レペゼン:
ニューヨークの「PRIVILEGE」について、日本とカルチャーも人も違うと思うんですけど、現場の感触を教えて頂けますか?
金子淳二郎:
日本との違いを特に感じるのは、ニューヨークの人は自分自身が「これが良い」ってことに対して自信を持っているんですよね。
レペゼン:
それはお客さんがですか?
金子淳二郎:
お客さんもスタッフもですね。日本は「流行ってるから!」っていう右向け右的な傾向が多いじゃないですか。90%が選ぶほうが良くて、10%の方は変人扱いされるみたいな。
レペゼン:
そういう文化は確かにありますよね。
金子淳二郎:
ニューヨークだと、そんな10%も90%も気にせずに「これがクールだぜ!!」って個々の主張で買って行ってくれる。これは、見ていて気持ちがいいですね。
レペゼン:
確かに気持ちが良さそうです!
日本のショップではこれすごい売れてるんだけど、ニューヨークじゃ全然売れないなって物も多いんですよね?
金子淳二郎:
全然あります。その逆もだけど。
日本じゃ全然伝わってないグラフィックのデザインが、ニューヨークだと「これサンプリングにしたか!」ってめちゃくちゃ反応が良かったりしますね。
オンラインだと買った時の反応が見られないけど、現場でそういう反応を見るのはやっぱり楽しいね。
レペゼン:
そのデザインのルーツとかまでしっかり知ってるんですね。アメリカは本当に色んなお客さんがいそうですね。
金子淳二郎:
日本はカスタマーサービスがしっかりしてて、ある意味”接客の技術”は世界でも1番だと思うけど、アメリカだとお客さんが主体となって買うので、雰囲気は全然違いますね。
レペゼン:
そういうお客さんの反応がダイレクトで見られるってのはニューヨークの良いところなんでしょうね。
金子淳二郎:
あとはニューヨークってやっぱり世界の中心だから、色んな分野でギラギラしてる奴が多いから楽しいですね。
レペゼン:
日本の店舗もそうですけど、ニューヨーク店にも大御所からアップカミングなラッパーとか色々と顔出してくれてると思うんですけど、そういうのはどういった経緯なんですか?
金子淳二郎:
DJやってる奴や、元々パーティーのプロモーターだった奴、後は働いてるショップスタッフの周りの人間とか色んなコネクションで遊びに来てくれてるって感じですね。
レペゼン:
そういう人達の反応ってどうですか?
金子淳二郎:
良いですよ。作ってる物はアメリカのブランドと正直変わらないと思うんだけど、日本人がクリエイトしてるって部分で更に反応は良いのかなって思います。
レペゼン:
それは良いですね。
金子淳二郎:
でもメイドインジャパンで作ってるからこれはクールだなってのは通用しなくなってきてるかな。ニューヨークは本質的に良いものはどこの物だろうが関係ない気がします。
レペゼン:
なるほど。
ニューヨークにお店出してから2年半ぐらい経ちますが、今たくらんでいることはありますか?
金子淳二郎:
正直まだ軌道に乗っけられていないという部分があるので、まずは軌道に乗っける事。あと、ニューヨークにショップがあるという利点を日本でもう少し発揮したなと思います。
レペゼン:
チャンスがあればニューヨーク、もしくはアメリカの他の都市に2店目を舗出したいとかはないですか?
金子淳二郎:
まぁやれるのであればブルックリンとかに出したいですけどね。「Supreme(シュプリーム)」、「Only NY(オンリー・ニューヨーク)」とかもそうだけど、マンハッタンに出してブルックリンにも出すってのが今は主流だから、LA行こうとかマイアミ行こうってのはないですね。
レペゼン:
ニューヨークの中でまた違うところにって感じですね。
金子淳二郎:
まあLAとかもそのうちやって見たいけど、まだ今は大変かなってのもありますね。
レペゼン:
そしたら、マンハッタンの次はブルックリンって事ですね!
今のストリートシーンをどう思いますか?
