パンチラインで観る映画『セッション』|ストリートヘッズのバイブル Vol.29

音楽にすべてを捧げる男たちが行き着いた、狂気の最果て。

ライター:Lee

みんな文化ディグってる?
「ストリートヘッズのバイブル」ではヒップホップ好きならマストチェックの映画を、作中に登場する名言を通して紹介していくよ!

今回取り上げるのは、アカデミー賞助演男優賞に輝いたJ・K・シモンズの怪演が光る映画『セッション』。
名門音楽院の伝説的指導者が率いる、ジャズバンドチームでの激しい才能と狂気のぶつかり合いを描いている。楽器演奏経験がある人なら、胸を締め付けられる描写が満載だ。そして、極限まで張り詰めたやりとりの中で生まれる、血が沸き立つような演奏も見逃せない。

そんな『セッション』から、君のマインドをインスパイアする名言を紹介していくよ!

『セッション』ってどんな映画?

プロのジャズドラマーを夢見るニーマンは、アメリカ最高峰の音楽院で日々ドラムの練習に明け暮れていた。その甲斐もあってか、伝説の名指揮者フィッチャーが率いるジャズバンドに加入することに。しかし喜びも束の間、待っていたのは異常なまでに完璧を求める、フィッチャーの厳しい指導だった。

文字どおり血のにじむような猛特訓にはげむニーマンは、フィッチャーの狂気の指導によってどんどん精神的に追い詰められていく。ニーマンの才能は開花するのか?それともつぶれてしまうのか?
音楽で認められることにこだわったニーマンが、たどり着いた境地とは。

『セッション』の名言

フィッチャーの行き過ぎた指導も、完璧な音楽を求めるゆえ。それに応えるように、ニーマンもどんどん音楽にのめり込んでいく。狂気に支配されたふたりから放たれる名言を3つ紹介するよ!

①「大人のテンポで」

ドラムの副奏者としてバンドに入ったニーマンに対して、はじめは優しく接するフィッチャー。ニーマンがはじめてドラムを叩くバンドの練習では、「まずは遅めのテンポで。がんばれニーマン」と励ます。意外にいい人じゃん!と思ったのも束の間、「ドラムのテンポが崩れている」と、何度も繰り返しニーマンにドラムを叩かせる。

罵詈雑言を浴びせながら、テンポを完璧に掴むまで止めないフィッチャー。しまいには、ニーマンの頬をビンタしながらリズムを体に叩き込んでいく。これにはさすがのニーマンも泣き出してしまい、ドラマーを交代することに。するとここからが本番とばかりにフィッチャーがバンドメンバーに向けた発したセリフがこちら

Big boy tempo.

大人のテンポで

こっわ〜〜〜!
やさしさだと思ってた遅めのテンポが、ニーマンにさらに追い討ちをかけてるのが怖すぎる。

バンドメンバーたちの、さっきよりも速いテンポでの演奏に、実力の違いをみせつけられたニーマン。練習初日にバキバキに心を折られる結果になったけど、こんなことで彼は諦めない。何かに取り憑かれたように、猛特訓にのめり込んでいく。

②「元気な金持ちの90歳で忘れ去られるよりね」

ある日、ニーマンは父と一緒に親戚一家との食事会に参加することに。そこでは、ニーマンがいくら音楽院での実績を話しても、スポーツ万能だったり成績優秀ないとこたちだけが賞賛される。自分のすべてを捧げている音楽を見下されていることに腹を立てたニーマンは、いとこをこき下ろすようなことを言う。

その立腹具合に呆れたおじさんに「友達はできたのか?」と聞かれたニーマンは、「チャーリー・パーカーは孤独だった」と、天才サックス奏者を引き合いに出す。「酒と薬に溺れて、一文なしの34歳で死んだ負け犬だぞ?」と、父がたしなめるように言ったセリフに対して、ニーマンが応えたセリフがこちら。

I’d rather die drunk, 

broke at 34 and have people 

at a dinner table talk about me

than live to be rich and sober at 90 

and nobody remembered who I was.

ディナーで僕の話をしてくれる人がいるなら、

34歳で酔って死んでもいい。

元気な金持ちの90歳で忘れ去られるよりね

極端すぎる〜!
芸術の素晴らしさがなんたるかをわかっていない親戚たちに対して、やるせなさを抱くニーマン。自分の才能を世間に認めさせる以外、生きている価値がないとでもいいたげだ。

自分にはその才能があると信じる彼は、どんどん傲慢になっていく。

③「英語で最も危険な言葉はgood jopだ」

ある事件が起きて、フィッチャーのもとを去ったニーマンは、偶然ジャズバーで演奏していた彼と再会する。フィッチャーもまた音楽院を去り、いまはプロのバンドメンバーの指揮者をしているという。

音楽院では誰も自分のことを理解してくれなかったと嘆くフィッチャー。生半可な指導では、天才を生み出すのは不可能だと力説するフィッチャーが、放ったセリフがこちら。

There are no two words 

in English language

more harmful than “good job”.

英語で最も危険な二語は

グッドジョブ(上出来)だ。

究極の指導者…!
人が満足してしまった瞬間に、成長がとまってしまうことを、彼は一番恐れていた。
完璧な音楽を、天才的な演奏家を生み出そうというフィッチャーの、狂気の信念が垣間見えるシーンだ。

今度はプロのバンドでメンバーを探していると、ニーマンを誘うフィッチャー。ふたりが物語の最後に対峙するステージでは、とんでもないことが起きる。

究極の演奏に達するために、ありったけの才能を捧げた男たちがたどり着いた結末を、ぜひ映画で見届けてほしい。

画像出典元:GAGA

配信先:U-NEXT

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