ヒップホップ好きのスポーツ選手や文化人のキャリアについてインタビューしていく「あの人も実はヒップホップ」。今月は神奈川県逗子市を拠点に、“心の声をラップにする”「COCORO RAP CONTEST」を主催されている「マイクラおかん」こと下崎真世(しもざき・まよ)さんに4回に渡って、お話をお伺いしました。Vol.4ではラップへの思い、そして今後の活動について話して頂きました。
前回の記事はこちら→ ヒップホップに救われた普通のオカンが見出した”カルチャー”という居場所
ラップが教えてくれた自分との向き合い方
レペゼン:
今回は改めてラップが下崎さんに与えた影響について教えてください。元々日経新聞主催のラップコンテスト「NIKKEI RAP LIVE VOICE」への出場がきっかけでラップを始めたということですが、始める前と後では何か心境や考え方の変化はありましたか?
下崎真世:
ありましたね。私は元々自分の考えを持ったり、自分を見つめたりすることが苦手な人間で、ましてや人に言う勇気なんて全然なかったタイプなんです。そういうことを無意識に避けていたんですよね。でもあのラップコンテストを通して、自分と向き合って、しかもそれを曲にすることで、今まで言いたくなかったことをむしろ作品という形に昇華できたんです。
レペゼン:
良いですね。
下崎真世:
あとコンテストだったので、「誰かに聞かせて評価してもらう」ことを意識してラップを作ったんですが、実際に歌ってみると、そういう評価はどうでもよくなってしまって。結局は「自分に対して歌っているんだな」と気づいたんです。
レペゼン:
自分に対して?
下崎真世:
はい。自分に向き合って自分と対話することで、そしてそれをビートに乗せることで、心のもやもやが整理ができて次に向かうことができたんです。
レペゼン:
まさにラップの癒しの力ですね。
下崎真世:
そうなんです。それでラップの力をすごく感じて。もっといろんな人がラップを通して、自分の内面と向き合って表現することができても良いんじゃないかと思ったんです。ビートにのせてラップにすることで、過去の出来事を昇華し、新たな一歩を踏み出していける。ラップってすごいなと。
レペゼン:
間違いないですね。ラップコンテスト参加にあたって、何か参考にした曲などはあるんですか?
影響を受けたラッパーは高樹沙耶!?
下崎真世:
そうですねえ…。一曲挙げるとしたら、「MASATAKA & 高樹沙耶 – Legalize it」かもしれないです。
【 MASATAKA & 高樹沙耶 – Legalize it 】
レペゼン:
おぉ!2023年にかなり話題になった一曲ですね!
下崎真世:
初めてラップ制作に挑戦するにあたり、参考曲として教えてもらったのがこの高樹沙耶さんのラップなんです。
「えっ?高樹沙耶さんがラップ!?」と驚きましたが、聴いてみるとやわらかい歌声と芯の通った生き様を届けるリリックに圧倒されました。海を背景にしたMVの世界観も相まって、まさに“生き様のプレゼンテーション”だなと。
ラップコンテストでの自分の作品づくりで、かなり参考にさせてもらいましたね。
不登校の子どもを持つ母として。
“マイクラおかん”が目指す誰もが表現できる社会
【COCORO RAPにて】
レペゼン:
お話を聞いていると、下崎さんの周りに人が集まってくるのも納得です。お言葉、お人柄に人を惹きつける力強さを感じます。「COCORO RAP」は今後も続けられるとのことですが、これから何かチャレンジしてみたいことはありますか?
下崎真世:
だれもが表現できる場所をつくりたいです。例えば障がいがある方や事情があって外出が難しい方でもライブや表現に参加できるような仕組みづくりには関心がありますね。今はAIやロボットなどテクノロジーの力もあるので、表現の可能性はもっと広がると感じています。
レペゼン:
良いですね!
下崎真世:
私はヒップホップやラップと出会って、自分と向き合い表現することの大切さや、人生における出会いの素晴らしさに改めて気づかされました。ラップと出会う前の私は自分の子供の不登校についてすごく悩んでいたのですが、今は人生って学校で学ぶことだけが全てじゃないなと思っていて。大事なのは学校に行く、行かないとかよりも人生で「生きていて良かった」「生きていて楽しい」と思える場所や人と巡り合うことだなって。
レペゼン:
間違いないです。
下崎真世:
ヒップホップとの出会いが私にそのことを気づかせてくれたんです。なので今度は自分がヒップホップから教えてもらったことを活かして、何か動いていきたいなと思って活動しています。COCORO RAPもその一つですし、他のプロジェクトも今色々と取り組んでいて。先日も不登校についてのプロジェクト「ZUSHIこどもサポート保護者の会」を立ち上げました。このプロジェクトを通して不登校当事者の課題を行政に届ける仕組みをつくりたいと考えています。大切なのは「声をあげる」ことよりも、自分と向き合い、思いを“届ける”こと。これからは私が今生きづらさを感じている人の声を社会に届けるサポートに少しでもなれたらと思います。
レペゼン:
それこそヒップホップマインドだと思います。
改めてこの度はお忙しい中、お時間頂き、ありがとうございました!
下崎真世:
ありがとうございました!
プロフィール
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大阪府出身。神奈川県逗子市在住。 「オカンの日替りキッチン」運営代表。「COCORO RAP CONTEST」主宰。ラッパー、イベント企画、講演活動なども行うマルチ・ヒップホップ・アクティヴィスト。 大学卒業後、保険会社やアンティークの買い付けの仕事などを経て、逗子へ。地域の“オカン”たちによる手作り料理の販売・配達を行う「オカンの日替りキッチン」を立ち上げ、特に子育て世帯や産前産後の家庭支援を中心に、コミュニティの食と心を支える活動を展開中。2023年、日経新聞主催の「NIKKEI RAP LIVE VOICE」に出場し、ラップ未経験ながら“呂布カルマ賞”を受賞。その後、社会の声なき声を代弁する場を自ら作るべく、「心の声をラップにする」ラップコンテスト「COCORO RAP CONTEST」を主宰。初回から7歳〜80歳、国内外から100件を超える応募を集めるなど、幅広い世代から支持を受ける。 「誰でも主役になれる」「下手でも伝わる」というヒップホップの本質を軸に、言葉を使った自己表現の可能性を広げる活動を続けている。