目 次
非日常であるクラブパーティ。その演出には多くの人が関わっています。クラブ、そしてエンターテインメントの現場に立ち続けるDJのカバンには、いったいどんなモノが入っているのだろう?そんな単純な理由から立ち上がったこの企画。中々見ることの出来ないパーティメーカーのバッグの中身を現役DJであるDJ SHUNSUKEが鋭く切り込む企画です。
前回に続き、DJ IKUさんのカバンの中身後編です。1泊2日の遠征に行く際のかばんの中身を覗かせてもらっています。
GO PRO HERO10
IKU:
最新モデルのひとつ前のものです。暗い場所での撮影にも強いです。DJの現場で何をしたかを記録して反省をしたり、現場に向かうまでのロードムービーにしたりします。後パブ(パーティの感想を述べたりする事。)を大事にもしているので、そういった事の撮影のために使っています。
マルチタップ
IKU:
国内だけでなく、海外のコンセントに繋げることができたりUSBも様々なタイプが繋げる様になっています。これだけで小さな充電ステーションが出来ますね。
ガジェットポーチ
IKU:
伸縮性があるSide by Sideのポーチです。中にはパソコンのバックアップの外付けや、SDカードだったり色々と入っています。後はこの小さな爪切り。とても便利です。衛生用品の中に入れても良さそうなんですけど、このガジェットポーチに入れています。皮のケースにバッチリ合うので。
モバイルバッテリー
IKU:
充電しながら給電できるタイプです。パソコンでも使えます。電源がない場所などで使ったりしてますね。でも携帯で使うことが多いかもしれません。
Ankerのアダプター
IKU:
PCの充電、プレイ中はこれを使っています。ポートが三つついているので色々便利です。よく失くすので分かりやすいステッカーを貼っています。
OYAIDEのUSBケーブル
IKU:
PHASE DJ用です。現場でどれだか分からなくならないように緑を使ってます。黒のケーブルが多いので、爆弾処理班のようにドキドキしながらケーブルを探すのが嫌なので(笑)
PHASE DJ
IKU:
針がなくてもSERATOでターンテーブルとコントロールバイナルでDJが出来るシステムです。与えられた環境でどう演出するのか?を課題にしている部分もあるのでCDJでも良いんですが、CDJとターンテーブルどちらでやりますか?と聞かれた時にこれを使っています。
ヘッドフォン
IKU:
パイオニアのHDJ CXです。このヘッドフォンは耳の部分の可動域が広い。後はヘッドフォンの先のプラグを入れる穴が空いていること。先端を外した時にここに閉まっておけば失くさないので。これを失くすと結構困るので本当に便利ですね。
スリップマット
IKU:
ターンテーブリストやバトルDJが過去にこぞって着ていたMIXWELLと言うブランドなんですけど、ここ最近動きがあって。スリップマットが売ってたので即買いしました。分かる人は分かる、おじさんホイホイのような感覚です。少し分厚いんで、スリップシートとか必要かもしれないですけどね。
コントロールバイナル
IKU:
結構使い込んでます。SERATOの20周年を記念したモデルです。スクラッチやバトルのDJにとってはレコードの薄さがとても重要なので使いやすいです。
MAC BOOK PRO
IKU:
これだけ色々なソフトウエアとかSERATOについて発信してるんですけどPCには疎いですね。(笑)OSはMontereyです。DJだけのために使っています。
レコード時代と今との違い
SHUNSUKE:
アナログの時代と今の違い、アナログだったからこそ、とかってありますか?
IKU:
アナログだから良かったこと…やっぱり単純な所有感ってあると思いますけど、データで扱うことで、曲をイマイチ自分のものに出来ていないなって思うところがあります。アナログで持ってた曲は展開とかきちんと頭に入ってました、後半に美味しいブレイクが入ったりとかってしっかり聞かないと分からないじゃないですか?最近はよく使う楽曲をしっかり自分のものにするためにアナログ時代と同じように曲全体を把握するようにしています。リリースの速度が昔よりずっと早くなって、あり得ない量の曲を把握する必要があるので”ゆっくり音楽を聴く”という単純な行為が難しくなってるなって思うことも増えてきましたね。
アナログの良さに話を戻すと”アナログだからこそ”の不器用さとか、ですかね。データでDJをするとやっぱりクイックミックスが可能なんでメガミックスのようになってしまうこともあるんですけど、アナログだとできないじゃないですか。その不器用な感じが余計に良さを引き立てたり。あとはレコードを出して、針を載せてっていう所作が良い。カッコイイって感じます。
SHUNSUKE:
レコード時代からDJをやっていると思うんですけど、今のようなスタイルになったのはいつ頃からですか?
