今まで支えてくれた音楽、カルチャー、シーンへ還元できるように

福岡でクラブDJ、そしてラジオDJとして活躍するDJ Linaのキャリアとは?

ライター:DJ SHUNSUKE

パーティーを通して人の心を強く揺さぶり続ける人達がいる。
彼らは何故、この仕事を選んだのか?
このコーナーではパーティーというカルチャーに関わり続ける演出家たちの過去から現在まで続くキャリアを紐解いていきます。
今回は福岡でクラブDJ、そしてラジオDJとして活躍するDJ Linaさんにお話を伺います!

DJ SHUNSUKE:
まずは自己紹介をお願いします。

DJ Lina:
出身地は福岡県福岡市、DJの機材をしっかりと触ったのは2019年頃だと思います。

幼少期、海外の音楽を耳にする機会は比較的多かった

DJ SHUNSUKE:
記憶の中で、最も古い音楽体験、覚えている曲はなんですか?

DJ Lina:
イギリスのグループ、The Bugglesの1979年リリースのVideo Killed the Radio Star(ラジオ・スターの悲劇)です。

↑現在も耳にするクラシック。ヒップホップアーティストもサンプリングしています。

DJ SHUNSUKE:
今でも耳にするワールドクラシックですね!僕も7Inchのレコードを持ってます、好きな曲です。どういうきっかけでその曲と出会ったとかは覚えていますか?

DJ Lina:
幼稚園の時、父が運転する車の中で流れていました
同時期で覚えているのは、電子ピアノに内蔵されていたThe BeatlesのOb-La-Di, Ob-La-Da、CDショップで耳にしたt.A.T.uのNot Gonna Get Us、英語講師だった母が寝る前に聞かせてくれたEnyaや子供用の英語の歌、ゴスペルなど、結構覚えています。音楽好きの父と姉の影響、ずっと観ていたディズニーチャンネル、習い事のピアノとダンスで音楽の思い出がたくさんあります。

DJ SHUNSUKE:
海外の音楽を耳にする機会が比較的多かったご家庭で育ったんですね!では、ブラックミュージックと出会ってから衝撃を受けた楽曲を教えてください。

DJ Lina:
ヒップホップで絞ると、幼稚園の時に見た父のRUN-D.M.C.とLL COOL JのレコードとCDのジャケットを覚えています。小学生低学年の時に父がリビングで観ていた映画”8 Mile”に「これはなんだ!」と思ったのを凄く覚えています。楽曲で最初に記憶にあるのは小学4年生の時に習い始めたヒップホップダンスの初日に聞いたRedmanのPut It Downでした。YouTubeで曲をディグる毎日でMVで印象的だったのはKanye Westダンススクールでよく使われていたのはMissy Elliott、Busta Rhymes、Ciara、Nellyなど…その中で1番好きだったのはT.I.でした。

DJ SHUNSUKE:
映画”8 Mile”を見て引き込まれたっていうDJさん、実は結構多いんです。海外のヒップホップやラップバトルをわかりやすく描いた作品であることもあり、この映画でヒップホップに興味を持ったと言う人、かなりいるようです。小学校四年の時にRedmanのPut It Downで踊ってたんですね、カッコイイ小学生!当時Tinbalandプロデュースでスマッシュヒットしました。一番大好きだったというT.I.もものすごく波に乗ってた時期ですね。

↑2007リリースのアルバム。特大ヒットしました。

DJへの興味より、楽曲そのものへの興味が強かった

 DJ SHUNSUKE:
海外の音楽に日常的に触れて育ってきたわけですが、そこからDJになるのにどんなキッカケがあったんですか?

DJ Lina:
大阪の大学に通っていた頃、毎週末のようにクラブへ通って踊ってました純粋に曲を求めに行っていて、当時はプレイしているDJを全然見ていませんでしたね。大学の単位を早く取り終え、在学中でしたが福岡に帰ってきた時にアルバイトで始めたのが、クラブのテキーラガールそこで初めてDJの知り合いができました。DJスクールで講師をされている方がいらっしゃったので、興味があって通うことにしました。そこから実際にクラブでDJプレイをするようになります。

体と音楽、どちらも大切にするために

DJ SHUNSUKE:
クラブに通ってはいたものの、興味の中心はDJのプレイではなく、流れる音楽そのものだったんですね。その後、テキーラガールを経て、フィメールDJとしてキャリアを積んできた訳ですが、ナイトクラブで活動する中で苦労した事、そしてそれをどう乗り越えてきたかを聞かせてください。

