ネガティブをポジティブに。パラスポーツ社長、田中時宗のヒップホップ的哲学とは?

パラスポーツの未来を創る会社「センターポール」社長おすすめのラップも紹介

ライター:TARO

ヒップホップ好きのスポーツ選手や文化人のキャリアや仕事について全4回に渡ってインタビューしていく「あの人も実はヒップホップ」。今月のゲストは障がいのある方が行うスポーツ、パラスポーツの支援事業を手がける会社、センターポールの代表、田中時宗(たなか・ときのり)さんにお話をお伺いしました。Vol.4では田中さんが考えるパラスポーツの現在地とこれからについてお話し頂きました。

前回の記事はこちら→ ラップ好き社長 田中時宗が創り出す新たなパラスポーツの可能性

田中時宗が考えるパラスポーツの現在地とこれから

レペゼン:
パラスポーツの現状と今後について、田中さんはどう見ていらっしゃいますか?

田中時宗:
認知は広がってきているのでポジティブかなと考えています。ただやっぱり知ってる人がまだ限られているので、広げて、繋げていかなければいけない。前回の東京パラリンピックの時は盛り上がったし、公的なお金も入って、目に触れる場所とか機会が増えましたよね。なので僕たちセンターポールの役割として、今後パラ業界がある程度自走していくための動きをしていきたいと考えています。

レペゼン:
パラ業界が自走するための動きというと具体的にはどんなことなのでしょうか?

田中時宗:
まず今我々が教育現場で行なっているパラスポーツを取り入れた授業は、継続プラス推進していかなければいけないですよね。今は東京都の枠組みの中で僕らはやらせてもらっていますが、それを全国に展開していきたい。あと毎回パラリンピックの時期になるとパラスポーツに注目が集まりますが、シーズン以外の時も常に発信であるとか、パラスポーツ楽しいというコミュニティーを作っていかないといけないと感じています。



レペゼン:

パラスポーツを他のスポーツと同じようにみんながカジュアルに楽しめることができると良いですよね。

田中時宗:
そうなんです。よりオリジナリティーを追求しながら、「楽しいから参加する」っていうフェーズに移動していかなきゃいけないかなと思ってます。そのための要素として、“福祉的な観点からの脱却”があるのかなと。もちろんそれはそれで良いのですが、福祉のニュアンスが強いと、多分参加者の心には焼きつきにくいと思うんですよね。

レペゼン:
わかります。もちろん障害というものを扱う以上、福祉の観点があるのは当たり前なのですが、そこが強いとどうしても少し押し付けがましくなってしまう場合があるというか。

田中時宗:
そうなんです。そういう意味では、僕たちがやっている「パラスポーツ×ヒップホップ」といった見せ方も一つの正解かなと思うので、成功させていかなきゃいけない。ただもちろんいろんな正解があって良くて。僕は今、地元の人たちだとか、音楽関係の方と、そして現役のパラスポーツ選手と一緒に新しい価値を作っていくというのでやっていますが、スポーツじゃなくて文化活動をする障害がある方たちの団体もいらっしゃいますし。それぞれがオリジナリティーを突き詰めて、みんなが選べるような状況になれば、生きやすくなってくるんじゃないかなと思うんですよね。

本当の意味でのダイバーシティー理解とは?

レペゼン:
田中さんはいわゆる“健常者”ですが、田中さんが考える障害というものに対しての認識を教えてください。

田中時宗:
これはかなり難しい質問なのですが、お互いに模索していく必要があるものなのかなと思っています。ただこれだけは言えないなと思うのが、やっぱり「障害は個性だ」みたいなことは絶対言えないです。

レペゼン:
その言葉は私もかなり違和感があります。

田中時宗:
僕の「障害というものに対しての認識を聞かせてください」って言われたら、まず一言で「キャッチーに言えるようなものではない」っていうのは前置きであります。ただ個人的に思うのは障害ではなくとも、人間は誰しも壁にぶち当たることがありますよね。それが身体能力の場合、文化的なことである場合、人種的なことだったりもすると思うんです。大事なのはそれを受け入れた上でどう動くのか?ということだと思うんですよ。

レペゼン:
なるほど。

田中時宗:
それが自立だと思うんです。例えば、今、世田谷で障害がある児童の支援を行っているんですけれども、子供達に対しては、「障害を持っている君たちにはできないこと、やりづらいこと、困ることはあると思うけれども、できることは自分でやろうね」って話をいつもしてます。

レペゼン:
大事なことだと思います。

田中時宗:
僕の友達で障害がある人がいるんですけど、彼がすごいパンチラインを子供達に言っていて。
「ありがとうって言えなかったらお前ら死ぬぞ」って。本当にその通りなんですよね。助けが必要な時は絶対誰にでもあるので、その時にちゃんと応援される人になろうねっていうことで。もちろん何でもやってもらって当たり前というのは違いますが、そのあたりのサポートの考え方も含め、お互いに模索していく必要があるのかなと思いますね。

パラスポーツの未来を創る会社、センターポール社長のおすすめラップソング

レペゼン:
センターポールのテーマ曲としてのヒップホップというものはありますか?

田中時宗:
難しいですね。僕のオススメでいうと、スチャダラパーさんの「ついてる男’94春」です。リリックはある男の1日の出来事を歌っているのですが、1ヴァース目と2ヴァース目で受け取り方が全く違うって曲で。例えば、1ヴァース目では、自分の家が火事になって大変って歌っているけど、2ヴァース目では「キャンプファイア ワオ ビックリ」みたいな程度なんですね。

田中時宗:
要は物事って捉え方次第だよなっていうことですよね。これは僕のテーマでもあって。やっぱりネガティヴなこともポジティヴに捉えてやっていきたいと思ってますね。

レペゼン:
田中さんのお話を聞いていると、常にネガティブなことをポジティブに考えて、実際にそれを行動に起こされているなと思います。そういった点はヒップホップの哲学とすごくリンクしているなと感じます。

田中時宗:
ヒップホップという文化も自己表現じゃないですか。障害がある人はスポーツがその表現方法にもなったりするし、あとは自分が思っている思想とか価値ももっと出していくべきですよね。特にパラスポーツ選手たちは、自分が得た経験をちゃんと社会に対して発信する義務があると思うんですよ。
もちろん彼らに求められているのは競技なので、そこにフォーカスしてもらいたいんですけど、ただ「アスリートの価値ってそこだけじゃないよね?」と。選手たちが競技で活動してきて、なおかつ感じたことをちゃんと伝える機会を作ることによって、それに価値を感じてくれた人たちがいるはずなんです。彼らの経験を価値に還元して、彼ら自身にちゃんとリターンが来るようにしていきたいと思っていますね。

レペゼン:
素晴らしいです。
これからの活動、応援しております!
改めて今回はありがとうございました!

田中時宗:
ありがとうございました!

プロフィール

  • 田中時宗(たなか・ときのり)

    田中時宗(たなか・ときのり)

    一般社団法人センターポール代表。パラリンピックアスリートのマネジメントや、就労支援事業所の運営を行う。学生時代はアルペンスキーの選手として活躍。大学卒業後、一般起業に就職するも、「スポーツに関連する仕事をしたい」という思いから株式会社センターポールを設立。マイナー競技のアスリートをサポートするために、企業とのマッチングサービスを始める。そんな中で車いすバスケットボールのことを知り、パラスポーツの普及活動にフォーカスした事業を開始。現在は全国の学校や企業に対して、パラスポーツの研修、体験事業を行う他、障害のある児童への運動支援など多岐に渡る活動を行っている。

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