DMC JAPAN FINAL 2025レポート ―― 世界最強DJを目指す戦い、日本代表の座は誰の手に?

初の日本開催となる10月のWORLD FINALへの切符をかけ、渋谷WOMBLIVEで繰り広げられた戦いを徹底レポート!

ライター:TARO

日本最高峰のターンテーブリスト達が
渋谷WOMBLIVEに集結

2025年8月30日、渋谷WOMBLIVEにて「DMC JAPAN DJ CHAMPIONSHIPS 2025 FINAL supported by Technics」が開催された。今年で40周年を迎える世界最大のターンテーブリズムの大会「DMC WORLD DJ CHAMPIONSHIPS」への出場権をかけた本大会。日本では1990年から開催されており、これまでにDJ KENTAROやDJ IZOH、そしてCreepy Nuts のDJ 松永など多くのワールドチャンピオンを輩出してきた。

今年も厳しい予選を突破した日本屈指の”ターンテーブリスト”たちが渋谷に集結。世界大会への切符をかけて、激しい戦いを繰り広げた。

DMC新時代へ。
40周年を契機にカテゴリー名が変更。

40周年という節目を迎え、新しいフェーズに入りつつある今年のDMCでは従来のカテゴリー名が変更され、新たなカテゴリーが追加されることに。長い歴史を誇るシングル部門は“CLASSIC”、バトル部門は“BATTLE FOR SUPREMACY”に名称を変更。さらに新カテゴリーとして、スクラッチの技術に特化した“SCRATCH BATTLE”、そしてミキシング技術や楽曲構成、ストーリー性を重視する“THE OPEN”が追加。多様なスタイルのDJが増え、技術も向上してるシーンの状況に対応した形だ。

超絶スキルの戦いを裁く最強ジャッジ陣

審査員には過去のDMC世界チャンピオンを始め、日本を代表するDJたちが集結。
「CLASSIC」および「BATTLE FOR SUPREMACY」部門ではDJ KENTARO、DJ IZOH、DJ 諭吉、14、Is-k、DJ Ta-Shiが、「SCRATCH BATTLE」では宮島塾長、DJ YUICHI、DJ JUNYA、そして「THE OPEN」では、DJ IKU、DJ RINA、SAMATA(AlphaTheta)が大会史上屈指のハイレベルなスキル戦となった本大会をジャッジした。

初出店のフードブースや
スペシャル・ショーケースも

会場内ではフードや物販のブースも充実。今回初出店となる下北沢のホットドッグ店「SUNNY HOP」のジューシーなホットドッグは大盛況。

物販コーナーではDJ針の名門「ortofon」とDMC JAPANのコラボTシャツが限定先行販売され、年に一度のDJの祭典ならではの限定アイテムとあって、ブースには多くのヘッズ達が訪れていた。

またDMCだからこそ実現できたDJ SHOTAとロックバンドMAN WITH A MISSIONのDJ SANTA MONICAのコラボプレイは音楽ファンにはたまらないものに。

DJ IKU と KAJI(SARUKANI)のセッション、そして7インチのパフォーマンスで人気のShingo Takahashiによるパフォーマンスも会場の音楽ファン達を大いに沸かせていた。

各部門のハイライト

①BATTLE FOR SUPREMACY

今年もMCにラッパー・DARTHREIDERを迎え、幕を開けたDMC JAPAN FINAL。
「BATTLE FOR SUPREMACY」部門にはアロマDJ invi、DJ EiON、DJ KENGO、DJ §arina、DJ SORA(RuShfunk)、楓、SATOYON、DJ NOLLI(前年度チャンピオン)というファイナリストたちが名を連ねた。ファイナリスト達のトーナメント形式でのバトルとなる「BATTLE FOR SUPREMACY」では高難易度のスキルバトルが続出。

序盤からSATOYONがアナログプレイでのニードルドロップ・ドラミングという高難易度のテクニックで会場を沸かせると、DJ EiONは新譜を上手く織り交ぜ、多彩なトリックと展開の多さで対抗。

またアロマDJ inviが回転数の調整で音階を変化させるビートジャグリングで審査員を唸らせれば、DJ SORA(RuShfunk)は旧譜を上手く取り入れたグルーヴィーで落ち着きさえ垣間見えるプレイで魅せるなどし、バトルは白熱。


