レペゼンインタビュー#25:ファッションデザイナー長嶺信太郎(後編)デザインするのもヒップホップ

一流アーティストからも愛されるブランド「el conductorH(コンダクター)」。インディペンデントであることの強さとは?

前編で語られたファッションデザイナーになるまでの道のり。「まずやってみる。」この一言を信じて動いた人の説得力に力強さを感じたのは我々取材班だけではないはずだ。
あなたが将来、”非凡な才能”を発揮したいとすれば、今のあなたが”平凡であること”はとは関係ないのかもしれない。

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後編に注目するのは、長嶺信太郎の具体的な仕事内容や仕事をする上でのマインドについて。
el conductorH(コンダクター)を愛する者の中には、”あの”日本語ラップ界のアーティストもいた。

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ファッションについて

レペゼン:
尊敬してる人はいますか?

長嶺信太郎:
自分でブランドをやっているので、ファッションデザイナーだったらラフ・シモンズです。でも、ラフ・シモンズの作る洋服が好きって訳じゃなくて、誰よりも革新的な事をやってるデザイナーで、その立ち位置をずっと続けている所に尊敬や憧れがあります。

レペゼン:
なるほど。

長嶺信太郎:
ラフ・シモンズの服は一度も買った事なくて、好みのブランドという事ではないんですけど、尊敬してるクリエイターですね。

レペゼン:
好きなブランドはありますか?

長嶺信太郎:
自分よりレベルの高い事をやってるなって思って尊敬するデザイナーは沢山いても、自分が本当に好きだなって思う服を作ってるのは自分以上にいないんですよ。それで、自分が服を作るようになってからは、全然買わなくなちゃったんですよね。

レペゼン:
なるほど。

長嶺信太郎:
だから今ここの服が大好きでハマってるってブランドはないんですけど、アクセサリーは作ってないので、今でも好きなのはCHROME HEARTS(クロムハーツ)ぐらいかな。

仕事について

レペゼン:
仕事をしていて、テンションの上がる時はいつですか?

長嶺信太郎:
やっぱり自分の作った服を、着てる人を見た時が一番嬉しいかな。

レペゼン:
それは嬉しいですよね!今まで手掛けた中で印象に残ってる仕事は何ですか?

長嶺信太郎:
ブランドを立ち上げて一番最初の展示会ですね。自分でコレクションを作り上げて、展示をして、お客さんが来てくれて、気に入ったら買ってくれる。全てがパッケージされた物が展示会だから、それを初めて体験した時が印象に残ってるし嬉しかったですね。

レペゼン:
そうですよね。初めてってドキドキするし、それが上手くいった時は嬉しいですよね。
仕事をする上での自分の強みや、他の人には負けないって事は何かありますか?

長嶺信太郎:
ファッション業界の事を多角的に見られることですね。
デザインに関しては素人なのかもしれないけど、ファッション業界に10年いて、他のデザイナーが経験してないような色んな物を経験してきてると思っています。だから、立ち上げから発表までで困る事がなかったです。

レペゼン:
細かいところまで知ってるから、こういう事はこの人に任せて、ここはこうすれば良いってのを熟知してるって事ですよね。

長嶺信太郎:
そうですね。なので、今のところつまずく事は全くないです。

レペゼン:
すごいです!

長嶺信太郎:
あとはうちの服のデザインは特徴的な物が多く、キャッチーなので衣装映えするんですよ。だから色んな有名な人達が着てくれています。

レペゼン:
例えばどんな人が着てるんですか?

長嶺信太郎:
そうですね。ANARCHY(アナーキー)さんやSALU(サル)さん、青山テルマさんも着てくれてますね。

レペゼン:
すごい!!ヒップホップな人たちが着てくれるんですね!

長嶺信太郎:
でもそれは僕のつながりで着てくれてる訳じゃないんですよ。

レペゼン:
そうなんですね。どういった経緯だったんですか?

長嶺信太郎:
知り合いではないスタイリストから、仕事で衣装を使いたいんですけどって相談がきて。それって僕のコネ関係なく、特殊な人たちが目立ちたい場面で、パッと目立てる服が意外と無い中で、目についたんだと思います。良い服は他にも沢山あるんですけね。

レペゼン:
コネとか関係なく選んでもらってるってのは、より嬉しいですよね!!ANARCHYさんやSALUさんたちとは関わりがあるんですか?

長嶺信太郎:
それで言うと、ANARCHYさんは昔から大好きで、普通に今でもファンだし尊敬していて、元々知り合いって訳でもないから、この関係を使って仲良くなろうとかは思ったりはしてないです。現場でお会いする事もあるけど、僕の服について話した事もないし、僕の作った服って知らないと思います。

レペゼン:
えー!もったいない気もしますけど…!
ファンであり、尊敬もしていてる人が、自分の作った服を着てくれてる事が嬉しいですよね。

長嶺信太郎:
それだけで良いんです。逆にこの服って誰が作ってるのって、気になって調べたら僕に辿り着くし、そうなって向こうから言ってくれるまでは、僕からは言う必要もないかなって思ってます。それはANARCHYさん、SALUさん、青山テルマさんに限らずです。

レペゼン:
陰でストリートを支えてるってことですね。

長嶺信太郎:
僕は音楽をやってる訳じゃないけど、マインドはヒップホップだし、デザインも感覚としてはヒップホップをやってるつもりでいる。手法は違えど、同じマインドを持っためちゃくちゃカッコいいなって思ってる人達が、自分の服を着てくれて関わりが持てるって事は嬉しいですよね。

レペゼン:
なぜヒップホップなんでしょう?

