目 次
ヒップホップ好きのスポーツ選手や文化人のキャリアについて全4回に渡ってインタビューしていく「あの人も実はヒップホップ」。今月のゲストは長野県長野市に拠点を置く株式会社Huuuu代表、編集者の徳谷柿次郎(とくたに・かきじろう)さんです。Vol.4の今回は東京から長野への移住、そしてHuuuu設立についてお話して頂きました。
前回の記事はこちら→ 挫折から独立まで――徳谷柿次郎、二度の上京と挑戦の軌跡
暗黒のアルバイト時代から年商3,000万へ──
Huuuu徳谷柿次郎の成り上がりストーリー
レペゼン:
東京で編集者として順調なキャリアを歩まれていた徳谷さんですが、その後長野に移住、株式会社Huuuuを立ち上げられます。改めてなぜ長野だったんでしょう?
徳谷柿次郎:
取材で全国を回っていたので、どこも良いなと思ってたんですけど、現実的なところで言うと東京との2拠点は必須だったんです。当時ははまだZOOMも一般的ではなく、編集会議で週1〜2回は東京に行く必要があったので。長野は上野駅まで電車1本、80分くらいで行けるのが大きかったですね。
レペゼン:
80分!結構近いんですね!
徳谷柿次郎:
そうなんです。あと災害リスクも考えました。僕は地元の新大阪で阪神大震災を、東京では東日本大震災も経験しています。当時住んでいた台東区の三ノ輪の付近は湿地帯でリスクが高く、不安もあって。その点、長野なら大きな地震や富士山の噴火があっても生き残れそうだなという感覚があったんです。
さらに長野って癖の強い面白い人が多いのに、編集者が少なくて。手垢がついていない土地で面白いことができそうだと感じたのも理由ですね。
レペゼン:
興味深いです。
長野に移住されてから、お仕事の調子はいかがでしたか?
徳谷柿次郎:
長野ローカルでの仕事はゼロでした。ただ当時は東京からウェブメディア関連の仕事がめちゃめちゃ来る状態で。「ジモコロ」的なことをやりたがる人が増えていた時期で、僕に相談を頂くことが多かったんです。例えば独立してすぐの2017年は、クラウドファンディングサービスの「CAMPFIRE」から声がかかって。小さな声を届けるウェブメディア「BAMP」を立ち上げました。オウンドメディアブームの後押しもあって、単発記事の依頼もどんもん増えていきましたね。記事一本の単価も法人として20〜30万円ぐらい。安売りはしませんでした。死に物狂いで頑張った結果、初年度は一人で3,000万円くらい売り上げましたね。
レペゼン:
おぉぉ!!松屋での暗黒時代を考えると、すごい成り上がり!!
徳谷柿次郎:
ラッパーっぽいでしょ?笑
仕事を手伝ってくれる仲間たちにも恵まれていたので、たくさんの案件もなんとかこなすことができました。特に会社初期から働いてくれていた編集者の友光だんごには助けられましたね。1人じゃ無理でした。当時はメディアや企画ごとにゆるいクルーみたいなのを組んで旅をしていて。今思えばヒップホップっぽいノリでしたね。
編集者としての記事へのこだわりと「Huuuu」のこれから
【Huuuuの集合写真】
レペゼン:
記事を作る上で、徳谷さんが特に意識してる点って何かありますか?
徳谷柿次郎:
「間口を作って、深く届ける」ってことかな。僕自身、もともと学問的にすごい人間ではなかったし、10代は漫画やプロレスが好きな少年でした。だから当時の10代の自分でも「面白い」と感じられる入り口を絶対作るってのは意識してますね。その上で深く読み進めると人生観が変わるような記事にしたいんです。形にすると「T字型」のイメージ。間口は広く、奥は深く、ですね。
レペゼン:
素敵です。「Huuuu」では本業の記事制作だけではなく、 出版事業や「スナック夜風」、そして「PAKAAN COFFEE STAND」などリアルな場所作りにも挑戦されていますよね。実際ビジネスとしては記事制作だけで十分に成り立っている中で、なぜ様々なチャレンジをされているのでしょうか?