DJ Lina:
デリケートであまり語られないことかもしれませんが、大切なテーマなのであえて取り上げたいと思います。私は今でも毎月の月経に悩まされており、生理痛だけでなく、眠気や気分の浮き沈みがプレイに影響することがあります。さらに、生理の前後にお酒を飲むと悪酔いしやすく、帰宅した時には鬱っぽくなる事も度々ありました。

DJ SHUNSUKE:
そうですよね。体調と夜の仕事が直結しているのは本当に大変だと思います。

DJ Lina:
今は以前のように遅い時間までDJをすることが少なくなったため、ストレスは軽減されましたが、それでも生理の時に朝方までプレイするのは体への負担が大きいと感じます。だからこそ、日本の街中にも昼間からDJが活躍できる場所がもっと増えてほしいと思っています。単なるBGMではなく、しっかりとパーティーとして成立するような場があれば良いなと思いますね。結婚や出産をしても現役でDJを続けたいという気持ちがあるので、DJという職業に対する認識がより広がり、変わっていくことが理想ですね。

DJ SHUNSUKE:
僕も、昼間のパーティーの可能性はもっと広がっていいと思っています。もっといろんなアプローチをして、アフターワークとかでもしっかり盛り上がるようなパーティが作っていけたらな、とか思いますね。

現場に戻ってこれて最高に幸せ

DJ SHUNSUKE:
凄くストレートに聞くんですが、DJを辞めようと思ったことはありますか?

DJ Lina:
ありません!ただ、ラジオで朝の番組を担当することになって、1年間お休みしていた期間があります。その間、ラジオでDJプレイを毎週していましたが、やっぱり現場でのDJプレイの楽しさが忘れられず…ラジオはラジオで素晴らしいんですが、やっぱり現場でのDJって楽しいんですよね。今また現場に戻ってこれて最高に幸せです。音楽が大好きだから、辞めるという事を考えた事はないです!

DJ SHUNSUKE:
現場復帰後、DJをされているCoyote Uglyはどんな場所ですか?以前福岡でDJした際に現場前にお邪魔したんですが、凄く雰囲気の良いお店でした。同行してくれた僕の先輩は酔っぱらうと今でも「福岡のCoyote Ugly行きたいよね!」って言ったりします。長い時間は滞在できなかったので、もしよかったらどんなお店なのか教えていただきたいです。

DJ Lina:
店舗の名前がCOYOTE UGLY SALOON FUKUOKAで、アメリカ、イギリス、ロシアなど世界に店舗があります。アジアは福岡が唯一の店舗で、私は水曜日〜土曜日に20時から03時まで1人でDJプレイをしています。2000年のアメリカの映画「コヨーテ・アグリー」に登場するバーの作りがそのまま再現されていて、映画同様バーカウンターの上でダンスができます。また、映画と海外店舗はロックが基調なので、ヒップホップやポップス、ラテンの中にロックを多めに混ぜたりと映画の世界観を大切にしてプレイしています。

DJ SHUNSUKE:
 客層としては結構多国籍な感じですか?

DJ Lina:
多国籍で幅広い客層ですね。日本のお客さんは勿論、大きな旅行カバンを持った世界各国の観光客、あとは私のラジオを聞いてくれてるリスナーの方も来てくれます。年齢層も若者から60代までとかなり広いです。なので、選曲としては強い縛りは無く色々挑戦できますが、自由が故の難しさもそこにはありますね。ラテンの曲を3時間続ける事とかも普通にあります。とは言え、映画のコンセプトはロックなので、ピークタイムでもロックをかけたりお店らしさもしっかり意識しながらプレイしています。

全てを抱えて前に進むことは出来ない。手放す事も時には必要。

DJ SHUNSUKE:
DJキャリアにおいて、ご自身にとってのターニングポイントなどあれば教えてください。

DJ Lina:
自分のライフサイクルが変わるきっかけで、所属していた大好きなクラブを辞めた事ですね。そのクラブで私を知って下さった方が大半だったので、辞めた当時は自分が自分で無くなるような悲しい気持ちもありました。

DJ SHUNSUKE:
悲しい気持ちもある中で辞めると言う決断をしたのは何故だったんでしょうか?

DJ Lina:
キャリアステップにおいて、どうしても必要な事だと思ったんですよね。慣れ親しんだ場所、自分を知ってもらえた場所から離れることは寂しかったですが、必要な決断だったと思います。辛いこともたくさんありましたが、あの場で得た経験は、クラブDJとラジオDJとしてやっていく中で今でも活きていて、本当に凄く感謝しています。手放すことも時には必要で、その後どうなるかは自分自身の手でまた決められると実感しました。

ラジオのDJを天職と感じる

DJ SHUNSUKE:
これまでのキャリアの中で、最も印象深い出来事を聞かせてください。

DJ Lina:
毎日、毎週、毎月、毎年が本当に濃くて、確実に年々楽しくなっています。もっと更に忘れられない出来事が待っていると思います。

DJ SHUNSUKE:
ラジオDJとしても活躍されていますが、そもそもラジオをやることになったきっかけって何だったんですか?

