TKda黒ぶち × WINGZERO 【前編】|Cross Street

ヒップホップの最前線で戦ってきたラッパーとブレイクダンサーが語る「バトル論」とは?

ライター:TARO

「ただ相手をけなしても、そこには“disrespect”の“respect”の部分がない」

TKda黒ぶち:
ブレイキンのバトルで「カッコイイもの」、「ダサいもの」の定義ってありますか?

WINGZERO:
自分のクセとかをどれだけ好きになっているか、自分に自信があるかみたいなところが全てのカッコよさなのかなみたいなのは思いますね。
ただ単に“ビジュアル的なカッコよさ”だけを集めることって誰でもできるんすよ。
ダサいものだったり、変なものだったりをいかにカッコよく見せられるかが勝負かなと思います。もちろんある程度はビジュアル的なカッコよさも大事ですけどね。

TKda黒ぶち:
ビジュアル的なカッコよさというと、ブレイクダンスだとどんな部分になるんですか?

WINGZERO:
やっぱり膝パッド(B-Boyが膝を守るためにつける膝当て)とかは見せたくないなとか、そういうこだわりですよね。
ただそれもその人によります。
すごい膝パッド出しまくっている人でもそいつの色があって、格好良ければokなので。
キャラクターが格好良ければ、カッコいいなって思います。TKさんが思うラップバトルにおいてのカッコよさとかダサさってありますか?

TKda黒ぶち:
ダサさで言うと、自分が思うのは品格がないバトルをしている人はダサいなと思っちゃいますね。
勝ち乞食(こじき)じゃないですけど、勝つために手段を選ばずに、思ってもないこと言ってきたり、なんか謎のボディータッチしてきたりとかする人ですね。普段はそういう事絶対しないっしょみたいな。そういう人って勝つことだけが目的になっているんですよ。

WINGZERO:
僕も若い時期はそういう時ありました笑

TKda黒ぶち:

僕も気持ちはわかるんですけどね。
もちろんバトルなので勝たなきゃいけないんで。ただ勝ち方はもっとあるっしょみたいな。
本当にすごい人って必ずバトルの時もマナーみたいなものを守っているので。
勝ちたいからってただ相手をけなしても、そこに“disrespect”の“respect”の部分がないんですよ。
自由だからこそ、言葉で何でも言えるからこそ、そこの言葉のチョイスが間違ってたり、手段を選ばない人は僕は好きじゃないです。

WINGZERO:
たまにラップバトルで本当にケンカみたいな雰囲気になっている時もありますもんね。

TKda黒ぶち:
ありますね。実は僕も昔はそういうタイプで。
初めてB-Boy Parkに2005年に出た時はもう品格なくって…笑
で、バトルの後、対戦相手だったすごい怖いラッパーさんに両国の通路で呼び出されて、めっちゃ怒られたことあります。
だけどその人が、「俺はお前のラップかっこいいと思う。お前はまだ若いから仕方ない。ただ言葉一つで業界からいなくなっていったヤツを俺はこれまで何人も見てきた。だから身の丈は超えるな」って言ってくれたんです。

WINGZERO:
アツいですね。

TKda黒ぶち:
「自分の素直な言葉で自分を表現しよう」って愛のある叱りをいただけて。
その時に自分もハッとして「ある程度の品格がなきゃいけないんだ」って学べたんです。
その先輩に教えてもらったのが結構初期の段階だったからこそ、バトルの上での品格を意識できるようにはなりましたね。

WINGZERO:
良い先輩ですね。

TKda黒ぶち:
本当にそう思います。

プロフィール

  • TKda黒ぶち

    TKda黒ぶち

    春日部のダテじゃないメガネの異名を持つRapper、Timeless Edition Rec.代表。 フリースタイルダンジョン3代目モンスター。2005年からマイクを握り今日現在に至る。 2015年末に1stアルバム「LIFE IS ONE TIME,TODAY IS A GOOD DAY.」、2018年に2ndアルバム「Live in a dream!!」、2019年にはキャリア初のEP「Good Morning EP」をリリース、2020年5月には日本のHIPHOPシーンを代表するプロデューサー陣を招き3rdアルバム”Don’t Let the Dream Die”をリリース。 また、日本初のHIPHOP専門ラジオ局”WREP”にて毎週月曜20時から放送されている”Timelessチャンネル”のパーソナリティーを務める。

  • WINGZERO

    WINGZERO

    日本が世界に誇るトップ・B-Boy。ブレイクダンスチームFOUND NATION(ファウンド・ネーション) のコアメンバー。基礎力の高いフットワークに加え、コミカルかつスタイリッシュなダンススタイルはジャンルを超え多方面のダンサーに支持されている。 オランダで毎年行われているブレイクダンスの世界大会・IBEのフットワーク部門で2012年・2013年と二年連続で優勝。2016年にはFREESTYLESESSION WORLD FINALの3vs3部門にメンバーのRYO-FLOW,ISSEIと出場し、日本人CREW初優勝を成し遂げた。現在は株式会社FNMDの代表として、ダンサーのマネジメントやキャスティングを行う他、YouTubeチャンネル「FLAVAJAPAN - ブレイクダンス TV -」のプロデュースを行なっている。