徳谷柿次郎:
んー やっぱり「機会」を作りたいんです。10代の自分を振り返った時に “こんな場所や大人との出会いがあれば、もっとスムーズな人生だったかも?”と思うことがあって。
だから僕の会社では、誰かの人生にとって、新しい機会や気づきが生まれる場所を作りたい。長野はそういう機会が少なく偏りがある土地だから、余計に必要だと思いました。
レペゼン:
めちゃ良いですね。
今後新たにチャレンジしたいことはありますか?
目指すはKREVA。
メジャーとアングラの橋渡しになれる存在に。
徳谷柿次郎:
いっぱいありますが、一つあげるとすれば「作家」ですかね。「Huuuu」っていう会社もある程度やっていくつもりだけど、自分が今以上に世の中に認知されるためには、作家みたいな立ち位置に行かないといけないなと思っています。
レペゼン:
なぜまたその位置に行こうと?
徳谷柿次郎:
自分が価値があると思ったものをしっかり世の中に届けるためです。今、取材して作ったウェブメディアの記事が、とても届きにくくなっているなと感じていて。あとは本を作ってもなかなか売れない時代ですよね。ではどうやったら人が見てくれるかって言うと、いわゆるプロップスのようなものが必要だなと。自分が伝えたいものを伝えていくためにも、これからはもう少しメジャーの立ち位置で活動をしていきたいなと。ラッパーでいうと、メジャーにもアンダーにも働きかけられるような、KREVAのような存在になりたいですね
レペゼン:
アツいです。徳谷さんは幼少期の過酷な家庭環境や地域で感じた孤独感、そしてその後の20代でのなかなかうまくいかない時期を乗り越えて、今自分の生きたい人生を生きておられると思います。改めて今人生に迷っていたり、困難に直面している人たちに向けてメッセージをお願いします。
徳谷柿次郎:
結局、人がすべてです。辛くても目の前の人を大事にすること。誰かが拾ってくれることを信じた方がいい。良い人を演じるより「面白い人間」である方がいいと思います。旗を振り続けることですね。そうすれば人生は面白い方向に転がっていくと思います。
レペゼン:
ありがとうございます。
最後に「Huuuu」のテーマ曲としてのラップソングを一曲教えてください。
徳谷柿次郎:
迷ったのですが、EVISBEATS「いい時間」ですかね。
僕が30ちょいぐらいの時に、長野の白馬に向かう大糸線っていうローカル線に初めて乗った時に、真夏のアルプスの風景とともに聞いたのがEVISBEATS『いい時間』だったんです。
「Huuuu」での仕事も、ハードな現実には向き合って頑張るけど、やっぱ山とか見ないと帳尻が合わないよなとも思うんで笑
“いい時間”をどう過ごすか、もしくはどう過ごしてもらうかみたいなところは強く考えています。
レペゼン:
間違いないですね。ありがとうございます。
最後に何か近々で告知などはありますか?
徳谷柿次郎:
今年は自分たちの出版レーベル、風旅出版から新刊を2冊出していて。「都市と路上の再編集 – LIVE NOW DEVELOPMENT –」と「A GUIDE TO SHINANO-MACHI」という本です。新刊リリースに合わせて自分たちでも月に四本イベントを立てて全国行脚しているので、ぜひ僕たちのレーベル、風旅出版をチェックしてもらえると嬉しいです。また今回話したような僕の半生をまとめた本『お前の俺を教えてくれ』という2年ほど前に出した本もありますので、ぜひチェックお願いします。
【自著『お前の俺を教えてくれ』の刷り上がり立ち会い】
レペゼン:
チェックします!改めてこの度はお忙しい中、お時間頂き、ありがとうございました!
徳谷柿次郎:
ありがとうございました!
プロフィール
-
株式会社Huuuu代表取締役。大阪府出身。新聞配達と松屋のアルバイトでコツコツと積み上げる労働の原点を培う。二度目の上京で編集プロダクションに拾われて、社会人の喜びを知る。その後ウェブ系のコンテンツ制作会社の創業期に転職。企画、ディレクション、バックオフィス全体に携わった後に35歳で独立。株式会社Huuuuを立ち上げる。主な仕事に『ジモコロ』『Yahoo! JAPAN SDG`s』『SuuHaa』『OYAKI FARM』『DEATH.』など。 40歳の節目で『風旅出版』を立ち上げて自著『おまえの俺をおしえてくれ』を刊行。長野市では『シンカイ(休止中)』『MADO / 窓』『スナック 夜風』を営んでいる。座右の銘は「心配すな、でも安心すな」。