B-Boy料理人がニューヨークで掴んだストリート・ドリーム

Zeebraの曲に励まされ、不可能を可能にした日本人・河野睦

ライター:TARO

ヒップホップ好きのスポーツ選手や文化人のキャリアや仕事について全4回に渡ってインタビューしていく「あの人も実はヒップホップ」。今月のゲストはニューヨークで焼き鳥店「KONO」を営む河野睦(こうの・あつし)さん。ニューヨークのTOP5シェフに選ばれる凄腕の料理人でありながら、ブレイクダンサーとしても日本最大の大会「B-Boy Park」で優勝、またニューヨークを拠点にする伝説的ダンスクルー「Rock Steady Crew」に所属するなどトップB-Boyとしてのキャリアを歩んできた河野さんのヒップホップ・ライフスタイルについてお伺いしました。Vol.3の今回は、ニューヨーク移住、そして慣れない土地での苦労時代に励まされたラップソングについてお伺いしました。

前回の記事はこちら→ ニューヨークで生きるB-Boy料理人、河野睦のヒップホップ・キャリアとは?

B-Boy料理人、河野睦。憧れの土地、ニューヨークへ

レペゼン:
今回はニューヨークに移住した際の状況について教えて頂きたいです。元々ヒップホップの中心地であるニューヨークに憧れていらっしゃったということですが、どういった経緯で移住することになったのでしょうか?

河野睦:
元々全くコネクションはなくて。そんな中で色々と探していたら、ある海外求人雑誌に、「ニューヨークで焼き鳥屋さんをオープンするので、料理人を募集している」っていう求人を見つけたんです。

レペゼン:
おぉ!!

河野睦:
焼き鳥は全く経験がなかったんですが、修業を4年間やって自分にも自信があったので挑戦してみようと。それで面接を受けさせてもらって、合格してニューヨークに行くことになりました。

レペゼン:
良いですね!
実際ニューヨークに行かれてから、仕事はどうだったんですか?

河野睦:
最初副料理長という形で入ったのですが、1年目で料理長が急遽帰国になってしまって。いきなりオレがお店を仕切らなきゃいけないってなってしまったんです。

レペゼン:
えー!
大変ですね…。

河野睦:
メニュー考えたりとか、マネジメントしたりとか、その時代は結構大変でしたね。ただそれがきっかけで料理のことをより真剣に勉強するようになって。それまで僕にとって料理は、ヒップホップをやるための保険でしかなかったんです。それが料理長として仕事をする中で、変わっていって。その期間で、本当の意味で料理人になれたのかなと思います。

レペゼン:
素敵です。
焼き鳥という料理も初めてだったと思うのですが、実際やってみてどうだったんですか?

河野睦:
もちろん初めてのことだらけだったんで、大変なこともあったのですが、とにかくお客さんの前で焼くのがすごく自分にハマって。自分がやってきたブレイクダンスとリンクしたんです。お客さんの前で踊りをして、楽しんでもらうのと一緒だなと。



レペゼン:
B-Boyですね。

河野睦:
カウンターが焼き場を囲んでて、お客さんの目の前で調理するスタイルだったので、その中で料理するのがすごい醍醐味でした。

レペゼン:
良いですね。

河野睦:
あと僕にとって大きかったのが、そのお店で働いている時に、自分の名前でミシュランの星を取ることができたことですね。

レペゼン:
すごいですね!!

河野睦:
それまで正直、ミシュランという名前も知らなかったのですが、星を取れたことでお店のスタッフや友人もすごく喜んでくれて。そこで忙しさも変わりましたね。自分の料理に、こんなにみんなが期待して来てくれるんだってことが信じられなかったです。料理人として自分が認められたっていう感覚がすごくありました。そうやって料理人になっていったって感じですね。

慣れないニューヨーク生活で感じた孤独感



レペゼン:
ニューヨークでの生活で、特に大変だったことはありますか?

河野睦:
やっぱり最初は友達がいなかったので、孤独感はありましたね。プレッシャーに押し潰されそうになる自分がいて。力が入らない時期もありました。ただやっぱり料理人としてのプライドもあったし、今までやってきた思いがあったので、何とかそこを乗り越えられたってのはありましたね。

レペゼン:
かっこいいです。
そんな中で、河野さんを奮い立たせてくれたラップソングはありますか?

奮い立たせてくれたのはZeebra「STREET DREAMS」 

河野睦:
これはもうZeebraさんの「STREET DREAMS」ですね。

【Zeebra – STREET DREAMS】

レペゼン:
間違いないですね。

河野睦:
「不可能を可能にした日本人」になりてぇっていう。
その言葉に近づいてんじゃねぇかっていう、いまだにこのリリックはめちゃくちゃ刺さりますね。

レペゼン:
実際河野さんに当てはまりますしね。歌詞の中でも、海外でヒップホップをやっていく様が描かれてますし。

河野睦:
そうですね。Zeebraさんは自分のスーパーヒーローで、彼の曲、リリックで育ってるんで。
やっぱ自分の人生がリンクして、泣けますね。最近のT-Pablowさんとの曲もめっちゃよかったです。

【BAD HOP – Empire Of The Sun feat. T-Pablow & Zeebra】

レペゼン:
僕もあの曲は泣きました。僕ら世代は特にグッときますよね。

河野睦:
そうそう。なんかねぇ、 「STREET DREAMS」は全部のヴァースが来るんですよね。
仲間にこの曲歌ってあげたいって思うぐらいです。

レペゼン:
特に好きなところを1カ所選ぶとすると、どこでしょうか?

河野睦:
でもやっぱり「不可能を可能にした日本人」ですかね。オレもそうなりたいと思って、今もやってるし。
そうなっている自分をみんなに見せたいっていう思いがありますね。

 

ヒップホップに勇気をもらい、ニューヨークで着実にキャリアを積んでいった河野さん。次回はいよいよチャイナタウンにオープンしたお店「KONO」について聞いていくよ!お楽しみに!

プロフィール

  • 河野睦(こうの・あつし)

    河野睦(こうの・あつし)

    料理人。板前の息子として生まれ、専門学校を経て、和食の世界へ。東京・赤坂の割烹で約4年間修行後、渡米。ニューヨークの焼き鳥屋でチーフ・シェフとして勤務した後に、独立、チャイナタウンで焼き鳥店「KONO」をオープンする。また10代からブレイクダンサーとしても活動しており、地元埼玉のクルー「SIVA」ではB-Boy Park優勝、ヒップホップ史上最重要ダンスクルー「Rock Steady Crew」に所属するなど、B-Boyとしても世界トップクラスで戦ってきたダンサー。 今年、食のオスカーと呼ばれ、全米で最も権威のある「James Beard Awards」で日本人シェフとしては初めてニューヨークのTOP5シェフに選出される。

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