お笑いもヒップホップも“ジャンル”じゃない!ヤーレンズ出井隼之介が語る両者の共通点

みんな知ってるあのチェーン店も実はヒップホップ!

ライター:ほりさげ

ヒップホップ好きのスポーツ選手や文化人のキャリアについて全4回に渡ってインタビューしていく「あの人も実はヒップホップ」。今月のゲストは、漫才コンビ・ヤーレンズの出井隼之介さん。熱心なヘッズとして洋楽邦楽問わずディグしてきた出井さんにとって、このカルチャーの魅力とは?そしてお笑いとヒップホップの意外な共通点とは!?

前回の記事はこちら→  芸人仲間からの猛烈なフックアップで火がついた!ヤーレンズ出井隼之介の不屈のマインド

僕らは“持ってない”側の人間

レペゼン :
直近のご活躍についてもお聞きしたいと思います。2025年のM-1ファイナルでは、まさかのトップバッターでしたが、改めて振り返っていかがですか?

出井 :
そうですね。近年は、令和ロマンがM-1で2年連続トップバッターで優勝していたり、キングオブコントでもロングコートダディがトップバッターで優勝したりしてるんですよ。だからそれまでと違って、「トップバッターはそんなに不利じゃない」という解釈が広まってたんです。でも結果的に、不利でしたね笑
いや、不利じゃん!」って思いました笑

レペゼン :
素人ながら、順番の妙はたしかにありそうだなと感じました。中盤でヤーレンズさんが出ていたら……など、どうしても考えてしまいます。

出井 :
去年のM-1の笑神籤(えみくじ)を引いたのが柔道の阿部詩選手で、その前の年は阿部一二三選手が引いた結果、僕らは令和ロマンの後というきつい順番だったんですよね。もうほんとあの兄妹、良い加減にしろよって笑
いつか投げ飛ばしに行かないとなって思ってます笑

レペゼン :
ははは笑

出井 :
まあそれは言い訳として、「結局、自分たちは持ってない」というのはつくづく思いますね。

レペゼン :
「持ってない」というと?

出井 :
10年以上くすぶってたくらいですから才能がそんなにないのは分かるし、2023年は最終決戦で令和ロマンと1票差で敗れたし、2024年と2025年も「順番が違ったらどうだったんだろう」という結果でしたからね。“持ってない側の人間”だということを身にしみて思うんです。

レペゼン :
結果が出るようになってからも、なかなか思うようにいかないことが多いと。

出井 :
でも、だからこそやりがいあるなとも思っていて。今年優勝すれば「全部この為だったんだ」って思えますしね。

レペゼン :
間違いないですね!持たざる者たちの逆転劇というヒップホップ的な展開になることを願っています。

お笑いもヒップホップも
ジャンルの振りをした「概念」

レペゼン :
出井さんのお笑いのキャリアとヒップホップヘッズとしての一面についてお聞きしてきましたが、改めて、お笑いとヒップホップに共通するものはなんだと思いますか?

出井 :
そうですね、どちらも縛られている要素が少なく、自由なことじゃないかと思います。それから、お笑いもヒップホップもジャンルなようで概念だと思っていて。「ここヒップホップだなぁ」って思うお寿司屋さんもいるじゃないですか笑

レペゼン :
たしかにありますね。生き様だったり姿勢だったり。

出井 :
あと、Soup Stock Tokyo(*)もヒップホップだと思うエピソードがあって。

※ … 1999年創業の「食べるスープの専門店」。素材本来の旨味を引き出した無添加のスープやカレーを提供している。

レペゼン :
そうなんですか!どういった点でですか?

出井 :
Soup Stock Tokyoって「女性が1人で行くところ」っていう認識が広まっているし、実際にそういう利用が多いみたいなんですが、ある時期から乳幼児に向けて離乳食の無料サービスを始めたんです。それに対して、「店内がうるさくなるから嫌だ」っていう声が上がって、一時期炎上したんですよ。

レペゼン :
なるほど。「静かにゆっくり食べたいのに!」というクレームですね。

出井 :
そうなんです。それに対してSoup Stock Tokyoが出した声明文が「うちが離乳食を無料で出すのは、こういう想いがあるからで、誰がなんと言おうと絶対やるんだ」っていう内容で。それを読んだ時に「アツ!これ、韻とか踏んでないだけでヒップホップじゃん!」って思ったんですよね。

レペゼン :
かっこいい…!まさにヒップホップ的姿勢ですね。

出井 :
そういう意味では、お笑いも「芸人がやってるからお笑い」じゃないと思っていて。芸人じゃなくても、すごくおかしみがあるやりとりを見て「これ完全にお笑いじゃん!」と思うこともあるわけで。そういう意味で、ヒップホップもお笑いもジャンルのフリをした概念なのかなって思います。

レペゼン :
その通りですね。とても面白いです。

どこまでも掘っていけるのが
このカルチャーの魅力

レペゼン :
出井さんにとって、ヒップホップの魅力はどんなところにありますか?