IKU:
2010年ですかね。ブレイクスルーした年になると思います。Red Bull Thre3Styleで優勝することができた年です。その大会はSerato Scratch Live(現在のSerato DJの前身)を使わないといけないって言うルールもあって。何より「パーティロック」が大きなコンセプトでした。そうなるとアナログだけでは選曲的にも間に合わなくなってきて、仕方なしにデジタルに移行しました。ただ、これは間違いなく大きな転換期でしたね。じつは2006年に渋谷No.1 DJ Championshipsで優勝していて、その時に副賞でSerato Scratch Liveのインターフェイスを貰ったんですけど、その時は「Scratch Liveなんてリアルじゃねえよ!」って言う風潮が自分の周りにあって。で、売っちゃいました。笑
SHUNSUKE:
当時Scratch Liveのインターフェースは良いお値段がしましたね。高かった。
IKU:
売ったお金で電気代とか払った気がします、光熱費よりもレコードを優先してた時代でした。笑
光熱費払うんだったら「このお金で何枚かレコード買えるな。」とか思ってました、当時のDJあるあるですかね。笑
SHUNSUKE:
全く同じ経験をしてます。水が止められたらヤバいと思えって先輩に教わったり。あの時代はとにかくお金がなかったですね。笑
親にも心配された事を思い出します。
IKU:
僕は音楽の学校を出たんですが、家でDJをしてるのを見て親はずっと心配していたみたいです。「あんた、進路大丈夫なの??」って。正直、2010のRed Bull Thre3Styleで優勝するまではDJである事を濁してました。音響関連の仕事とか言って。優勝してやっと「日本一になったよ!」って正直に話しました。そこで認めてもらえたというか。それまでは説得材料がなかったので言いにくかったっていうのもありましたね。今は家族みんな応援してくれてます。
時代が違うのでこれからプロを目指す子にとっては何が正しい説得材料になるのかわからないけど当時はそういう感じでしたね。
SHUNSUKE:
未来を担う世代に取っても非常に興味深い話だと思います。今回は本当にありがとうございました!
プロフィール
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2002年、世界的権威のあるDJコンテスト「DMC WORLD DJ Championships」の日本大会を見て衝撃を受けDJを始 める。3年後の2005年、同大会のJAPAN FINALへ出場しその名を全国へ広げる。 2010年にはパーティーDJのNo.1を決めるコンテスト「Red Bull 3Style」にて日本一に輝き、フランスで行なわれた世界 大会に日本代表として出場。 ビートジャグリングやスクラッチ等の高度なDJテクニックを盛り込み、音楽ジャンルを縦横無尽にミックスしていくスタイ ルは世界各国のDJやクラウドから高い評価を受ける。 SNS等で発信するDJプレイ動画は世界中から支持され、2021年には世界で最もスタンダードなDJソフトウェア 「Serato」から公式にサポートを受ける。 また世界最大のデジタルレコードプール「DJcity」の日本支部「DJcity JAPAN」においてミュージックアドバイザーも任さ れている。 2018年には世界各国から選出されたDJ達による「ターンテーブルオーケストラ」の一員として、アブダビのルーブル美 術館でショーを行い話題になった。 現在では国内、海外の様々なパーティーやフェスティバルにゲスト出演しつつ、その活躍はナイトクラブに限らず企業 やメーカー等からのオファーも多い。 「Serato」「PioneerDJ」「YAHOO ! JAPAN」「YAMAHA」「Reloop」のオフィシャル動画や「NHK」などのテレビ出演をは じめ、世界的なスポーツウェアブランド「Columbia」の国内インフルエンサーも務める。また、ブレイクダンスやBMXなど のアクションスポーツ、エクストリームスポーツ系のイベントでもDJを数多くこなしている唯一無二のオールラウンダー な存在である。