暑い。とにかく暑い。
夏が暑い季節なのは承知の上だが、ここ数年の暑さは“異常”と断言していいレベルだ。
昨年、人生で初めて熱中症になった。
朝から体を動かして汗をかき、帰り道に学芸大学駅まで歩いていた時、突然、視界が暗転。頭の中も同時に薄暗くなった。運よく目の前にコンビニがあり、ふらつきながらポカリスエットを購入し、しばし休憩。数分後には事なきを得たが、「これはヤバい」という感覚だけは鮮明に残っている。
サウナを愛する自分が熱中症になるとは、まるで大食い選手が食べ過ぎで腹痛を訴えるような違和感だったが、後で調べると「熱失神」という症状だった。これは気合いでも根性でも、どうにもならない類のものらしい。
皆さんも、異変を感じたら即座に休んでほしい。あれは本当に、洒落にならない。
洒落にならないと言えば、先日、別の意味で冷や汗が止まらなくなる事件があった。
私は毎日、ほとんど身動きが取れないレベルの満員電車に揺られながら、花の都・大東京へと移動している。満員電車は結構辛い。そのなかでも、真夏の満員電車はオジサンの臭い、赤の他人の汗ばむ肌との接触など「地獄がこの世にあるならこれだよね」と言いたくなるほど過酷だ。私が乗る電車は、約30分間ずっとギュウギュウ詰め。その間、「安心してください、穿いてますよ」のポーズのまま固まるなんてこともザラにある。今回の恐怖体験は、そんな“圧”に包まれた通勤電車の中で起きた。
↑ヘイ!
その日も例外なく、車内は乗客で膨れ上がっていた。。殺気すら感じる車内は、誰もが無言で耐える“夏のサバイバル空間”と化していた。そんな緊張感漂う中、突如としてiPhoneとAirPodsの接続が切れるという悲劇が起きた。
まず第一波。iPhoneとAirPodsの接続が途切れた瞬間、スピーカーから流れ出したのは、T.M.Revolutionの「HIGH PRESSURE」(1997)。汗だくの車内に、「カラダを夏にシテ カゲキに さあ行こう♪」という、空気の読めないハイテンションサウンドが炸裂した。季節感を大切にするタイプのDJとして、この時期は夏ソングを好んで聴いているのは事実だが、この状況では完全に裏目に出た。超満員電車の乗客の視線をひとり占め、オールアイズオンミー状態。「カラダを夏にシテ」というリリックとは裏腹に凍えるほどの冷や汗が一気に吹き出した。「すみません、すみません」と小声で謝りながら、何とか接続を復旧。
↑当時真新しかったマキシシングルと8㎝シングルでリリースされてました。
だが、10分後にさらに大きな第二波がやってくる。今度はなんと松浦亜弥の「Yeah! めっちゃホリディ」(2003)が流れ出したのだ。この曲はド頭から「Yeah!めっちゃホリディウキウキな夏希望~Yeah!ズバッとサマータイム ノリノリで恋したい!」と歌い上げる信じられない位の夏の特大お祭りチューンだ。まるで悪ふざけ、怒ってる人をさらに怒らせる、狙ったかのような2度目の大チョンボをブチかましてしまった。車内の空気はウキウキな夏とはウラハラに、真冬のように凍り付き、刺さるような視線が冷や汗でビショビショの全身を貫いた。朝の通勤ラッシュの空気の中に、90年代〜2000年代J-POPの“夏のハイライト”が連投されるという悲劇。DJとして何度となく外タレの前にDJをしてきたが、この時ばかりは足が震えた。やむなく途中下車を決意。
あとで気が付いたことだが、電車を降りてからインナーを購入する程に冷や汗でびっしょりになっていた。
↑これ以上夏に浮かれたジャケットを探せと言われてもなかなか見つからないくらい浮かれているジャケ
いかがだっただろうか?嘘のような話だが、残念ながらすべて実話である。
真夏にお送りする怖い話としては、なかなかの破壊力だと思う。
AirPodsをはじめとするワイヤレスイヤフォン利用者諸君、次はあなたの番かもしれない。