出井 :
他の音楽と比べてメッセージが込めやすいと思うので、その分伝わりやすいですよね。その人の言いたいことが、丸ごと伝わってくるのは良いなと思います。

レペゼン :
だからこそ出井さんもいろんな曲に背中を押されてきたわけですよね。

出井 :
はい。あとはディグり甲斐があるっていうところですね。どこまでいってもずっと掘っていけるというところが面白いです。

レペゼン :
そういえば出井さんは、ヒップホップの他にも、コーヒーや格闘技観戦、手ぬぐい収集など、多方面における「ディグの精神」を感じるんですが、そういうことは小さい頃から自然と行っていたんですか?

出井 :
んー、なんだろう。子どもの頃はカードとかを集めるタイプでもなかったんですけど、歴史とかルーツを知ったりするのは好きでしたね。「なんでこうなったんだろう」っていう歴史に興味があって、遡っていくのが好きなんですよね。

レペゼン :
なるほど。その性格と、ヒップホップという掘りしろが多い文化の相性が良かったのかもしれませんね。

漫才の出番前は
LL COOL Jに気合いを入れてもらう

レペゼン :
最後の一曲として、漫才の出番前に聴くヒップホップを教えていただけますか?

出井 :
けっこうベタなんですけど、LL COOL Jの「Mama Said Knock You Out」は聴きますね。

【LL COOL J – Mama Said Knock You Out】

レペゼン :
おお!不朽のクラシックですね。気に入っているポイントはどこですか?

出井 :
LL COOL Jってバーッと売れたあと、あまりに人気が出たもんだから「あいつセルアウトした」とストリートからのリスペクトを失っちゃったんです。その状態から「もう一発いくぞ」って出したのがこの曲なんですよね。だから「Don’t call it a comeback(カムバックって言うんじゃねえよ)」という言葉で始まる。つまり自分を奮い立たせているんですよね。

レペゼン :
なるほど。自分自身に発破をかけている曲なんですね!

出井 :
ちなみにタイトルに入っている「ママ」って、お母さんじゃなくおばあちゃんらしいんですよ。PVの最後におばあちゃんも出てくるんですけど。

レペゼン :
あ、「グランマ(Grand Mother)」なんですね笑

出井 :
そうそう。「グランマ」なんです。落ち込んでるLL COOL Jに、おばあちゃんが、「あんな奴ら、ノックアウトして来なさいよ」って言うんですよね。「あ、ばあちゃんに言われてんだ」っていうところも含めて、めっちゃ好きなんですよね。ばあちゃんに言われたら頑張らざるを得ないじゃないですか笑

レペゼン :
たしかにそうですね。インタビューのラストにこの曲が登場するのは、締まった感じがします笑
今年の活動の大きなテーマというか軸は、やはりM-1でしょうか?

出井 :
そうですね。あと、8月から全国ツアーもやります。去年も開催させてもらったんですけど、継続してできるのが嬉しいですね。日本各地に行って、その土地のヒップホップを聴きながら歩くのが好きなんですよ。「ここ誰がいるんだっけ?」って調べたりして、聴いて歩くのが楽しくて。

レペゼン :
最高に楽しそうです!
今年も、ヤーレンズさんのGreatest of All Time(史上最高)な漫才をいろんな場で拝見することを楽しみにしています。本日は貴重なお話をありがとうございました!

出井 :
ありがとうございました!

プロフィール

  • 出井隼之介(でい じゅんのすけ)

    出井隼之介(でい じゅんのすけ)

    神奈川県出身、ケイダッシュステージ所属のお笑い芸人。漫才コンビ「ヤーレンズ」のツッコミ担当。 中学時代から聴き始めたラジオをきっかけとしてお笑いの道を志すように。吉本興業のお笑い養成所・「NSC」を卒業後、楢原と漫才コンビ「パープーズ」を結成。2014年の上京を機に現在のコンビ名に改めた。以降、毎年挑戦を続けてきた漫才師の頂点を決める「M-1グランプリ」では、2023年に初の決勝進出を果たしただけでなく、その後2024年、2025年と連続で決勝に駒を進め、多くのお笑いファンからのプロップスを獲得。現在は、ラジオのレギュラー番組や、コンビでのYoutubeチャンネル、そして全国ツアーなど、あの手この手で日本全土に笑いを届けている。格闘技、コーヒー、メイク/美容、そしてヒップホップと、幅広い分野の趣味を持つほか、優れた書き手としても知られ、お笑い要素も多分に含みつつ、独自の視点で世の中の出来事に向き合うコラムは、多くの気づきを与えてくれる。

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