長嶺信太郎:
なんでかな…。難しいですけど、カウンターカルチャーって言うか、音楽って精神性が大切だと思うんんですよね。パンクやレゲェもとかもそうだと思うんだけど、”精神性”はヒップホップが一番自分に合ってると思ってます。

レペゼン:
なるほど。その精神性が、作る服からも何か感じられるから、いろんなアーティストが着るきっかけになるんでしょうね。

日本のストリートシーンについて

レペゼン:
今の日本のストリートシーンをどう思いますか?

長嶺信太郎:
良くも悪くも今は、SNSを中心としたオンラインの時代だと思うんですよね。だから本当のストリートがないって言うかなんて言うか。

レペゼン:
なるほど。

長嶺信太郎:
ある意味今のストリートはスマホの中にあって、現場にはないんじゃないかなって思ってます。僕たちは今では使ってるけど、昔はインスタグラムなんてなかったので、最初はなかった物として付き合ってるけど、今の人たちって最初からそれがあると思うんですよ。

レペゼン:
そうですね。

長嶺信太郎:
だからそっちがリアルで、そっちの方が重要になっちゃってるんじゃないのかなと思います。洋服とかも別に買わなくても良くて、1回写真撮ってSNSに上げれば、もう同じ服を着る必要もないって感覚を持ってる人達が多いんじゃないかな。

レペゼン:
それはすごく分かります。今はSNSでどう見られるかが重要って感じですよね。

長嶺信太郎:
ストリートって定義自体が曖昧だから難しいけど、俺が20代の時に感動した世界ってのは、今は本当のリアルにはあまりない気がします。逆にSNSをディグってる方が、そこに辿り着く可能性があるんじゃないのかな。だからってSNSが悪いとは言うつもりはないんですけど。

レペゼン:
SNSには良いところもありますよね。

長嶺信太郎:
そう。それのおかげで今は簡単に世界と繋がれるし、僕らが若かった頃には存在しなかった物だから、素晴らしい事だと思います。ただ、その事によって現実世界にリアリティが薄れちゃってる気もしてます。

レペゼン:
長嶺さんにとって、ストリートの定義とはなんだと思いますか?

長嶺信太郎:
ストリートブランドって呼ばれる物とそうじゃない物とあると思うんですけど、今はその定義もゴチャゴチャだと思うんですよね。例えばルイ・ヴィトンをOFF-WHITE(オフ・ホワイト)のヴァージル・アブローが手掛けてるけど、決してストリートファッションではないなと思うんですよ。

レペゼン:
確かに。

長嶺信太郎:
キャップだったり、ビックシルエットのTシャツとか作ってる物のスタイルとしては、ストリートと言われる物ですけど、ルイ・ヴィトンって時点でストリートブランドではないじゃないですか。

レペゼン:
ラグジュアリーブランドですよね。

長嶺信太郎:
だから、そういうジャンルみたいな物もなくなってるし、ストリートの定義ってのは難しいですけど、敢えて言うなら「インディペンデントである事」ですかね。個人で独立して、自分の力でやっているかどうかです。

レペゼン:
なるほど。力強い言葉ですね。その中で稼ぐために必要な事はなんだと思いますか?

長嶺信太郎:
インディペンデントの強みは、インディペンデントである事だと思います。つまり、どこかに所属してとか企業に縛られる事もない。当然ストリートにもクルーとかチームってのはあったりするけど、個人個人が独立した個の集合体であって、集合体の中でしか出来ない奴はストリートじゃないと思うんですよ。

レペゼン:
なるほど。集合体から離れて個になっても自力で出来ないとダメって事ですね。

長嶺信太郎:
例えばA$AP Mob(エイサップ・モブ)もRocky(ロッキー)がいて、Ferg(ファーグ)がいて、Bari(バリ)がいてMobってクルーではあるけど個々が独立して皆別の事をして、それぞれがちゃんと活躍してる。その状態がストリートの状態であって、カッコいいしインディペンデントである事だと思う。

レペゼン:
分かりやすいですね。

長嶺信太郎:
企業や集団でしか動けない人には絶対に出来ない動きだと思うし、ブランドや音楽とかもそうだけど、色んな人にお伺いをたてて作らなきゃいけないって企業の弱みだと思うんですよ。ただ、絶対的な集団の強さが企業にはあります。個人でやってるストリートの奴が勝つには、その人達には出来ない事をやるしかないんですよね。それが必要だと思います。

レペゼン:
集団には出来なくて、個ではできる事ってのは例えばどんな事ですか?

