『少林寺三十六房 – The 36th Chamber of Shaolin』を観るべき理由|ストリートヘッズのバイブル Vol.169

ウータン・クランに影響を与えた伝説のカンフークラシック

ライター:TARO

「ストリートヘッズのバイブル」では音楽や文化の知識を知ることができる映画や本を紹介していくよ!今回取り上げるのは1978年公開の香港映画のクラシック『少林寺三十六房』。ウータン・クランなどヒップホップシーンにも絶大な影響を与えたカンフー・アクション大作について紹介していくよ!

『少林寺三十六房』とは?

舞台は明が滅び清の圧政が広がっていた時代の中国。反政府活動に参加したために家族や友人を殺された劉裕徳(リュー・ユーダ / サンダ)は、強くなるために少林寺に入門。35の“房” で厳しい修行を開始する。

『少林寺三十六房』を観るべき5つの理由

ウータン・クランに絶大な影響を与えた唯一無二のカンフー・クラシック

本年5月24日に29年ぶりの来日が決まったヒップホップ史における最重要クルー、Wu-Tang Clan(ウータン・クラン)。彼らを語る上で切っても切り離せないのが、この『少林寺三十六房』だ。

ウータンのメンバーたちはカンフー映画が大好きで、クルー名の“Wu-Tang” は1983年公開のカンフー映画『少林と武当(Shaolin and Wu Tang )』の“Wu-Tang(武当、武闘)”から取ったというほど。

また彼らの1st アルバム『Enter The Wu-Tang (36 Chambers)』はブルース・リー主演の名作『燃えよドラゴン(Enter The Dragon)(1973)』と、この『少林寺三十六房(The 36th Chamber of Shaolin)(1978)』からインスパイアされ、タイトルをつけたものなんだ。

そんな『Enter The Wu-Tang (36 Chambers)』はグループのリーダーであるRZA(レザ)のカンフー映画への愛が詰まっているアルバムであり、カンフー映画でのセリフや効果音が多くサンプリングされている。5月の来日公演に行く予定のヘッズはこの機会にアルバムはもちろん、映画も含めてチェックしておくと公演をさらに楽しめるかも!?

 ②“ K.U.F.U.” で強くなる。毎日磨くカンフーのスキル

『少林寺三十六房』のストーリーのメインは主人公である劉裕徳(リュー・ユーダ / サンダ)が少林寺での多種多様な試練を乗り越え、精神的、肉体的に大きく成長していくというもの。

少林寺で武術を極めるには「房」と呼ばれる修行場で鍛錬を積む必要があるのだけど、その房の数はなんと35房も。各房には独自の修行法があり、池に浮かぶ不安定な木の足場を飛んで向こう岸に渡ったり、重い水桶を持って坂道を登ったり(腕に刃物付という超スパルタ式)といった見てて飽きない個性的な修行法が盛りだくさん。一見「何の役に立つねん!」と思ってしまう謎のトレーニングも多いのだが、実はそれは全てカンフーの修練になっているんだ。この一連の修行シーンだけでも必見だね。

③武術アクションの圧倒的完成度

主演を務めたゴードン・ラウの武術表現もこの映画の大きな見どころ。ゴードン自身、幼い頃からカンフーを学んできた達人であり、動きのキレや型の美しさはまさに圧巻。特に後半、少林寺の幹部である戒律院総長(リー・ホイサン)との武器を使った試合シーンは至高の身体芸術。戒律院総長を演じるリー・ホイサンも中国武術の一つ、詠春拳(えいしゅんけん)の達人であり、武術の達人同士でしか成立しない圧倒的完成度のカンフーアクションを披露しているんだ。

④タランティーノなど大物映画監督への影響

1970年代〜80年代に少年だった世代にとって『少林寺三十六房』のインパクトはすさまじかったようで、ハリウッドを代表する映画監督であるクエンティン・タランティーノもその影響を受けた一人。彼は自身の代表作『キル・ビル』で、『少林寺三十六房』で主演を務めたゴードン・ラウを敵側の重要人物として出演させているので、『キル・ビル』ファンの人はぜひチェックしてみてね。

⑤後世に続く“カンフー・ヒップホップ”のルーツ

”カンフーアクション”の身体的表現の美しさやかっこよさ、そして武術的要素と共に重要視される哲学性は、世界中の多くの若者を魅了し、ウータン・クランのようにヒップホップ的要素をミックスして新たな世界観を作りだす人々が現れることになる。その一つの形が2000年代初頭にハリウッドで形作られた“カンフー・ヒップホップ”と呼ばれるアジアとヒップホップを融合させた世界観だ。ジェット・リーが主演し、アリーヤやDMXなども出演した『ロミオ・マスト・ダイ(2000)』やジャッキー・チェン、クリス・タッカーW主演の『ラッシュ・アワー(1998)』など、カンフーアクションの中にラップソングやヒップホップバイブスを入れた作品が続々ヒットしたんだ。またそういった映画は当時のキッズ世代だったラッパーたちにも大きな影響を与えており、ケンドリック・ラマーが自分の衣装にカンフー要素を取り入れた”カンフー・ケニー”というキャラを作るなどカンフーへの思いを形にしている。カンフーもアメリカではマイノリティであるアジア系の文化であり、ヒップホップと同じく深い哲学性を持っていることなどもラッパーたちに受け入れられている要素なんだろうね。

 

出展元:ショウ・ブラザーズ

配信先:Netflix