レペゼン:
Y‘sさんの10代~20代と比べて、今のストリートシーンをどう思いますか?
Y‘s:
「健全な遊びだな」って感じがする。俺がヒップホップを好きだった1つの理由が「ちょっと危なっかしいところ」。
普通の人じゃ近寄れない、色眼鏡で見られるくらいが好きだっんだよね。
レペゼン:
なるほど。
Y‘s:
ヒップホップの世界に入ってみたら、漫画の中にいるような濃い人たちが、好きなことに没頭してやってる。そのギャップがかっこよくて。
喧嘩とかも、クラブで日常茶飯事だからピリッとしてたし。それが怖いけど、かっこよかったんですよね~。
レペゼン:
そう考えると、今は平和なんですね。
Y‘s:
いいのか悪いのかはわからないけど、当時は「ストリートのルール」があったし、そこを経ていける奴がイケてるラッパーって認識だったと思うよ。
「立ち居振る舞い」とか、「乗りこなし方」がちゃんとしてる奴が売れてくっていう感覚が俺らの中にはあるから。スキル以外のところの評価対象があったんだよね。
レペゼン:
現在のシーンをどう見えていますか?
Y‘s:
今は「いい子ちゃんたちだな」っていう感覚ですね。かつてのルールがなくなることはいいことか悪いことかはわからない。
俺らもかつての怖い経験が嫌だったから、厳しくはしないし。
レペゼン:
なるほど。かつてのシーンと、どこが一番違いますかね?
Y‘s:
後ろ姿でB-BOY感を感じる人が少なくなったように感じますね。苦さとか、辛さを経てきたな、っていうのが感じづらくなってきたなあ。
見た目なのか、時代なのかはわからないし、きっとその子達にも経てるものがあるはずだけどね。無理してでも成り上がってやろうっていう気負いがある奴があんまり見ないかな。
レペゼン:
“後ろ姿”、ですか。
Y‘s:
「有名な子達だよ」って紹介されて会っても、ガツガツくることはないね。
当時って、バーカウンター前って戦場じゃん?俺らの時は関係者とか先輩見つけたら「飲みましょう!乾杯してください!」って、その戦場に向かっていってましたね。
それで、「Y‘s?誰だよ、知らねーよ」って言われたこともあるし、雑誌とかで取り上げられれば取り上げられるほどヘイトされたし。
レペゼン:
確かに、バーカン前ってそんなイメージでした。素人にはちょっと怖いぐらい。
Y‘s:
それでも向かっていったから今があると思ってます。のし上がってやろうって行動で感じることが減ったなあ。
レペゼン:
随分、時代が変わってきたんでしょうか。
Y‘s:
俺らの時代が「時代の狭間」で、昭和の残党みたいなのばっかだったから。その狭間を生きている俺としては今のシーンは少し寂しいよね。
レペゼン:
若い世代でもその「ストリート」ができてる人はいますか?
Y‘s:
YANO(ヤノ)、YZEER(ワイザー)とかBAD HOP(バッド・ホップ)のやつらはどしっとしてる。振る舞い方はわかってるのかな、って感じ。
それ以外は若い子たち見ても目立たないですね。
レペゼン:
目立たないんですね。
Y‘s:
俺はどう目立つか、ばっかり考えてたからさ。視覚で食らう人はいないかな。
会って話すと違うのかもしれないけど、最初は視覚だから、それって大事じゃん。
レペゼン:
これからシーンはどんな風になっていくと思いますか?
Y‘s:
フリースタイルバトルのブームはこれまでも何回もあるからね。ブームが下火になって、ライブや音源の時代が来ての繰り返しかな、と思ってます。
今は、バトルは一時期ほど盛り上がってなくて、若いラッパーが音源出してバズってる状態だから、そのサイクルの途中かな。だんだんとそのサイクルの規模はでかくなっているけどね。
レペゼン:
若い人たちに向けて、このシーンで稼いでいくためのアドバイスはありますか?
Y‘s:
音楽だけって思わなければいいと思う。「音楽ででかい金稼ぎたい」はひとつの夢だと思うけど、今の日本だとそれはフィットしないね。
アメリカだったら、それで億万長者になれるけど、どちらかというと、仕事をしながらでもいいから、続けることの方が大事なんじゃないかな。
レペゼン:
“続けること”ですね。
Y‘s:
続ければ、誰にでもワンチャンあるからさ。今、残ってるやつらってラップがうまかった奴らじゃなくて、意地でもやめなかった奴らなんだよ。
レペゼン:
なるほど。
Y‘s:
頭がいいのかハートが弱いのかわからないけど、うまい奴も、スター性ある奴も「音楽じゃ稼げない」と思ってやめるんだよね。でも35歳で当たるか40歳で当たるかなんてわからないじゃん。
しっかり働きながら音楽やってれば、極論売れなくてもいいんだからさ、それくらいの気持ちでやったらいいと思う。
レペゼン:
続けることって難しいけど、大事ですね。
Y‘s:
日本にはそれがフィットすると思う。音楽で金稼げるのって、いつかわからないから。
逆に若くして稼げても、それがいつまで続くかわからないから、売れた名前を使って違う商売やったらいいと思うよ。日本にはそこから派生するビジネスが少なすぎる。
だからアメリカに比べて遅れてると思ってます。
レペゼン:
確かに、日本は職人気質っていうか、プロはとことん追求しないといけない、みたいな風潮があるかもしれないですね。他のことに手を出すと否定されたりとか。
Y‘s:
アメリカには音楽やりながら、スムージー屋とか服のブランドやったりしてる奴らいるでしょ?みんなから見てもらえる時に、いろんなことを仕掛けていくわけじゃん。
そうすればもっともっとお金が稼げるわけで。音楽だけで稼げてる若い子たちがいるのであれば、それを遊びに使うだけじゃなくて、自分の将来役立つ学びに使ったらいいと思います。
▼Y’s
Instagram:ys_yellowman1983
Interview:ABE HONOKA
Writer:中崎史菜
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