長嶺信太郎:
難しいですけど、コンプライアンスみたいな物ばかりを遵守してる所には絶対に出来ない動きをするだとか。失敗しても犠牲を払うのは1人なので。あとファッションに関していえば、本当にカッコいいと思う物を、追求して作り続けるってのが大事だと思うんですよね。

レペゼン:
企業や集団だと自分だけの責任じゃ済まないですからね。

長嶺信太郎:
企業の中に入ってると、やっぱり売れるものを作ろうとか、原価率を下げてこういう物を作ろうとか、本当はダサいと思ってるのにやらされてる事が沢山あると思うんですよ。僕はそれをやる必要のない状態にいるし、そう動けるのが自分達の強みだから、これで勝負するしかないかな。

レペゼン:
勝負の出来るインディペンデントっていう土台に上がって、あとはトコトン好きな物を追求してやっていくって事ですね。

長嶺信太郎:
ただブランドが大きくなると、インディペンデントじゃなくなって、そういう動きができなくなる時期が来ると思うんですよ。そうなったらもうストリートじゃないのかもしれないけど、その中での闘い方ってのがまたあると思うので、その時はまた考えれば良いだけです。

レペゼン:
その都度状況は変わるので、変わった時にまたやり方を考えれば良いですよね。

長嶺信太郎:
そうです。どっちが良い悪いではないですからね。

今後の展望、夢、座右の銘、告知

レペゼン:
今後、どんな動きをしていきますか?

長嶺信太郎:
もっと色んな人に僕の作ってる服を知ってもらいたいと思っています。作ってる物には自信があるし、見てもらえたら気に入ってもらえる自信があるから、とにかく見てもらえる場を増やしたいと思ってます。そのために出来る事はなんでもやっていきたいですね。

レペゼン:
ブランド設立から約1年半とは思えない広がりですが、今後もぜひ頑張ってください!!
もっと大きい質問になっちゃうんですが、夢はありますか?

長嶺信太郎:
さっき尊敬してるデザイナーをラフ・シモンズだって言ったんですけど、それはクリエイターとしてすごいなって思って尊敬してるんですけど、この人みたいになりたいって憧れの気持ちが強い人だとNIGO(ニゴー)さんなんですよ。

レペゼン:
おぉーなるほど、NIGOさんですか。

長嶺信太郎:
僕がファッションに興味を持った一番最初の時に、すごいなって思った存在がNIGOさんなんですけど、ああいう生き方や稼ぎ方って時代が違うから難しいと思うんですよ。でも、ああいう風に”衝撃を与えてる”人たちって時代が変わってもいると思うんですよ。

レペゼン:
いつの時代もそういう人はいるんでしょうね。

長嶺信太郎:
僕はNIGOさんにインスピレーションを受けて服に興味を持つようになり、今自分がこういう仕事をしてるので、僕も誰かにとってそういう存在になりたい。それが夢ですね。
僕の洋服を見てファッションに興味を持って、その世界を目指してくれる人がいたら、それは幸せだなと思いますね。

レペゼン:
人に影響を与えられる、誰かの憧れの存在になれる、そうなれたら最高ですよね!

長嶺信太郎:
そうですね。
人が評価してくれて初めて自分のやってる事に、価値が出ると思ってるんですよ。自分が良いと思ってやってるうちはまだオナニーの段階なので、それが本当に良いかどうかって人に伝わって初めて出てくるので、価値を大きくするには良いと思ってくれる人を増やすしかないですよね。

レペゼン:
そういう事ですね。

長嶺信太郎:
誰かの人生を変えるくらいの衝撃を与えられたんだったら、それが一番最大の価値だと思うし、それだけの大きな事が出来れば、自分自身も自信が持てると思います。

レペゼン:
そんな長嶺さんの座右の銘は何ですか?

長嶺信太郎:
「まずやってみる」ですね。これはずっと変わらないです。俺の言葉じゃないんだけどね。笑

レペゼン:
そうでした!聞く必要もなかったですね。笑
最後に告知はありますか?

長嶺信太郎:
7月ぐらいから秋冬の新作が全国の取り扱い店舗、及びオンラインで販売するので見てください!

レペゼン:
わかりました!!必ずチェックします!!
以上でインタビューは終わりです。本日はありがとうございました!

長嶺信太郎:
ありがとうございました!

 

「まずやってみる。」それは絶対的に必要な考え方である。しかしながら、そこで終わらないのがel conductorHであり、長嶺信太郎である。
つまり彼は、”まずやってみたその先”で学ぶのだ。
ヒップホップな考え方を味方につけたり、インディペンデントな個人が集団に勝つための方法を身をもって知るということを一つずつ、自己実現のための糧にしていった。

ブランド始動から約1年半。すでに名だたる一流アーティストたちが愛すel conductorHはこの先どこまでいくのだろうか。
時代においていかれたくないあなたは、一度el conductorHのオンラインショップをのぞいてみては?

前編を読む→

 

長嶺信太郎 Instagram:hatch_mamf
el conductorH Instagram:el_conductorh

Interview:ABE HONOKA

日本のストリートをレペゼンしよう。