「超攻撃的」な戦いとなったDJ §arina VS DJ KENGO 戦は、§arinaが脅威のリズムキープ力でノーフェーダーでのプレイを決めた一方、KENGOはハイエナジーなプレイスタイルとドラミング、そしてアグレッシヴなワードプレイで攻めた。

ベストバウトの一つは楓とDJ NOLLI。両者とも豊富なアイデアと技術を併せ持つDJとあって、バトルは異次元のテクニック勝負へ。圧倒的な瞬発力で、「動」と「静」をスムースに切り替える楓と、安定したテクニックの中に起承転結とストーリー性を持たせた NOLLI。審査員を悩ませたバトルの結果は僅差でスクラッチの時間をはっきり作ったNOLLIが勝利。まさに“擦り勝ち”した結果となった。


激戦のトーナメントの末、楓に”擦り勝った” NOLLIが勢いそのままに、アロマDJ inviと§arinaを倒し、優勝。2年連続で世界大会への切符を手にした。

②CLASSIC

シングル部門から名称変更となった「CLASSIC」。6分間のセットで一番イケてるプレーをかましたDJを選ぶ本部門にはDJ OB-ONE、小島、DJ Mr.FLESH、DJ MISHIMA、ANONYMOUS、DJ REIKO、DJ Makoto、ヒラテマリノ、そして前回チャンピオンのDJ SORAが選出された。

トップバッターはIDA JAPANでもファイナリスト経験を持つ福岡をレペゼンするターンテーブリスト・DJ OB-ONEが登場。安定感とDOPEさを両立させた激渋なプレーを見せると、続いてDMCではお馴染み、宮島塾長の実の息子となる小島が登場、大人顔負けのスキルフルプレーを披露した。さらにDJ Mr.FLESHがBuddha Brand の「Return Of The Buddha Bros」を使ったヒップホップへのアツい思いを感じるプレーでMC・DARTHREIDERを唸らせる。

中盤に登場したDJ MISHIMAはスタートからフルスロットルで走り切るパフォーマンスで会場の熱気を上げた。そして優勝候補の一角である2019年度の日本チャンピオン・ANONYMOUSが登場。初っ端から観客の心をがっつり掴む導入、持ち味である繊細でスムーズな展開のプレーで大きな盛り上がりが起きる。DJ REIKOはアナログにこだわったグルーヴィーなセット、そしてカテゴリー名である「CLASSIC」に合わせたワードプレイをかました。

そして後半戦、数々の大会で結果を残しているDJ Makotoの高いパフォーマンス力と超絶スキルが詰め込まれたセットで会場のボルテージがさらに一段上昇する中で、昨年JAPAN FINAL初出場にして2位を獲得したヒラテマリノが登場。安定感と高い音楽性が溢れるプレーの中に映画『戦場のメリークリスマス』のサウンドトラックである、坂本龍一の「Merry Christmas Mr. Lawrence」の美しいトーンプレイを取り入れたパフォーマンスで観客を魅了した。

ラストはディフェンディング・チャンピオンのDJ SORA。スタートからまさに圧巻と言えるエネルギッシュなパフォーマンスを披露。もはやマシーンレベルの正確無比なスクラッチとビートジャグリング、観客を惹きつける高揚感溢れるアティチュード、そして時折入れる緩急とボディトリック。前回王者として文句ないパフォーマンスを見せつけた。

大会史上屈指の激戦となった「CLASSIC」だが、僅差で優勝を勝ち取ったのはヒラテマリノ。

安定感のあるテクニックはもちろん、プレイにおけるストーリーテリング、そして日本らしさを感じる選曲が評価された形だ。

③SCRATCH BATTLE

今回から新設された「SCRATCH BATTLE」と「THE OPEN」部門のMCはラッパー・サイプレス上野が担当。「SCRATCH BATTLE」部門では、DJたちが指定された楽曲に合わせて、2分間のスクラッチ・パフォーマンスを披露。審査員はスクラッチのテクニックや構成力、オリジナリティ、音楽性といったポイントをもとに採点し、最終的に総合得点が最も高いDJが優勝というコンペティションだ。スクラッチという1個の技術の中で、どれだけ個性と音楽性を表現できるかがキーポイントとなる。

