ヒップホップ好きのスポーツ選手や文化人のキャリアや仕事について全4回に渡ってインタビューしていく「あの人も実はヒップホップ」。今月のゲストは車いすラグビー、パリパラリンピック・金メダリスト、若山英史(わかやま ひでふみ)さん。Vol.1の今回は車いすラグビーについてや、若山さんが試合後に聞くヒップホップソングについてお伺いしました。
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車いすラグビー・パリパラリンピック 金メダリスト、若山英史
レペゼン:
インタビューさせていただくのを楽しみにしておりました。まずは自己紹介をお願いします。
若山英史:
車いすラグビー・プレーヤーの若山英史です。現在、静岡銀行に所属しながら、車いすラグビーの選手として活動しています。また、選手としての活動のほか、車いすラグビーを含むパラスポーツの普及や自分たちの経験を伝える講演活動などを行なっています。先日行われたパリパラリンピックでは、日本代表として出場し、金メダルを獲得することができました。
レペゼン:
改めて金メダル獲得、誠におめでとうございます!!東京やリオでもメダルを取られていましたが、今回はいかがでしたか?
若山英史:
そうですね。ずっと金メダルを目標にしてきましたが、大きな大会では準決勝の壁に阻まれることが多く、なかなかそれを越えられませんでした。でも、今回はその壁を越え、決勝でも勝利して金メダルを獲得できたので、最高に嬉しいですね。
レペゼン:
金メダルを取ったことでニュースでも話題になっていますが、環境の変化は感じますか?
若山英史:
感じてますね。まず私のキャリアで言うと、リオでメダルを取った後にメディアの露出が増えて。それで今回は金メダルをとれたので、周りからの反響も大きいなと。特に大きいのは自分の出身の静岡県沼津市で市民栄誉賞を受賞することが決まったんです。これは市内では二人目の受賞者で、岩崎恭子さんに続くもので。非常に光栄なことだと思っています。
レペゼン:
本当に地元のスターですね。素晴らしいです。
若山英史:
パラスポーツはまだマイナーな部分があるので、これをきっかけにもっと多くの方に知ってもらいたいですね。
胸から下は麻痺。残された機能で勝ち取った世界の頂点
レペゼン:
それでは、改めて車いすラグビーについて詳しく教えていただけますか?
若山英史:
車いすラグビーはパラリンピックの正式種目で、フルコンタクトが認められている唯一の車いす競技です。例えば、同じ車いすの団体競技である車いすバスケットボールよりも激しいぶつかり合いが認められています。また、バスケは男子と女子に競技が分かれていますが、車いすラグビーは男女混合で行われる競技で。日本代表には女性の選手もいますね。
レペゼン:
ビデオでも見ましたが、かなり激しいぶつかり合いがありました。体への負担や怪我のリスクが心配になるのですが、大丈夫なのでしょうか?
若山英史:
基本的に体同士の接触はルールで認められていません。なので、ボールを持っている選手に対して体に直接触れて奪うことはできません。試合では専用の車いすを使用し、車いす同士でのタックルのみが認められていますので、大丈夫と言えば大丈夫です。
レペゼン:
とはいえ、怪我などはあまりないのですか?
若山英史:
大きな怪我は少ないです。ただ、転倒時に膝のお皿を骨折したり、あと車いすに指を挟んで、指の先を少し切るとかはありますが、それも極めて稀な事故ですね。
レペゼン:
でもやっぱりなかなかタフですね…。
車いすバスケットボールの選手に比べて、車いすラグビーの選手は障害が重いと聞いたのですが。
若山英史:
そうですね。自分は大学時代に事故にあって、胸から下が麻痺してる状態で。手も握った状態でしか機能せず、開くことができない。握力がなく、グーしかできないような状態です。車いすラグビーは、四肢または三肢に何らかの障害があることが前提の競技で。他の車いすテニスや車いすバスケットボールでは、主に下半身に障害がある選手が多いのですが、車いすラグビーでは手にも障害がある選手がプレーします。私の場合は、障害クラスで下から2番目という重い障害です。
レペゼン:
両手ともその状態なのですか?
若山英史:
はい、両手ともそうです。
レペゼン:
そうするとボールを持つときも腕で抱えるような感じですね?
若山英史:
どちらかというと膝に置くようなイメージですね。
車いすラグビーではタックルされても耐えられるように重心を低く保つんです。競技用の車いすに座っているときは、体育座りして乗っているような感じですね。膝の上にボールを乗せてプレーします。ボールを投げるときは両手で投げるか、手のひらに乗せて投げる感じです。
パリパラリンピックで試合後に聴いていたヒップホップ
レペゼン:
ヒップホップもお好きだとお伺いしたのですが、パリパラリンピックの時に聴いていた曲などはありますか?
若山英史:
実は、僕は試合前に音楽を聞くタイプではなくて、夜にテンションを抑えて落ち着かせるためにメロウなヒップホップを聴くことが多いです。最近は、変態紳士クラブさんやSTUTSさんのようなアーティストですね。
レペゼン:
一曲挙げるとすると?
若山英史:
STUTS「夜を使いはたして feat. PUNPEE 」とか好きですね。
【STUTS「夜を使いはたして feat. PUNPEE 」】
若山英史:
試合後ってアドレナリンが出ててなかなか寝れないんですよね。そんな時に音楽は自分を落ち着かせる手助けをしてくれる重要なツールですね。例えば、ホテルでくつろぐときや移動中に聴きます。あとは寝る前。うとうとしながら聴いてます。耳に何か入っている方が寝やすいので。
レペゼン:
なるほど。試合前はあまり聴かないんでしょうか?
若山英史:
基本的には試合の準備中はあまり音楽を聴かないかな。他の選手と話しながら準備をしていることが多いので。
僕たちは個人競技ではなくチーム競技なので、一人で集中して音楽を聴くというよりも、試合のためにチームメイトとコミュニケーションをすることが多いですね。
ヒップホップに癒されながら、パリパラリンピックで金メダルを獲得した若山さん。次回は学生時代の話について聞いていくよ!お楽しみに!