人はなぜサウナに入るのか。
己を高めるためか。健康のためか。それとも、合法的に服を脱ぎ、人前で汗まみれになれる唯一の空間だからか。
どれも間違ってはいない。だが、決定打にはならない。
その理由は一つ──そこに現実があるからだ。
まるで登山家のような発言だが、真理でもある。
サウナとは、2025年現在において、人類が生み出した最強の現実逃避装置である。
私は「全部投げ出してしまいたい」と思うたび、タオルを持ってサウナへ向かう。
ただ「暑い」という感覚にすべてを支配されることで、脳内のノイズが一気に削ぎ落ちる。
汗とともに思考が蒸発し、気づけば、現実と正面から向き合える自分が戻っている。
それは少し気恥ずかしいが、間違いなく“泣ける”体験だ。
通称・サウナーである私は、遠征先で常にサウナの場所をチェックしている。
パーティの前に一度汗を流し、頭をクリアに整える。できるだけベストなコンディションでDJに臨むためだ。
そんな私が、自らの身体と羞恥心を張ってお届けする、ガチサウナ紹介コラムがこの「DJ SHUNSUKEのサウナ珍道中」である。
記念すべき第1回の舞台は、私DJ SHUNSUKEの故郷、熊本県にある「湯らっくす」。通称、“西の聖地”である。
湯らっくす、死角無し
熊本は“火の国”と言われ、そこらじゅうでわんさか温泉が湧いている。この湯らっくすも例にもれず天然の温泉なのだが、とにかく質がエグい。圧倒的温泉だ。
軽率に「スーパー銭湯」とか言ったら怒られるレベルのすばらしい温泉だ。先輩のDJ YAZ君(凄いクラブDJ、サウナには興味がない)と一緒に行ったときも「え、ここめっちゃ良いじゃん!」と言っていた。火の国の天然温泉の力、恐るべしである。
そして肝心のサウナは三種盛り。
・クラシックサウナ(アウフグース良い)
(公式サイトより引用)
男性側は毎時0分にアウフグースがあった。でっかい氷を溶かしながらのアウフグースはたまらんです。
・メディテーションサウナ(セルフロウリュ可)
(社長@湯らっくす様のSNSより引用)
非常に落ち着くメディテーションサウナ。訪問してきたメディテーションサウナの中でもトップ3に入る気持ち良さ。
・大噴火瞑想サウナ 大阿蘇(とんでもないミストサウナ)
(公式サイトより引用)
基本的にはミストで全然見えない。写真を見て内装を初めて確認した。足元は温泉が通っている。塩も設置されてるのでゴシゴシすると良い。
どれも素晴らしいのだが、特に「大噴火瞑想サウナ 大阿蘇」は、サウナなのに大阿蘇とか大噴火と言ってしまっている。大噴火が一体何なのか、何が起こるのか未だに正確には説明できない。
だが、それで良い気がしている。大噴火でアトラクション中に装着していたサウナ用メガネが役立たずになり、私は“裸眼で噴火”を目撃すべく目を凝らしたが、湯気のホワイトアウト状態、真っ白な世界しか見えなかった。
・水風呂
↑中央にMAD MAXのボタンが。かなり深くて最初は結構面食らうと思われます。潜れる幸せ。
サウナー界隈では全国にその名前が轟くこの施設の売りのひとつが水風呂だ。なんとその深さ171cm。
備え付けられたロープを掴んだまま、“MAD MAXボタン”なる謎の装置を押すと滝のような水が脳天に降り注ぐ仕様だ。
温度は17℃くらいかもしれないが、頭まで冷やせるこの水風呂も“西の聖地”と呼ばれる所以のひとつであろう。
そして、血のととのいへ──
忘れられないのは2025年の巡礼。つい先日の出来事だ。その日は湯らっくすオリジナルのフェイスタオルを購入。燃えるような赤。火の国・熊本を象徴するような、情熱的な色だった。
が。情熱が過ぎた。
クラシックサウナを出て、名物の“MAD MAXボタン”で水の暴力を浴びたあと、意気揚々とタオルで顔を拭いた。
──血。いや、赤。とにかく真っ赤。
まさかの新品タオル、未洗濯により染料ダダ漏れ事件勃発。気づけば顔も手も胸も赤い。ととのい椅子周りの白いタイルには“犯行現場のような赤い水”が残された。ととのい中のサウナ―の方たちから「なんか血めっちゃタオルから出てますよ!大丈夫ですか!?」と周囲は大いにざわつき、私は慌てて「これ染料なんで!平気っス!」と弁解。でも内心は「そうだよな、普通にホラーだよな」と、自分のビジュアルにドン引きしていた。この出来事はトラウマとして心に刻まれたが、同時に「これコラムに使える」と思った自分がいた。プロ根性ではなく、もはや業である。
↑事件はここで起きた。周りの人が一斉に「大丈夫ですか!?」と声を掛けてきた。熊本の人は優しい。
それでも、また行く
こんなトラブルがあったとしても、2023年12月にオープンした劇場型のアウフグース場「THIS IS IT」へはまだ訪問出来ていないので、確実にまた行く。
素晴らしすぎる温泉。気持ちの良いサウナ、17℃前後の水風呂に171cmの深さというバグみたいな仕様、頭上から脳天直撃の滝が落ちてくるMAD MAXボタン。
そして故郷熊本の風を感じながらの外気浴…何物にも代えがたい素晴らしい体験が出来るのは保証できるので、みなさんも是非行ってみてほしい。