まず1組目のトップバッターで登場したDJ 034(マサシ)はヒップホップ愛溢れるDOPEなプレイを披露、続いてプレイしたokw(オーケーダブリュー)もスムースかつ丁寧なスクラッチでスキルの高さを見せつけた。1組目のラストは地元東京のスクラッチ職人Yusaku。2019年からDJを始めたとは思えない研ぎ澄まされた擦りを魅せた。



続いて中盤、2組目で登場した rio はワードをくさび使いするテクニックで審査員から好評価を獲得、DJ POPもキレキレの“フレアースクラッチ”で会場のヘッズたちの首を振らせていた。2組目のラスト、MURAKAMIは安定した展開とテクニックが光った。

3組目では健(ケン)、ANTIC(アンティック)そして DJ KEITAが登場。健がスクラッチ愛を感じる、いなたい擦りで会場のヒップホップ濃度を上げると、ビートメイカー、音楽デュオxoaa.としても活動するANTICが負けじとテクニカルなプレーを披露。そして3組目のラストに登場したDJ KEITAはヒップホップバイブスを感じる跳ねたフローのファンキーなスクラッチで審査員たちを唸らせた。


最終組、4組のメンバーは、DJ IsseI(イッセイ)、 DOMMY、 DJ Samu。
独自の躍動感とエネルギッシュなプレーをかましたDJ IsseI、スキルフルに攻めながらもオーディエンスを眺める余裕も見せたDOMMY、そして数々の大会で結果を残す実力派DJであるSamuという高次元のスクラッチャーたちの戦いとなった。

日本最高峰の“擦り合い”の末、戦いを制したのはDJ KEITA。

スクラッチの入る間と抜けるタイミング、そして安定感とバランスの良い構成力が評価され、日本一に輝いた。

④THE OPEN supported by AlphaTheta

12分という時間の中で観客を盛り上げるプレーをかます「THE OPEN」。ストーリー性や楽曲の流れ、そして何よりも観客の盛り上がりが評価ポイントとなるこの部門には、DJ K&GO (ケンゴ)、1an(ラン)、DJ Sym4(シムフォー)、DJ koharu、PACHI-YELLOW、 DJ RIONが出場した。

トップバッターはプロアイスホッケーチーム、名古屋オルクスのオフィシャルDJも務めるDJ K&GO (ケンゴ)。Eminemの「The Real Slim Shady」のイントロを取り入れたワードプレイやBruno Mars「24K Magic」を使った華やかなセットで「THE OPEN」部門の幕を開けた。続いては千葉柏のDopeイベント、SHEETS OF SOUNDをレペゼンする、1an(ラン)。7インチレコードだけを使用したプレイ、目隠しを付けてのパフォーマンス、そしてオーディエンスと対話するような選曲で会場のヘッズたちの首を振らせていた。

中盤、3番手に登場したのはDJ Sym4(シムフォー)。J-SPOT GRAND PRIX などでも結果を残す実力派DJとあって、センスとテクニックが光るプレーでオーディエンスを沸かせていた。4番手の広島の若手急先鋒、DJ koharuは確かな技術と踊りながらプレーするスタイルで会場を盛り上げた。

後半戦には優勝候補筆頭のPACHI-YELLOWとDJ RIONが登場。ともに実力派DJである二人のプレイに注目が集まる中、先にプレイしたのは、PACHI-YELLOW。現場での豊富な経験に裏打ちされた幅広い選曲と疾走するグルーヴ、そして持ち前のハイエナジーでド派手なパフォーマンスと観客をリードするワイルドなステージングで会場をブチ上げた。続いてプレーしたDJ RIONは昨年のIDA PARTY ROCKIN CATEGORYで世界王者となったその圧倒的なスキルをいかんなく発揮。序盤からエッジーで切り裂くようなスクラッチで会場をロックすると、サンプラー、パッドを存分に使ったパフォーマンスでもプレーの幅の広さを見せつけた。