金子淳二郎:
基本的にストリートで生まれる物がファッションやカルチャーになるってのが元々好きだったんですけど、今はスマホとかで情報が取れちゃうじゃないですか。
レペゼン:
今はなんでもスマホですね。
金子淳二郎:
ニューヨーク行って思うのが、メシ屋で何食うかにしても、スニーカーの発売にしても、スケートのトリックにしても、ラップにしても、ストリートの会話から生まれるんですよね。
そういうストリートの日常の延長から生まれるカルチャーがやっぱり好きですね。
レペゼン:
もうそれは18、19歳の頃初めてニューヨーク行った時からずっと変わらないって事ですね。
金子淳二郎:
本来なら、家で溜まってこれ面白いよねって自分たちの中で流行りを作っていくのがストリートだと思うんですけど。
けど、ストリートブランドって今はハイエンドみたいになってしまっていて。高くなってしまって、ストリートブランドの領域を超えているのかなと。
レペゼン:
そうですね。
金子淳二郎:
でもそうじゃなくて、もとは自分たちなりにできるデザインやアレンジを落とし込んで始まったのがストリートブランドだと思うんですよね。やっぱり。
レペゼン:
確かにそうかもしれないですね。
金子淳二郎:
ストリートでハスリングして、全身「Gucci」で「メイクマネー!!」って言ってるUSのラッパーはストリートだと思うけど、それに憧れた子たちがストリートに出て言って、それが流行っちゃったみたいな感じはしますね。
今はどっちかと言うとストリートって言葉自体が商業的になり過ぎてるのかって思いますね。
レペゼン:
「ストリート」っていう言葉自体が揺らいでいるのかもしれないですね。
ニューヨークと日本のストリートの違いって一言で言うとなんですか?
金子淳二郎:
ニューヨークはよく喋る!!そういう所から新しい物が生まれてる気がします。
デベロッパーとか沢山いて、面白いビジネスとかが一杯生まれるんですよ。それを行く度に思いますね。
レペゼン:
コミュニケーションが多いって事なんですかね。
金子淳二郎:
日本ももっとコミュニケーションを増やして行く事をやった方が良いと思う。コンビニに溜まるのがダメ!じゃなくて、あんなことをもっとやったらいいと思います。
LINEで終わらすんじゃなくて、なんならLINEのレスポンスは悪くて、直接会おうぜみたいな感じで。
レペゼン:
確かに!!
金子淳二郎:
アメリカ人は日本人のような細かい仕事は苦手だけど、センスがある子は沢山いるなって感じですね。逆に日本は仕事はキッチリやるけど、何か新しい物を生み出す力はまだ足りないかなって。
レペゼン:
じゃあ日本とニューヨークでは両極端な感じなんですね。
金子淳二郎:
だから楽しいというか、両方見てるから気付けるしまた新しい事に繋がっていくんだと思う。だからあんまりニューヨークにどっぷりは住みたくないし、アメリカだけじゃなくて色んなところで色んな発見をしていきたいですね。
レペゼン:
日本だけじゃなく他の国のストリートも見てきた金子さんの思う”ストリートの定義”とはなんですか?
金子淳二郎:
定義というか、ストリートって自由な物だと思うし、型にはまらなくて良い物だと思いますね。
レペゼン:
もっと自由であって良いんじゃないかって事ですか?
金子淳二郎:
そうですね。今は言葉が先行しちゃってて型にはまっちゃってる気がします。
メディアも含め、なんか型にはめようとする。もともとそういうの型にはまるのが嫌だからストリートカルチャーが生まれているのに。
もっと何でもありなんだよって。「これはストリートじゃないからカッコ悪い」って言う子もいるけど、それがストリートじゃないってどこから教わったの?って思うよね。笑
レペゼン:
確かに。
金子淳二郎:
たぶん、自分たち世代も含め、上の世代がそうやって教えたんでしょうね。自分も若い時はそう思っていたし、逆に今の年になってストリートはもっと自由とも言える。
これ日本全体の問題でもあって、そうやって型にはめようとするから、良いもの持ってても、潰される。自分たちが若いころ、上の世代でそういう人いなかったから。
だから自分は早く若い世代に伝えてあげたいですね。そういう世の中になれば、もっと日本から世界で活躍する人増えると思います。
レペゼン:
なるほど!そうですね。
金子淳二郎:
今はみんな売るための戦略として”ストリート”を使ってるけど、本来は自由な物なのでもっと自由で良いと思います。
金子淳二郎 Instagram:jun_lafayette
Interview by DJ K.DA.B(djkdab)
日本のストリートをレペゼンしよう。