だ!」って敬遠してた感覚はないんですが、スタイリッシュなアーティストは無意識に避けていたかもしれません笑
レペゼン :
個人的に、とても共感できる気がします笑
スチャダラパーの
リリックに受けた衝撃

レペゼン :
そんな菊池さんがヒップホップを聴くようになったのはいつ頃だったんですか?
菊池謙太郎 :
聴くようになったのがはっきりいつ頃かはよく覚えてないんですが、高校の文化祭のステージで、友達がラップとDJみたいなパフォーマンスをしていたのは覚えてます。あまり定かではないですが、スチャダラパーの「今夜はブギーバック」のコピーみたいなのをやってました。
レペゼン :
文化祭で「今夜はブギーバック」ですか!今やっても盛り上がりそうですね。その頃ってちなみに年代的には…?
菊池謙太郎 :
僕は1976年生まれなので、高校時代は90年代前半になります。ちょうどヒップホップが東京で流行り出した頃ですね。とはいえ、ネットもない時代に田舎町でヒップホップのライブをやっていた友達は、かなり先取りしてたと思います。
レペゼン :
たしかに取れる情報が少ないなかで、自分たちでライブができるところまでいくとは……。かっこいいです。
菊池謙太郎 :
ちなみにその子たちはそのライブで、ドリフの「8時だョ!全員集合」の早口言葉のコーナーのBGMをループさせながら友達を呼び込んで早口言葉させるみたいなのをやったりしてました。それに飛び入りしたりして、もはやヒップホップじゃないですね。
レペゼン :
いろんな要素がブレンドされていますね笑
文化祭でそういうライブをする友達の存在もあって、菊池さんもヒップホップを認知していったと。
菊池謙太郎 :
まあその時は「こういう音楽があるのか」くらいの印象だったんですが、上京してからスチャダラをちゃんと聞くようになり、そのままLBネーション(*)を追っていくような感じでした。
※ … 正式名称は「リトル・バード・ネイション」。スチャダラパーを中心としたラップグループ集団。
レペゼン :
アーティストをじわじわ好きになる経験、とても分かります!スチャダラパーのどういった部分に特に惹かれましたか?
菊池謙太郎 :
リリックに面白さを感じましたね。例えば、同じ出来事に対して、まったく違う言葉でBOSEさんとANIさんがラップする「ついてる男」という曲とか。
レペゼン :
ありますね。不運な1日を、悲観的に捉えるバースと、逆にハッピーに捉えるバースの対比が面白い曲ですよね!
菊池謙太郎 :
そういう構造になっている曲を初めて聴いたので、めちゃくちゃ面白いなと思って。スチャダラパーはかなり熱心に聴いていましたね。
ダウンタウンによって生まれた
「面白い人はかっこいい」という価値観
レペゼン :
バンドの時もそうでしたが、菊池さんにとってコミカルさが1つの大事な要素なんですかね?
菊池謙太郎 :
たしかにそうですね。もしかしたら、お笑いが好きなのも大きいかもしれません。自分が高校の時って、ちょうどダウンタウンが爆発的に人気が出てきた時で、「面白いことを考えたりやったりする奴はかっこいい」っていう価値観を彼らがぶち上げた時代な気がしています。

レペゼン :
今、M-1グランプリの存在もあったりして、「お笑い芸人=かっこいい」は当たり前に思えますが、その草分けはやっぱりダウンタウンさんなんですね。当時、何でお笑いを見ていたんですか?
菊池謙太郎 :
それこそ『ダウンタウンのごっつええ感じ』(*)とかですね。ああいう番組を見て育ったからこそ、音楽に対しても面白い要素が入っているものに自然と惹かれるようになったかもしれないです。
※ … 91年から97年までフジテレビ系列で放送されていたお笑いバラエティで、ダウンタウンの冠番組。
レペゼン :
当時の背景と合わせて分析するとすごく面白いですね。しかも、今、菊池さんが、エレキコミックさんをはじめとするお笑いの世界の映像制作をされていることも熱い展開です。次回は、そのあたりの経緯も詳しくお聞きできたらと思います。
ヒップホップの面白さに触れた菊池さんが、どのように映像ディレクターとしてデビューし、『ラップスタア』などの音楽番組に携わるようになったのか。次回vol.3では、社会人時代の話に迫ります。
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プロフィール
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青森県むつ市出身、東京在住の映像ディレクター。主にお笑いと音楽関連の映像を手掛け、特に近年は『ラップスタア』のディレクターとしてラッパーたちの実情や心情を映し出す仕事が高い評価を受けている。また映像にとどまらず、ラッパーの子ども時代のエピソードを綴った書籍『LIFE HISTORY MIXTAPE 01』(まわる書房)を2024年6月に自主制作で刊行し、翌年には同『02』をリリース。アーティストの生い立ちやライフスタイル、また心の機微を伝える優れた聞き手・撮り手として、映像・書籍・トークショーなど多様な場で発信を続ける。 (photo by 白鳥建二)