激戦を制し、史上初の開催となった「THE OPEN」の初代王者となったのはPACHI-YELLOW。

この日一番の盛り上がりを作った埼玉レペゼンの”B-Boy”が栄冠を手にした。

優勝者コメント

①CLASSIC 部門優勝ヒラテマリノ

「去年は僅差で2位だったので、今年は優勝できて本当に嬉しいです。今日のセットでは構成やつなぎの部分にこだわったのと、みんなが知っている曲をヒップホップ以外のジャンルから使えたらと考えて、元々好きな曲だった『戦場のメリークリスマス』を取り入れました。

今年が終戦80周年という節目の年でもあったので、その想いを表現できたらという気持ちもありましたね。今年はDMCが40周年のアニバーサリーイヤーで、ワールド・ファイナルが初の日本開催なので、日本代表として恥じないパフォーマンスで挑みたいです。」

②BATTLE FOR SUPREMACY 部門優勝:DJ NOLLI

「初戦で優勝候補の楓くんと当たったので、正直しんどかったです。いつもとは違うプレッシャーがありましたね。1本目では負けたと思いましたが、なんとか勝つことができました。で、楓くんに勝ったからには優勝するしかないと思い、気合いを入れてその後の戦いに臨みました。無事に優勝を勝ち取れて本当に良かったです。ただ自分も2回戦以降でミスはありました。世界ではミスが許されないので、さらにブラッシュアップして挑戦していきたいです。去年、日本代表としてパリに行ったときの向こうの熱量や、DJ FLYさんの優勝を見て学んだことをしっかり活かして、ワールド・ファイナルに挑みたいと思います。」

③SCRATCH BATTLE 部門優勝:DJ KEITA

「最高です。ただ正直、『あれ、オレでいいんだっけ?』という葛藤も半分あります。皆さん本当に上手かったので。勝因としては間の取り方にこだわって、他の方とは違うアプローチをしたのが良かったのかなと。詰め込みすぎず、緩急をつけたことが良かったのかなと思います。海外勢のスクラッチャーは強い人が多いので、これから世界大会に向けて友達と作戦会議をして、対策を考えていきたいです。あとやっぱり自分は10代、20代の頃にDMCのクラシック部門に挑戦して負けてきたので、今こうして違う部門ですが勝てたことが本当に感慨深く、嬉しいです。ワールドでも世界の人の印象に残るようなスクラッチができるよう頑張ります。」

④THE OPEN 部門優勝:PACHI-YELLOW

「本当にすごく嬉しいです。僕一人では成し遂げられなかったことで、周りの仲間や家族に心から感謝しています。特に自分のクルー、Finger Clickzに感謝を伝えたいです。

勝因はヒップホップへの愛ですね。実は僕は一度大会を引退していたのですが、クラシック部門への出場を目指していたFinger Clickzの仲間が出られなかったこともあり、急遽自分がクルーの代表として「THE OPEN」に出場することにしました。初めての部門でフォーマットもなかったので、自分が信じるDJ、ヒップホップを信じて挑みましたね。

ワールドファイナルで世界チャンピオンになれるよう、誠心誠意頑張ります。僕一人では辿り着けない場所なので、みんなで一緒に目指したいです。」

取材を終えて

若手からベテランまで幅広い世代が出場し、技術的にも過去最高レベルのパフォーマンスが続出した今回のDMC。部門が増設されたことでより多くのDJたちにチャンスが与えられるようになったところも今回の盛り上がりに繋がっているように見受けられた。

今回勝ち上がったDJたちが10月11日(土)、10月12日(日)に開催されるワールド・ファイナルでどのような活躍を見せるのか。ぜひ会場に足を運んで伝説が誕生する瞬間を生で見届けて欲しい。

(撮影:Takashi Mizutani / Junpei Kawahata / Yuiko Shikano / ITACHI )

【Technics presents DMC World DJ Championship Finals】

2025年10月11、12日、世界最大のDJバトルの大会、DMCのワールドファイナルが日本で初開催。40周年を迎えるアニバーサリーイヤーのみならずTechnics60周年ということで各国王者に加えて、これまでのDMCを彩ってきた豪華DJたちが渋谷に集結。日本からは各部門王者と本部推薦のDJ FUMMYが参戦。2002年のワールドチャンピオンであり、日本が誇るDJ KENTAROもアンバサダーに就任し、大会を盛り上げる。

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