DJ Lina:
もともとはクラブでDJをしていた時に、ラジオ局の番組でDJプレイをするコーナーにゲスト出演させてもらったんです。ご縁をつないでくれたのがDJの先輩で、そのときにラジオ局の社長さんと出会って。「ラジオパーソナリティに興味はない?」って声をかけてもらったのがきっかけですね。

DJ SHUNSUKE:
元々はラジオでのDJにも興味があったんですか?クラブDJとは角度の違うDJであるラジオDJのお仕事をしてみて、どんなやりがいや、面白さを感じていますか?

DJ Lina:
ラジオはほぼ聞いてこなかった人生でした。ただ音楽と映画が大好きで、マニアック情報を追求する性格+お喋りなため、天職に感じています。クラブの方が目の前でリアクションを頂けるのでその場の爽快感は大きいですが、ラジオの方が曲の解説をしたりと私自身が更に1曲1曲に向き合うようになりました。また、毎回の放送を楽しみにしてくれるリスナーさんの存在が大きいです。

DJ SHUNSUKE:
ラジオDJとしては、朝の番組を担当されてると伺いましたが、どんなラジオ局でどんな番組を担当されているんですか?LINAちゃんの番組の聴き所などあれば教えてください。

DJ Lina:
朝7時から10時50分のTop of the Morning という生放送番組を1人で担当しています。ラジオの日は朝4時に起きて、コヨーテでDJの日は朝3時まで起きて、とハンナ・モンタナの様な生活です。番組を放送しているLOVE FM という福岡のラジオ局は福岡県全土、熊本、長崎、佐賀、大分、山口県の1部と九州北部で聴く事ができます国際放送のため、バイリンガルのdjが多いことや、洋楽好きのリスナーさんがついている事が特徴です。番組は、7時〜9時がニュース中心。その後10時からは私が音楽や話題をセレクトし、毎週生放送でDJプレイをしながら主に最新の洋楽情報を紹介しています。Kendrick LamarのSuper Bowlハーフタイムショーが行われた時には翌日に特集、今年のMetro BoominとJustin Bieberの最新アルバムを3日間特集など…最新情報を心がけています!九州エリア以外の方も、radikoアプリで番組が聴けるのでぜひチェックしてみてください。

DJ SHUNSUKE:
ラジオDJとクラブDJ、並行して活躍されていますがそれぞれの活動の中で最も大切にしていることはなんでしょうか?

DJ Lina:
クラブではお客さんが目の前にいるので、その場でやりがいを感じる事ができます。ラジオではラジオの世界の人達に自分を知ってもらえたり、リスナーさんとの交流があったり、違う魅力があります。音楽の聴き方そのものが少し違うとは思います。ただ、どちらにも共通して大切にしていることは、音楽が好きな気持ちです。今は自分がリスナーではなく、人々へ音楽で影響を与えられる立場になったことから、今まで支えてくれた音楽、カルチャー、シーンへ還元できるように発信しています。

これまでやってきたことは全部「今」につながっている

DJ SHUNSUKE:
今自分が力を入れている事、未来へのビジョンがあれば教えてください。

DJ Lina:
正直、クラブDJやラジオDJを仕事にするなんて昔は全然思ってなかったんです。でも振り返ると、これまでやってきたことが全部今につながっているなと感じます。だからこそ、近い未来ではまた全く違うことにも挑戦してみたいと思っています。

DJ SHUNSUKE:
今後福岡のクラブシーンに入ってくるであろう、若い人達にアドバイスがあれば一言お願いします。

DJ Lina:
いろいろやるべきこと、注意すべきこと、心がけることはありますが、一番は音楽が好きかどうかが大切です。その気持ちを忘れず、大切にして活動をしていってほしいなと思います。

 

プロフィール

  • DJ Lina

    DJ Lina

    1997年福岡県福岡市生まれ。関西外国語大学卒業。福岡を拠点にクラブDJとラジオDJとして活躍中。現在(2025年)は、”COYOTE UGLY SALOON FUKUOKA”で20時〜03時の間、1人でDJプレイを任されている。福岡のラジオ局”LOVE FM”の朝帯番組”Top of the Morning”のラジオパーソナリティで、月〜水曜日の朝07時〜10時50分の生放送を1人で担当。日英バイリンガル。ヒップホップ、ポップス、ロック、ラテンなど広範囲のジャンルで外国人に向けたプレイを得意とする。

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